抄録
本研究の目的は, 「手のマッサージ」が日本の老年期痴呆患者においてリラクゼーションを促す効果があるかどうか,また,その経過にはどのような状態がみられるのかを明らかにすることである.精神病院痴呆棟に入院中の重度老年期痴呆患者6名を対象に,1日1回,10分間(片手5分ずつ)の手のマッサージを,10日間連続して行い,そのリラクゼーション効果を,リラクゼーションチェックリストにて評価した.また,マッサージ施行中の対象者の状態を帰納的・記述的に分析した.手のマッサージは日本の老年期痴呆患者にリラクゼーション状態を促す看護援助として有効であることが示された.また,マッサージの成果をあげるためには,環境の設定や対象者の状態の見極めが必要であると思われる.手のマッサージの中の「手に触れる」「繰り返し同じことをする」などの要素が,対象者のもっている能力や感覚を引き出し,対象者の人間的疎通性を快復させていると思われた.今後の課題として,手のマッサージのリラクゼーション効果が老年期痴呆患者の睡眠導入や,「落ち着かない状態」の改善に利用可能かどうか,検討していくことがあげられる.