抄録
光力学的診断(PDD)は,種々の癌に対する有用な診断として臨床上認知されている.泌尿器科領域では,1960年前半膀胱癌に対してTetracyclineとUV lightを用いて初めてPDDが行われた.光感受性物質である5-アミノレブリン酸(5-ALA)の膀胱内注入による現行システムでの表在性膀胱癌に対するPDDは,1990年前半に報告され,大いに注目を集めた.
近年,この5-ALAを用いたPDDは安全であり,表在性膀胱癌、特に異形成や上皮内癌などの平坦病変の診断において感度が高いことが示された.さらに,PDDの応用であるPDD補助による経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)は,従来のTUR-Btと比較して,表在性膀胱癌の腫瘍残存さらにはそれに基因する膀胱内再発を抑制するといわれている.しかし,疑陽性率の高さやPhotobleaching現象などの診断精度に関わる解決すべき課題も残されている.
この5-ALAを用いたPDDは,欧州では表在性膀胱癌に対する診断として医療承認され, European Association of Urology (EAU)のガイドラインにおいてもGrade Bとして推奨されているが,本邦では,医師主導による臨床研究として試行している.本稿において,表在性膀胱癌におけるPDDの現状を概説する.