現在,応用光学分野およびエレクトロニクス分野が同時に関わる境界として最もホットな話題がテラヘルツ(テラは1,000,000,000,000)領域とよばれる分野です.この領域は遠赤外線と呼ばれる「光」の最も周波数が低い領域と,マイクロ波という「電波」として最も高い周波数の間に位置する電磁波で,生成方法・検出方法のみならず,その取扱から,法的規制まで「光」「電波」両方が関連するフロンティア領域ということができます.研究としても,光の方面からの「低周波数化」と,電波の方面からの「高周波数化」の二つのアプローチが出会う場所であります.筆者は光の研究者ですが,近年,その光源及び検出装置についてもかなり開発が進んでいること,この領域のバイオ・医療的な利用をめざす研究もかなり立ち上がってきていることを認識していました.一方で,レーザー医学会的に見ると,この周波数領域はH2Oに強い吸収が存在しているため,生体吸収も大きく,近赤外光などとかなり趣が変わります.こうした背景に鑑み,一度現在のテラヘルツ + バイオ医療研究の国内事情をレーザー医学会の読者諸氏に紹介してみようと,今回の特集が企画されました.本特集では,かなり先端のテラヘルツ応用が記載されており,レーザー医学会の読者の皆様にはなじみのない点も有るかと思いますが,近年話題のテラヘルツについて,少しでも興味持って頂ける端緒となれば,幸い至極です.