抄録
1986年1月から1993年9月までに, 胸部レントゲン写真無所見のいわゆるroentgenologically occult lung cancer (ROLC) の48例, 59病巣に対し, hematoporpyrin誘導体 (HpD) を併用したphotodynamic therapy (PDT) を施行した。組織型は, 肺原発唾液腺型悪性混合腫瘍の1例を除いて全例偏平上皮癌であった。25病巣にargon dye laser (ADL) を, 34病巣にexcimer dye laser (EDL) を施行した。初回治療によるcomplete response (CR) は59病巣中35病巣 (59.4%)であった。CR導入因子と再発に関与する因子を検討するために, 内視鏡所見, 腫瘍表面の性状, 深達度, 腫瘍長径, 病巣部位およびPDTの光源等について検討した。CR導入には腫瘍長径が10mm以下であること (p<0.01)、また再発に関しては腫瘍長径が5mm以上のもの (p<0.01) が有意な因子であった。これらは多変量解析においても同じ結果であった。disease specific survivalの5年生存率は75.5%であった。WHO分類のgrade 2以上の副作用としては, HpDによる日光過敏症が2例 (4.2%), 肝障害が1例 (2.1%) に見られたが一過性のものであった。またレーザー照射による気管支炎症状や閉塞性肺炎は7例 (14.6%) に見られたが可逆性であった。grade 3以上の副作用は見られなかった。ゆえにPDTはROLCに対し有効でかつ安全な手段と思われる。今後手術治療との比較検討が必要と考えられる。