抄録
わが国における障がい者の地域生活支援の発展は、アメリカのCIL運動(Center for Independent Living )に共感した障がい当事者による自立生活運動が大きく寄与している。
郡山市においては、1989年にそれまで日本各地で障がい者運動を実践してきた障がい当事者である白石(しらいし)氏が郷里である郡山市に戻り、養護学校同窓生等8人と「グループらせん」」を結成したことに始まる。その後、1993、「ワークIL」を立ち上げ、郡山市在住の障がい者に対する地域生活支援を本格化させることとなった。
現在は特定非営利活動法人あいえるの会として、郡山市から委託を受けた相談支援事業や介護派遣事業、独自のインフォーマルな介護サービス、障がい当事者のエンパワメントを図る目的で実施するILP(Independent Living Program)活動等を展開している。また、宮下自身も郡山市の障がい者ケアマネジメントや市町村審査会の委員を担う等、市当局とは協働関係にある。
地域生活支援体制構築には、当法人のような運動的側面を持った団体と行政機関が対立関係にあるのではなく、協働関係を構築することが肝要である。このような協働関係を築くには、行政に対して「交渉」ではなく、「政策の提案方式」をとり続けることが効果的であった。
また郡山市においては、我々の活動に呼応するかのように知的障害や障害児の父母、精神障害者等の当事者や支援者らといくつかの支援ネットワークが形成され、そこには健常者も同じ地域で暮らす仲間として参画している。
以上のことを踏まえ、今回の発表では当法人のこれまでの実践と郡山市の地域支援体制についてその概要説明と地域支援体制つくりのポイント等を提案することとしたい。