昭和医学会雑誌
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原著
腰椎変性黄色靭帯における関連遺伝子のmRNA発現量の比較
村島 一平神 與市平泉 裕宮岡 英世山本 剛立川 哲彦
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キーワード: 黄色靭帯, mRNA発現量
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2009 年 69 巻 2 号 p. 143-149

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抄録

要約:腰部脊柱管狭窄症は高齢化社会において,日常生活における活動性を低下させる大きな要因として重要な位置を占めている.その主病変の一つである変性黄色靭帯内では,炎症・骨化・血管新生・軟骨変性・石灰沈着などの変化が起こっているとされる.今回われわれは術中採取した変性黄色靭帯を用い,組織学的に比較的正常に近い部位(unaffected portion)・正中部に近く病変の強い部位(interlaminar portion)・関節包側の骨付着部に近く病変の強い部位(capsular portion)の3箇所に分け,上記変化に関連があるとされる各種遺伝子(cyclooxygenase-2(COX2)/osteocalcin/endothelin-1/angiopoietin-1/bone morphogenetic protein-2(BMP2)/interleukin-8(IL-8))につきmRNA発現量を評価し比較を行った.術中採取した黄色靭帯よりクライオスタットを用い7μmの凍結切片を作製し,HE染色を行い組織像を確認した.メンブレン凍結切片にCresylViolet染色を行った後,各部位におけるmicrodissectionを行いmRNAを抽出した.cDNAを複製し,各種遺伝子に対するプライマーと反応させrealtimePCR法を行い発現量の比較を行った.unaffected portionにおいてはどの遺伝子も発現量は少ないと予想されたが,他部位に比し血管新生に関連するIL-8の発現を高く認めた.正常に近いと思われた部位においても微細な損傷に対する修復機構が働いており,搬痕化や膠原線維の蓄積につながっていくと考えられる.またinterlaminar portion・capsular portionにおいてもIL-8の発現を認めたが,血管新生はinterlaminar portionでより強く誘導されているものと考えられた.mechanical stressに関連するendothelin-1はcapsular portionで高く発現を認め,それに伴い活動的な変化を示す事が予想されたが,軟骨変性・骨化や炎症に関連する各種遺伝子についてはinterlaminar portion・capsular portionともに種々の程度に発現が見られた.変性黄色靭帯においては,骨付着部における内軟骨性骨化のみならず,骨との連続性のない部位においても骨形成に伴う肥厚がおこっていると考えられた.

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© 2009 昭和大学学士会
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