昭和医学会雑誌
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原著
リドカインによるLPS誘導性好中球性気道炎症抑制効果についてのマウスモデルを用いた検討
宮本 正秀田中 明彦横江 琢也田崎 俊之山本 義孝渡部 良雄山本 真弓大田 進足立 満美濃口 健治
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2011 年 71 巻 6 号 p. 632-637

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抄録
局所麻酔薬や抗心室性不整脈薬として広く実地臨床において使用されるリドカインは抗炎症効果を有することが知られている.われわれは,LPSの経気道的投与によって誘導される肺傷害マウスモデルを用いて好中球性炎症に対するリドカインの抗炎症効果について検討を行った.6~8週齢の雄性C57BL/6マウスに対して経気道的にLPS(lipopolysaccharide)を投与することによって好中球性炎症を誘導し肺傷害モデルを作成した.同モデルに対してリドカインを腹腔内に投与し(3,30mg/kg),LPS刺激24時間後に気管支肺胞洗浄液(BALf: Bronchoalveolar Lavage fruid)を採取した.なお,リドカインの投与にあたっては全身投与の経路から経静脈投与も検討したが,個体が小さく静脈確保が困難であったため,腹腔内投与を選択した.検体採取後,BALf中の総細胞数はヘモサイトメーターを用いて算出し,スライドグラス固定後に白血球分画を検討した.またBALf中のInterleukin(IL)-6濃度をenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にて測定した.リドカイン(3,30mg/kg)を単独で腹腔内に投与し,右心房から得られた血液とBALf中の白血球分画を解析したところ,リドカイン単独群はリドカイン非投与のコントロール群と比較し差を認めなかった.一方,リドカインを前投与し,LPSを経気道的に投与した24時間後に採取したBALf中の白血球分画では,LPSによって上昇した好中球数がリドカインによって有意に減少した.また,リドカインによる肺胞内の好中球浸潤の抑制と合致して,BALf中のIL-6の濃度が有意に低下した.以上より,マウスの肺傷害モデルにおいて,リドカインの全身投与は好中球性炎症を抑制する可能性が示唆された.
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© 2011 昭和大学学士会
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