抄録
我々は, シリアンゴールデンハムスターの膵癌に対して, フェオフォルバイドa (以下Phaと略す) を用いた光線力単的治療を施行した。8週齢のゴールデンハムスター29匹に対して, N-nitroso-bis- (2-oxypropyl) amine (以下BOPと略す) を10mg/kg体重濃度にて8週連続皮下注射した。29匹中9匹に対してPhaを静脈注射し, 投与後6, 12, 24時間に解剖し, 膵腫瘍, 肝臓, 肺臓, 腎臓, 膵臓, 皮膚の各臓器を摘出しPhaの濃度を測ア赱した。BOP投与後19-20週目に膵腫瘍に対して10匹はレーザー温熱療法を施行し (第1群), 残り10匹は, Phaを用いた光線力学的治療をおこなった (第2群)。これらは, 麻酔下に開腹し, 膵腫瘍に直接プローブを穿刺した。第1群は, 穿刺部より5mm離れた部位の温度を42-43℃となる様に調整しNd: YAGレーザーの連続波にて2W3-5分間, 第2群は, Qスイッチを装備したパルスNd: YAGレーザーにて2W3-5分照射した。治療1週後, 解剖し病理組織学的に検討した。Pha投与後6, 12, 24時間後膵腫瘍への集積性を認めたが, 24時1の正常膵組織における濃度はほとんど認められなかった。そのため, 我々は, Pha投与後24時間後に光線力学的治療をおこなった。光線力常的治療の1週間後の膵癌の病理組織学的変化は, 穿刺部位周囲に広範囲の凝固壊死を認め, ほとんどすべての例において, 腫瘍細胞の消失が認められた。光線力学的治療群は, レーザー濃熱療法群に比べ同等かそれ以上の抗腫瘍効果が認められた。尚, 治療部位周囲の変化は, 膵癌による二次的膵炎の像のみであり, PDTそのものの影響は軽微であった。光線力学的治療は固形癌の治療において安全で効果的な治療法の一つとなり得ると思われた。