2013 年 33 巻 4 号 p. 367-373
超音波および光を用いた医用イメージングは,ともに非侵襲性,簡便性,実時間性が高いという点で共通の特性を持ち,現在,臨床の場で不可欠な診断法として幅広く用いられている.一方,光計測は,表層の組織を高い分解能とコントラストで可視化し,吸光スペクトルや蛍光により生化学的な情報が得られるが,生体組織内での強い散乱特性のため深部の観察が困難となる.また,超音波は,集束性と侵達度が大きく,体内組織の形態や動き・血流等の機能の画像化が可能であるが,単独で生化学的な情報を得るのは難しい.そこで,超音波と光技術を融合することで,双方の限界を補いさらに高機能な診断情報が得られる新たなイメージング技術の創出が期待される.代表的な融合の方法としては,音響光学効果(acousto-optic effect)により,超音波で変調された光を空間選択的に計測する超音波変調光計測法や,光音響効果(photo-acoustic effect)により光吸収で生ずる超音波から,光吸収分布像を再構成する,光音響(超音波)イメージングなどがあるが,特に,後者は近年実用化の研究が盛んになり,乳がん診断用の装置の研究開発も始まっている.ここでは,これらの融合技術を概説し,今後の発展の方向を展望してみたい.