抄録
【目的】これまで、一般の人々や大学生などを対象とした視覚障害者についての講義などによる視覚障害者観の変化を調べた研究がいくつかあるが、将来、患者への直接的なケアを担当する看護学生を対象にした研究はみられない。そこで、看護学生を対象に、視覚障害についての授業による視覚障害者観の変化の有無を調べた。
【方法】対象は、高等看護学院の看護学生2年生34人(全員女性)であった。研究への同意が得られた学生に対して「視覚障害者に対する多次元的態度尺度」(河内,徳田,1988)による調査を実施した。まず、プリテストとして同尺度についての質問を障害者福祉の授業の冒頭に行った。そのテストでは視覚障害者に接した経験の有無とその内容についても質問した。視覚障害についての授業後に合計3回テストを実施した。ポストテストは、この後の3週間の他の看護実習以降に行い、この実習中に視覚障害をもつ患者への接触の有無についても質問した。すべて質問に回答した32人のデータを対象として、視覚障害者観に対する授業効果の有無等について、Kruskal Wallis 検定、Mann-Whitney のU検定および符号検定を用いて分析した。
【結果】下位尺度の「共生への拒否的態度」と「交流の場での当惑」に関して、授業後テスト時点ではプリテスト時点よりも改善される傾向があった。
【結論】看護学生を対象とした障害者福祉の授業は、視覚障害者についての知識の伝達が行われるだけでなく、学生の視覚障害者観に変化をきたし、視覚障害者に対してより好ましい対応ができるようになることが期待できるものと考えられた。