日本レーザー医学会誌
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膀胱癌に対するPhtodynamic Therapy (PDT)
内藤 克輔久住 治男
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1994 年 15 巻 1 号 p. 53-61

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抄録
表在性膀胱癌に対する, ヘマトポルフィリン誘導体とアルゴン色素レーザーを用いた光力学的治療法 (photodynarnic therapy, PDT) の二つの方法の結果について報告した。明らかな腫瘍部以外の正常に見える膀胱粘膜に上皮内癌 (CIS) やdysplasiaを随伴しない22症例の60腫瘍に対してレーザー光を直接照射するfocal PDTを施行した。大きさが1cm以下の16腫癌中15腫瘍において, 100ないし250J/cm2 の照射治療にて完全消失が認められた。大きさが2cmまでの腫瘍に対してはアルゴン色素レーザーの照射エネルギー量は100J/cm2 は必要である。大きさが2cm以上の腫瘍においては腫瘍の完全消失は認められなかった。種々の治療に抵抗性の40症例, 特にCISを有する症例に対して, レーザー光を膀胱内全照射するintegral PDTを施行した。10ないし30J/cm2の照射量を用いた。治療後3ヵ月の効果判定にて, 40例中29例 (72.5%) に完全緩解が, 5例 (12.5%) に部分緩解が認められた。完全緩解が得られた29例中9例においては, 5ヵ月より84ヵ月, 平均15.8ヵ月間再発が認1められていない。本療法施行後3ヵ月間は,治療前より膀胱容量が低下していた2例を除いて, 排泄性尿路造影法にて水腎症等は認められなかったが膀胱容量が150ml以下に低下した。integral PDTは膀胱のCISの治療として有用であると思われた。
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