抄録
【目的】本研究は、ロービジョンを対象として視認性に大きく関わる基本特性である1.コントラスト感度、2.色の類似性領域を計測し、実験的な検討から見やすい視覚表事物の設計に関する規格作成および視覚機能のデータベースの確立を目的としている。今回はコントラスト特性について2006年度の続報として報告する。
【方法】実験ではPCにより周波数と輝度コントラストを調整した円状の縞模様を提示した。画像提示用に21インチCRTフラットパネルモニター、被験者の反応 (縞模様の方向判断) 用にキーボードを用いた。視距離は50cmとした。空間周波数は、0.01, 0.02, 0.06, 0.1, 0.2, 1, 2, 6, 10 (cycle/degree: CPD)の9種類とした。縞の方向は0, 45°,90 °, 135 °の4方向をランダムに提示した。提示時間は、1000msec 及び60msecとし、明所視条件として輝度40cd/m2、薄明視条件として輝度4cd/m2の2条件で行った。右眼、左眼、両眼で計測をした。
【結果】ロービジョン被験者72名のデータを得た。ロービジョンは個人のばらつきが大く、全体的に晴眼者(若年者)よりも高周波領域におけるコントラスト感度の低下が見られた。また晴眼者の明所視では3~5°cpd付近で感度の最大値となるが、ロービジョンは0.2~0.6cpd付近が最大値となる場合が多く、最大感度の低周波方向への移動が見られた。また関連研究(色の類似性領域)と同様の手法で分類を行い、データを比較したところ、分類1はロービジョン全体の傾向に近く、ロービジョンの分布の中では比較的高周波・低周波ともに高くなった。分類2.の視野狭窄(10°以下)では低周波での感度及び再大値の感度低下が著しく、また分類3の中心暗点では高周波における感度低下が明らかとなった。従って、ロービジョン全体のコントラスト感度特性とは、分類ごとの特徴を反映したものと考えられる。
【結論】コントラスト感度についてロービジョンの全体的な傾向と、視野の状況から分類した違い及び共通する点が明らかとなった。来年度JIS TR(Technical Report) 作成を予定している。