2018 年 39 巻 2 号 p. 117
肝斑の治療は,トラネキサム酸内服やハイドロキノン含有外用剤等の保存治療が第一選択であるが,対症療法で根治性はない.韓国で,QスイッチNd:YAGレーザーを短期間に発赤が出る程度のフルーエンスで複数回照射する治療が報告され,トーニング治療と呼称されている.本邦でも本治療を取り入れている施設は多いものの,機器の設定や照射方法に統一性がなく,治療効果や合併症のばらつきが多いため,その有用性と合併症について議論が絶えない.QスイッチNd:YAGレーザーを用いた治療にもかかわらず,ディスタンスゲージを無視し,パス数もショット数も不明確な照射方法が,再現性が乏しい理由として考えられる.また,特定のQスイッチNd:YAGレーザーが肝斑用のレーザーとして多く使用されているが,理論的には,他のQスイッチNd:YAGレーザーのみならず,QスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーでも可能であり,報告は少ないもののQスイッチアレキサンドライトレーザーの報告も散見されつつある.皮膚科形成外科領域のトピックのひとつであるピコ秒レーザーを用いたトーニング治療も同様に報告されつつある.
今回,いまだ不明確な肝斑のトーニング治療を,再現性の高いしっかりとした照射法となるべく,可能な限り公平性を保てるよう,同一の機器やメーカーにならないようにも配慮し,肝斑のトーニング治療のエキスパートの先生方に執筆をお願いした.根治性のない肝斑治療における現在のトーニング治療の実情を理解し,今後の治療の方向性を決める一助となれば幸いである.