日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第9回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: PII-04
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文字デザインの縦横比と視認性の関係
*山口 えり小田 浩一
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抄録

【目的】限られたスペースに文字を配置するために文字を縦長(長体)にしたり、横長(平体)にしたりする工夫がなされる。この工夫は通常、デザイナの感覚にたよって主観的に行われている。ここでは、縦横比が1/5から5倍という広い範囲の長体化、平体化について、それが視認性にどのように影響をするかを定量的に検討したので報告する。

【対象と方法】刺激にはカタカナ清音46文字、モリサワ新ゴシックLを使用し、縦横比0.2~4.96の範囲を対数間隔で9段階に変化させた。刺激の平均輝度は105cd/m2、コントラスト98%の黒い文字を提示した。手続はまず、調整法で正答率が100_%_の大きさと0_%_の大きさを決めた。次に、その間で対数間隔の7段階に大きさを変化させた文字を提示し、ランダムに変化する文字を認識する課題を20回繰り返した。正答率が50_%_になる閾値文字サイズを推定し、視認性の指標として比較した。被験者は裸眼または矯正で小数視力1.0以上の視覚正常の日本人20人であった。

【結果】縦横比を要因とした一元配置の分散分析の結果、縦横比の主効果は、文字の高さで計った閾値文字サイズに対して(F(8,171)=129.2,p<0.001)、文字の幅に対しても(F(8,171)=221.7,p<0.001)有意であった。また、長体と平体の閾値文字サイズにおいて、各比率の段階ごとに視認性に差があるのか対応のあるt検定を行ったところ、1:0.67と1:1.49の縦横比以外全てが1_%_水準で有意であった。

【考察】縦横比が1:1の正体のとき視認性が一番高い事が分かり、変形を行っていくにつれて徐々に視認性が低下する事が分かった。しかし、t検定の結果から67%程度の長体化は正体とほぼ同じ視認性を維持する事ができると考えられる事から、拡大教材において多くの文字数を入れ込みたいときや、狭い視野で多くの文字を一度に見たい場合に、縦か横の一方向だけを縮小した変形を行うという方法が有効である可能性があると考えられる。

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© 2008 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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