日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第9回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: PI-08
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視覚障害のある人の自己効力感に対するフリークライミング体験の短期的効果
*小田 浩一小林 幸一郎伊原 久美子
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会議録・要旨集 フリー

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抄録

【目的】フリークライミングに参加した人には、体を使って運動ができたということ以上に積極的な効果がある可能性がある。自分に対する自信がつき、リハビリや学習に対して前向きになるという可能性である。自己効力感尺度を使って測定を試みたので報告する。
【対象と方法】被験者はモンキーマジックのフリークライミングスクールに2008年1月から5月に参加したのべ41ケース。視覚障害の程度も、年齢も、性別もさまざまであった。被験者は、フリークライミングに参加する前と参加した後に、16項目からなる自己効力感尺度(飯田・関根,1992)に回答した。逆転項目を反転させたのち、フリークライミングの前後で効力感が変化するかを、41ケース全体で、次に個人ごとに対応のあるt検定を用い、5%の有意水準で検討した。
【結果】41ケース全体では、フリークライミングの前後で自己効力感に統計的に有意な違いはみられなかった。個人ごとの比較では、違いがが見られたのは5名であった。うち1名は自己効力感が下がっていたが、他の4名は上昇した。自己効力感尺度の3つの下位尺度--失敗を怖れないこと、行動の積極性、能力の社会的位置づけ--の中では、行動の積極性が変化している傾向が見られた。
【考察】16項目の簡単な質問紙をフリークライミングの前後で実施して比較するだけで、自己効力感の変化を捉えられた。ただ、有意な差が得られたのは全体の10%程度であり、主に行動の積極性に影響することが分かった。自己効力感は、さまざまなことに積極的に参加する態度と関係があり、参加者がフリークライミング以外の活動に前向きになっていく過程を促進する原動力となりうる。測定された自己効力感の変化が実際に他の活動にも影響するかどうかや、複数回のフリークラミング体験がこれを増強するか、影響は持続するかなどの長期的効果の検討が、今後必要である。

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© 2008 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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