昭和医学会雑誌
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原著
当院における入院中リハビリテーション依頼の現状
―リハビリテーション総合実施計画書を通して―
諸冨 伸夫小野 玄長澤 敏恵吉岡 尚美川手 信行水間 正澄
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2009 年 69 巻 2 号 p. 150-155

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抄録

リハビリテーション(以下,リハ)医療は診療科主治医,リハ科医師,セラピスト,看護師等のチーム医療として総合的に行うものである.リハ実施の際にはリハ総合実施計画書(以下,計画書)の作成が必須であると厚生労働省から指導されているが,当院における計画書の作成状況は把握できていない.そこでまず当院における計画書の作成状況を把握し,またその作成数を向上させることを目的として介入した.対象は2007年11月から2008年5月までに当院の入院病棟・中央病棟または昭和大学附属東病院に入院中に診療科主治医よりリハ科依頼のあった患者のうち再診および嚥下障害評価を除いた424件である.これを2007年12月20日に開催された病院連絡会で,計画書の作成依頼を行った前後で2つ(介入前群,介入後群)に分類した.さらに介入の効果を短期的・長期的に評価するため,介入後群を介入後—前期群,介入後—後期群に分類し,3群とした((1)介入前群:調査期間2007年10月29日~2007年12月28日,総依頼件数155件,(2)(1)介入後—前期群:調査期間2008年1月4日~2008年2月25日,総依頼件数121件,(2)介入後—後期群:調査期間2008年2月26日~2008年4月30日,総依頼件数148件).評価項目は(1)3群内の病棟内訳,(2)計画書の作成数,(3)診療科主治医名の記載数とした.(1)3群内の病棟内訳には有意差を認めなかった.(2)計画書の作成数は,介入後—前期群では介入前群と比較して有意に増加した(92/155 件(59.4%) vs 93/121件 (76.9%))(P=0.002).介入後—前期群と介入後—後期群の間には差を認めなかった.(3)診療科主治医名の記載数は,介入後—前期群では介入前群と比較して,有意ではないが増加した(40/92件(43.5%)vs 51/93件(54.8%)).介入後—前期群と介入後—後期群の間には差を認めなかった.当院における計画書作成数は不足しており診療科主治医の理解も不十分であった.また介入により短期的に計画書の作成状況は改善したが,長期的に改善することはなく当院におけるリハへの意識は低いことが示唆された.今後は当院の状況に合った計画書の使用方法を検討し,リハに対する理解が深まるようにしたい.

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© 2009 昭和大学学士会
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