抄録
近年,形成外科では血管吻合を行う遊離移植術が発展をとげてきた.しかし血管吻合後に攣縮が生じ血行障害をきたすこともあり,改善がなければ皮弁壊死の原因となる.そのため臨床では血管吻合部の血管外にリドカインを局所投与し,治療を行っている.今回われわれはラットに同薬を血管外局所投与し,血流の調査と血管攣縮の予防について検討した.ラットの浅腹壁動脈にリドカインを血管外局所投与し,レーザードップラー(PERIMED社,PeriFlux System5000)で経時的に血流を測定した.またエピネフリンを同部位に投与することで血管攣縮モデルをつくり,リドカインによる治療効果を調査した.以下のように群を分けた.1.リドカインによる血流の調査 I群:生理食塩水0.2mlの1回投与,II群:生理食塩水1.0ml/hr持続投与,III群:2%リドカイン0.2mlの1回投与,IV群:2%リドカイン1.0ml/hr持続投与,2.リドカインによる血管攣縮の治療効果 V群:1000倍エピネフリン0.03mlの1回投与,VI群:1000倍エピネフリン0.03mlの1回投与 + 2%リドカイン0.2ml投与,VII群:1000倍エピネフリン0.03mlの1回投与 + 2%リドカイン1.0ml/hr持続投与.結果は2%リドカイン0.2mlの血管外1回投与では投与直後に血流がやや低下するものの,その後血流は増加した.同薬の血管外持続投与では血流増加の維持を認めた.2%リドカインには投与方法によって作用時間の差はあるものの血流増加作用を認めた.1000倍エピネフリン0.03mlを局所投与すると血管は攣縮し顕著な血流低下を認め,血流の回復には時間を要した.しかしリドカインの血管外1回投与と持続投与によってエピネフリンによる血流低下の抑制効果を認めた.以上よりエピネフリンで誘発した血管攣縮に対し,同薬は治療効果があると考えられた.臨床において術後の血管吻合部の血流維持と攣縮の予防には2%リドカインの血管外間欠的投与あるいは持続投与が有効であると推察された.