1990 年 10 巻 4 号 p. 11-18
Nd: YAGレーザーによるレーザー温熱療法 (レーザーサーミア) の腫瘍破壊の機序をin vivoにおいて明らかにするために. Lewis肺癌を皮下移植したBDF, マウスを用いて検討した。照射出力2.0W, 43±0.5℃の条件で10分間レーザー加温を施行した後, その組織変化について経時的に光顕および電顕レベルで検討を行った。1) 光顕的検討: 照射直後より腫瘍血管のうっ血や腫瘍内の軽度出血がみられたが, 腫瘍細胞自体には, 明らかな形態学的変化は認めなかった。照射3時間後には, 腫瘍内の出血は著明となり, 核の変化が出現した。さらに6時間後には核の収縮や細胞質の減少が明らかとなり, 24時間後には腫瘍全体が出血性壊死像を呈した。2) 電顕的検討: 温熱療法施行直後, クリステの破壊された膨化したミトコンドリアが認められた。3時間後, 核の変性は明らかになり, 24時間後には腫瘍細胞の破壊が示された。これらの結果より, レーザーサーミアによる抗腫瘍効渠の量初の細胞内標的器官はミトコンドリアであることが示唆された。