2025 年 45 巻 4 号 p. 425-431
緑内障領域のレーザー加療について総説を紹介.また,日常診療において非観血的手術加療としてよく行われているレーザー線維柱帯形成術についての紹介をする.
Introducing a review of laser treatment for glaucoma. We will also introduce laser trabeculoplasty, which is commonly performed as a non-invasive surgical treatment in daily clinical practice.
今日,眼科領域でも多くのレーザー加療が行われている.
代表的な眼科的レーザー加療としては,糖尿病性をはじめとする虚血性網膜症に対して,もしくは網膜剥離治療のためのアルゴンレーザー網膜光凝固術や,白内障術後の後嚢混濁(いわゆる後発白内障)に対してのYAGレーザー後嚢切開術などがある.その他,エキシマレーザーを用いた近視矯正のための角膜レーザーや白内障手術時の補助的な前嚢切開目的のレーザーなどもあり,広くレーザー加療は眼科領域でも浸透している.
緑内障領域においても様々なレーザー加療が施行されている.
まず緑内障の治療についてだが,緑内障学会が提唱する緑内障治療指針の記載にある通り,基本的には眼圧下降にあり,唯一の治療となる.緑内障の治療は主に点眼加療と観血的手術(線維柱帯切除術,線維柱帯切開術が代表的)が中心であり,レーザー加療による緑内障治療は治療候補としては順位が下がるが,時に第一選択として用いられる.いずれのレーザー加療も,緑内障治療指針通り眼圧下降,眼圧上昇抑止目的である1,14).
直接的に眼圧下降を図る術式の他,線維柱帯切除術後の糸切のためのレーザー法などもある.
今回はそれら各論と,後述のレーザー線維柱帯形成術について詳細を紹介していく.
瞳孔ブロックにより緑内障発作を来している症例,もしくはそのリスクがある閉塞隅角症例に対してLIは施行される.一般的には虹彩の上耳側もしくは上鼻側にレーザーにて穿孔させ房水の閉塞を解除する.用いられるレーザーはアルゴンレーザーとNd:YAGレーザーの併用が一般的である2).
●方法
・術前処置として,1時間前に1~2%ピロカルピン点眼をして縮瞳させる.虹彩が進展・緊張し穿孔を容易にする目的である.
術後一過性眼圧上昇予防のため,上記と同じく1時間前と術直後にアプラクロニジン塩酸塩点眼を施行する.眼圧上昇による角膜浮腫がある場合は,炭酸脱水素酵素阻害薬や好調浸透圧約を投与し角膜透明性を上げておく.
点眼麻酔をし,虹彩切開用のコンタクトレンズ(AbrahamやWiseのレンズ)を用いて施行する.
・レーザー設定
Neodymium yttrium aluminum garnet(Nd:YAG)レーザー,アルゴンレーザーを用いる.
それぞれのレーザーの単独使用での方法もあるが,一般的には併用での施行が多い.
アルゴンレーザーなどの熱凝固レーザーを照射した後にNd:YAGレーザーで穿孔創をあける方法である.アルゴンレーザー単独法に比較して総エネルギー量が小さく,またNd:YAGレーザー単独法に比較して出血が少ないので,推奨される方法である.以下に併用法での設定を示す(Fig.1).

Laser iridotomy step
(第一段階)
穿孔予定部位の周囲に照射し虹彩を進展する.
アルゴンレーザー使用
Spot size:200~500 μm
Power:200~600 mW
Duration time:0.2~0.6 s
Shot count:4~6
(第二段階)
穿孔照射
アルゴンレーザー使用
Spot size:50 μm
Power:800~1,000 mW
Duration:0.05 s
Shot count:20~30
(第三段階)
穿孔拡大
YAGレーザー使用
Power:2~3 mJ
Shot count:1~10
・合併症
以下に挙げられるが,なかでも水疱性角膜症は重篤である.水疱性角膜症の発症には,角膜内皮の状態,レーザー照射の総エネルギー量などが関連すると推測されている.術前に角膜内皮の状態を把握すること,過剰照射を避けることを心がけなければならない.
・瞳孔偏位 ・前房出血 ・角膜混濁 ・水疱性角膜症 ・術後虹彩炎 ・限局性白内障 ・術後一過性眼圧上昇 ・虹彩後癒着 ・穿孔創の再閉塞 ・網膜誤照射
② レーザー隅角形成術(Laser Gonioplasty: LGP)」閉塞隅角緑内障において,上述の①がよく施行されるが,虹彩の付着部分の形態異常により,閉塞隅角を呈するいわゆるプラトー虹彩の状態であれば①にても眼圧下降を得られないケースがあり,その場合はレーザー隅角形成術が適応となる.レーザーを隅角周辺の虹彩に照射し,虹彩の形状をかえることによって,直接的に隅角を開大させる治療法である3,4).
●方法
・①と同様術前処置として,1時間前に1~2%ピロカルピン点眼をして縮瞳させる.虹彩が進展・緊張し穿孔を容易にする目的である.
術後一過性眼圧上昇予防のため,上記と同じく1時間前と術直後にアプラクロニジン塩酸塩点眼を施行する.眼圧上昇による角膜浮腫がある場合は,炭酸脱水素酵素阻害薬や好調浸透圧約を投与し角膜透明性を上げておく.
点眼麻酔をし,虹彩切開用のコンタクトレンズ(AbrahamやWiseのレンズ)を用いて施行する.
・レーザー設定
アルゴンレーザーもしくはダイオードを用いたマルチカラー黄色波長レーザーを用いる.
Spot size:500 μm
Power:100~200 mW
Duration:0.2~1.0 s
Shot count:40~50
・合併症
・術後虹彩炎 ・一過性眼圧上昇
③ レーザー線維柱帯形成術(Laser Trabeculoplasty: LTP)開放隅角緑内障に対して線維柱帯にレーザーを照射することにより線維柱帯細胞を活性化させ,眼房水の流出抵抗を下げ眼圧を下降させる術式である.
1979年にWiseらがアルゴンレーザーを用いて線維柱帯形成術を施行したのが始まりである.結果,眼圧下降は認めるが,レーザーによる組織挫滅も認め,侵襲性の高い術式であった.1995年,Latinaらが,選択的レーザー線維柱帯形成術を発表した.これは532 nmの半波長YAGレーザー(Neodymium yttrium aluminum garnet: Nd:YAG)を用いた術式で,侵襲性が低く繰り返し施行可能で,現在でも第一線で臨床実用されている.
その後,2005年にはmicro pulse波を用いたレーザー線維柱帯形成術が,2010年にはpascal patterned laserを用いたレーザー線維柱帯形成術が開発された.いずれの手技も眼圧下降効果は20%前後と報告されている5-7).
●方法
・術前に一過性眼圧上昇を予防するため,1%アプラクロニジン点眼を施行1時間前と施行後に点眼する.
・レーザー設定
詳細は次項にて述べる
一般的な隅角レンズを用いてレーザーを線維柱帯に直接照射する.範囲は半周(180°)~全周(360°)であり,症例によって異なる(Fig.2).

SLT image (red circle: laser spot, red arrow: range)
術後炎症は自然消退することが多いが,消炎のためステロイド点眼もしくはNSAIDs点眼を一定期間を用いることもある.
・合併症
・一過性眼圧上昇 ・術後虹彩炎 ・周辺虹彩前癒着
眼圧下降効果は一般的に施行前後での眼圧値の比較で,何%眼圧が減少したか(眼圧下降率)で記載することが多い.
④ 毛様体光凝固術毛様体は,虹彩と網膜・脈絡膜の間にある幅約6 mmの組織で,房水産生の場となっている.眼圧下降目的に毛様体組織を破壊・挫滅させる侵襲性の高い術式である.その歴史は1930年代にジアテルミーを用いた電気凝固術式から始まり,1950年代にはクライオを用いた経強膜冷凍凝固術,1970年代にはNd:YAGレーザーを用いた経強膜的毛様体光凝固術,アルゴンレーザーを用いた経瞳孔的毛様体光凝固術,1990年代にはダイオードレーザーを用いた内視鏡的毛様体光凝固術,2010年代ダイオードレーザー,マイクロパルス発振を用いた経強膜的マイクロパルス毛様体光凝固術,などが開発された.
合併症に眼球ろうのリスクがあり主に緑内障手術の中でも難治性で他の治療法に抵抗性の最終的な治療の位置づけであるが,マイクロパルス毛様体光凝固術はそういった合併症のリスクは低いとされている8-12).
●方法
上記のうち,経強膜的毛様体光凝固術と経強膜的マイクロパルス毛様体光凝固術について述べる.いずれも術中疼痛を認めるため,麻酔は球後麻酔を必要とする.
I 経強膜的毛様体光凝固術
810 nmのdiodeレーザー光源を用いる.プローブを角膜輪部から0.7~1 mm離れた強膜上から発振し,毛様体ひだ部を凝固させる.
・レーザー設定
Power:1~2 W
Duration:1.5~2.5 s
Shot:10~15(半周),20(2/3周)
合併症:疼痛,視力低下,光覚消失,低眼圧,眼球ろう,前房出血,角膜障害,遷延性炎症,黄斑浮腫,毛様体剝離,硝子体出血,瞳孔弛緩,術後一過性眼圧上昇など
II 経強膜的マイクロパルス毛様体光凝固術
ダイオードレーザー(810 nm)と専用プローブを用いて行う.マイクロ秒パルスでレーザー照射のon/offを繰り返すことで周囲組織の熱凝固を抑えることができ,侵襲性の低い術式となっている.眼圧下降の機序は,ぶどう膜を刺激しぶどう膜強膜流出路増加を促すことによると言われているが詳細は不明である.
角膜輪部から3~4 mmの位置にプローブを当て,半周照射する.
・レーザー設定
Power:2,000 mW
Duty cycle:31.3%
Time:80 s(半周)
合併症:上記Iと同様だが,全体的に少ない
⑤ レーザー切糸術線維柱帯切除術もしくはそれに準じる濾過手術後に房水濾過量を増加させる目的で施行される.あらかじめ縫合されている強膜弁の縫合糸を切糸することにより房水の排出量を上げて眼圧下降を図る13,14).
●方法
点眼麻酔下で施行する.レーザー切糸用レンズを結膜上から軽く圧迫し,透見された縫合糸に焦点を合わせて照射する.
・レーザー設定
マルチカラー 赤波長レーザーを使用.
Spot size:50 μm
Power:100~300 mW
Duration time:0.1~0.2 S
・合併症 ・結膜熱傷,穿孔 ・過剰濾過
先の述べた通り,レーザーを線維柱帯に照射し,眼圧下降を図る治療法である.
ここでその内容を更に深く掘り下げて紹介する.
ガイドラインに記載がある通り,現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降である.緑内障の病型や病期にかかわらず眼圧下降は有効である.
通常緑内障の治療は点眼,観血的手術加療が主ではあるが,レーザーを用いた先述の加療も多く施行されている.
LTPは,用いるレーザーの種類によって,以下に分類される.
i Argon laser trabeculoplasty:ALT アルゴンレーザー使用
ii Selective laser trabeculoplasty:SLT Qスイッチ半波長YAGレーザー使用
iii Micropulse laser trabeculoplasty:MLT マイクロパルス波使用
iv Pattern scanning laser trabeculoplasty:PSLT 532,577 nm波長半導体閾値下レーザー使用
その他,海外ではTitaniumレーザー使用の報告もあるが日本に於いてはまだ普及していない.
適応となる疾患は,緑内障の中でも原発性開放隅角緑内障,高眼圧症,色素性緑内障,落屑緑内障,ステロイド緑内障などになり,非適応は閉塞隅角緑内障,血管新生緑内障,ぶどう膜炎に伴う続発緑内障などになる.理由としては,閉塞隅角緑内障は隅角が直接確認できないため施行できないことであり,血管新生緑内障では隅角に新生血管が発生しており,レーザー照射により眼内出血を誘因する可能性があるためと,単純に眼圧下降が見込めないという理由,そしてぶどう膜炎に伴う続発緑内障は,レーザー照射によりぶどう膜炎の炎症増悪を来す恐れがあるため,である.
眼圧下降の機序としては確定的なことは現在も不明ではあるが,線維柱帯に熱エネルギーを与えて,細胞にダメージを付与させ,組織のremodelingを起こす.細胞レベルでの貪食能が高まり,更に細胞外マトリックスの質の変を起こし活性化させる.房水排水に関わる細胞の活性化により眼圧下降を促す,とされている.
・LTPの歴史
1970年台初頭,アルゴンレーザーを用いた線維柱帯形成術(argon laser trabe: ALT)が,Wise,Witterらによって最初に発表され,開放隅角緑内障の治療オプションとして世界に広まった.約500 nmのArgonレーザーが線維柱帯に損傷と再構築をおこし眼房水の改善をもたらす一方で,光凝固による損傷が大きく虹彩癒着などの合併症も散見された.故に繰り返し施行はできない治療との位置づけであった15).
1995年には選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty: SLT)がLatinaらにより発表された.532 nmのQスイッチNd YAGレーザーを使用しており,放出するエネルギーが非常に少なく繊維柱帯の色素細胞に選択的に吸収され,眼圧下降と安全性のバランスが非常によく現在もLTPの主流になっている.細胞ダメージが非常に少なく繰り返しの施行が可能である21).
2005年に,810 nmのダイオードレーザーを用いたmicro pulse波のLTP(MLT)が発表された.従来のALT,SLTの連続波を用いず,短時間のレーザーのon offを繰り返してより細胞損傷の少ない機序で効率的に線維柱帯を活性化させ眼圧下降を図る38).
2012年にはPASCALレーザー®(TOPCON社)を用いたLTP,すなわちpattern laser trabeculoplasty(PSLT)が発表された.1度に多くのレーザースポットの均一なパターンを適応でき,そのエネルギーは閾値下を採用し,パルス持続時間が短く組織への熱損傷が少ないことが特徴となる.1列13発の3列で一度に39発を11.25°の角度で発射し,コンピューター管理で自動的に角度が変化し,180°,もしくは360°のレーザー照射を施行できる40).
現在,眼科領域の臨床現場にて最も多く施行されているのはSLTである.理由は,ALTより低侵襲であることと,ALTの次に歴史が古く,治療成績の報告も多いことが挙げられる.
以下それぞれの特徴とSLTとの比較について述べていく.
i ALT
LTPの原初の治療方法であり,その歴史は古い.先述の通りArgonレーザーを用いて線維柱帯に熱エネルギーを与えて眼圧下降を図る.
術後1年間の眼圧下降率は,パイロットスタディでは約30%とされている15).
長期成績については多々報告があるが,安達らは5年間眼圧下降を維持できた症例は約40%,10年間で約27%と報告している.また,眼圧下降率の長期成績の報告を示す.総じて眼圧下降率は20~30%との報告が多い.合併症として,虹彩前癒着が高率で起こり眼内炎症が残存するなど,問題点も多かった15,16).
ALT後の眼圧下降率の報告を図にまとめる(Table 1)17-20).
Observation period and IOP reduction rate after ALT
| Author, paper, period | Number of Eyes/Dx | Follow Up (Years) | IOP Reduction (%) |
|---|---|---|---|
| Lotti et al. Ophthalmic Surg, 1995 | 237 POAG | 11 | 19 |
| Sharma et al. Indian J Ophthal, 1997 | 36 POAG | 2 | 29 |
| Odberg et al. Acta Oph. Scand, 1999 | 168 POAG and PEG | 8 | 32 |
| Agarwal et al. BJO 2002, | 40 POAG | 5 | 30 |
POAG: primary open angle glaucoma, PEG: pseudoexfolitaion glaucoma
IOP: intraocular pressure
・レーザー設定
Spot size:50 μm
Power:400~8 mmnW
Duration time:0.1 s
Range,count:180°,20~30 shots
ii SLT
ALTは,線維柱帯部への組織損傷が大きく,眼圧下降は認めるものの一方で,術後に虹彩前癒着を引き起こすことも報告され基本的には一度しか施行できない術式であった.1995年,Latinaらは,SLTを発表した.Qスイッチ半波長YAGレーザー(波長532 nm)を用いて,線維柱帯の色素細胞のみを選択的に破壊し,その修復機構にて線維柱帯を活性化させ房水排水機能を促進させ眼圧下降を図る.ALTに比して,照射エネルギーは約1/60であり,組織侵襲も少なく,繰り返し施行可能であることが特徴である.眼圧下降効果はALTと同等で20~30%の眼圧下降率との報告があり,合併症の報告は少ない21).
現在,SLTは日本においてLTPで臨床上最も多く用いられている.実際筆者らも日常臨床に於いて,施行しやすい類の加療である.
・レーザー設定
Spot size:400 μm
Power:0.4~0.8 mJ
Duration time:3 ns
Range,Count:180°~360°(60~120)
・眼圧下降の報告を図に紹介する(Table 2)22,33-37).
Observation period and intraocular pressure reduction rate after SLT
| Author/paper/period | Number of Eyes | Follow Up | % IOP Reduction |
|---|---|---|---|
| Gracner Ophthalmologica, 2001 | 50 POAG | 6 months | 22.5 |
| Melamed et al. Arch Oph, 2003 | 45 POAG | 6–18 months | 30 |
| Lai et al. Clin Exp Oph, 2004 | 58 POAG/OHT | 5 years | 32 |
| Cvenkel Ophthalmologica, 2004 | 44 POAG | 1 year | 27.6 |
| McIlraith et al. J Glaucoma, 2006 | 74 POAG/OHT | 1 year | 31 |
| Weinand et al. Eur J Glauc, 2006 | 52 POAG | 1 year | 24.3 |
OHT: ocuar hypertension
おおよそ観察期間は1~5年で眼圧下降率は20~30%との報告が多い.
点眼・SLT・手術の追加を死亡としたKaplan-Meier生存曲線の結果は,成功率が1年62% 2年34% 3年28% 4年24% 5年20%と5年生存率が20%であった.また,ALTとSLTを比較して眼圧下降効果は同等であったと報告されている32).
・SLTの作用機序においては各種報告があり,それらを紹介する.
▶ マイクロアレイ分析を使用して,SLTは,細胞の運動性,細胞外マトリックスの産生,膜修復,および活性酸素種の産生に関連する遺伝子の発現を調節することが示されている28).
▶ in vitro研究では,SLT後,IL-1α,IL-1β,TNFα,IL-8の炎症性サイトカインの発現の増加が実証されている29).
▶ これらのサイトカインはストロメリシン1の発現(MMP-3)を増加させる.MMP-3は線維柱帯細胞外マトリックスのリモデリングに関係するケモカインであり,線維柱帯網を介した房水の流出を増加させる30).
▶ ケモカイン産生の増加の結果として,Monocyte(単球)増加もSLT後に認められており,単球はさらにサイトカインを分泌するか線維柱帯内の破片を直接貪食することによりin vivoで房水の流出を増加させ,in vitroでシュレム管の透過性を増加させる31).
iii MLT
SLTに続いて2005年に,Diodeレーザーを用いて,従来の連続波ではなく,短時間のレーザーのon offを繰り返してより細胞損傷の少ない機序で効率的に線維柱帯を活性化させるLTPが開発された.レーザー照射のサイクル(duty cycle)は15%と固定されている.眼圧下降効果,合併症頻度はSLTと同様と報告されている38).
・レーザー設定
Spot size;300 μm
Power:700~1,000 mW
Duration time 0.3 s
Range,Count:360°,about 140
Duty Cycle:15%
iv PSLT
TOPCON社が開発した,パスカル®閾値下レーザーを用いたLTPである.組織損傷の起こらない閾値下レーザーを用いて,コンピューターガイド下で自動的に照準が変化する.半導体レーザーの,波長は532 nm(緑)もしくは577 nm(黄)を用いて行われる.一度の照射で3列×13発,すなわち39発の照射を行え,完遂までの時間が短縮される(Fig.3).

PSLT image (red circle: laser spot)
かつSLTと比べて高エネルギーを線維柱帯に供給できることが特徴である.(SLT: 4.8~9.5 mJ/mm2 Vs PSLT: 318~446 mJ/mm2)39)
眼圧下降率は約20~30%と報告されており,SLTと比較しても安全性,眼圧下降効果は同等とされる39,40).
・レーザー設定
Spot size:100 μm
Power:200 mJ~500 mJ
Duration time:5 ms
Range,Count:180°~360°(about 500~1200)
以上,緑内障分野でのレーザーを用いた加療について紹介した.
いずれも最終的な目的は眼圧下降目的,眼圧上昇の予防につながり,緑内障分野での診療においてもレーザー加療は切り離せない技術である.
緑内障加療においては,点眼・手術加療(観血的もしくは非観血的)がよく行われており,特に観血的手術加療においては患者の精神的・金銭的負担は大きい.また,点眼のみでの経過を見られている患者も,緑内障の病期が進行するにしたがって複数本の点眼を1日に何度も施行することが必要となり,それだけで治療に対するアドヒランスの低下につながる.
この緑内障レーザー加療は非観血的手術加療の代表であり,点眼・観血的手術加療の中間的な役割を担う.例えばLTPを追加することにより点眼本数を減らせたり,観血的手術加療への必要性を下げることも可能とし,その有用性は高い.
今後もレーザー技術の進歩に伴い,侵襲性が低い,かつ眼圧下降効果が高い治療が開発されていくことを期待する.
利益相反の開示:本論文に関連し,著者が開示すべきCOI関係にある企業などなし
利益相反:該当なし