昭和医学会雑誌
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71 巻, 6 号
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特集:失神—診断の進歩—
図説
原著
  • ―色素沈着の経年的変化について―
    根本 仁, 角谷 徳芳, 伊藤 芳憲, 木村 直弘
    2011 年 71 巻 6 号 p. 588-595
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    ダーモスコープは光の乱反射をおさえた拡大鏡であり,日常診療において皮膚腫瘍の診断に用いられている.今回われわれは,頬部正常皮膚をダーモスコープで観察し,色素沈着の経年的な変化を濃さと面積で解析した.0歳から80歳未満の日本人男女,計80名を対象とし,両側頬部を倍率50倍のダーモスコープで撮影した.コンピュータ上で,色素沈着の濃さを明度の指標であるL値に変換して評価した.色素沈着の面積は,画像解析ソフトImage Jを用いて測定した.80名に対し両側撮影したため160の画像が得られた.ダーモスコープで得られた画像では毛孔を中心に色素沈着を認めた.この毛孔周囲の色素沈着は4~5歳ごろより認められはじめ,遠心状に拡大し,互いに癒合していく傾向にあった.色素沈着の濃さは年齢と相関し(P < 0.0001),経年的に濃くなっていくが,40歳以降では一定となる傾向にあった.また60歳以降では男性は薄くなり,女性は濃くなる傾向にあった.色素沈着の面積は,男女ともにほぼ一定の増加率で経年的に増えていく傾向にあった(P < 0.0001).また色素沈着には男女差があり,男性の方が濃く,面積が大きいことがわかった.
  • 稲葉 宏, 笠井 史人, 國吉 泉, 飯島 伸介, 東 瑞貴, 和田 真一, 渡辺 英靖, 佐藤 新介, 水間 正澄
    2011 年 71 巻 6 号 p. 596-601
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    〔目的・方法〕回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)には,入院に当たって発症・受傷・手術から入院までの入院時発症後日数(発病・受傷・手術より急性期病院を経て回復期リハ病棟へ入棟するまでの期間)が厳密に定められており,一定の入院時発症後日数を超えた患者は入院が困難となっている.そのため,リハビリテーションによる回復が見込まれる患者においても,入院時発症後日数の延長によりその機会を奪われてしまうと想像される患者の存在が以前から危惧されていた.そこで今回,われわれは,回復期リハ病棟設立以前に当院当科へリハビリテーション目的で入院した患者の入院時発症後日数・入院時発症後日数延長の原因・回復期リハ病棟在院日数と転帰(在宅復帰率)の調査を行う事により,入院時発症後日数の予後に及ぼす影響を検討・考察した.〔結果〕在院日数・転帰(在宅復帰率%)は,入院時発症後日数が設定期間内の患者群(I群73症例)91.7±64.8日・80.1%が,設定期間超過の患者群(II群34症例)109.7±58.8日・67.6%より良好な結果を示した.しかしながら,何れの結果も有意差を認めるまでには至らなかった.しかも,II群の多く(34症例中,原因判明は25症例・73.5%)は,再手術・併存症や併発症の治療等が入院時発症後日数延長の原因となっていた上に,II群においても十分なリハビリテーションの効果が発揮され,在宅復帰な症例が34症例中23症例(67.6%)存在した.これらの結果より,定められた入院時発症後日数を超過した事のみによる判断にて患者の回復期リハ病棟への受け入れが困難となる事は,大きな問題であり,入院後の医療体制を含めて改善の余地が大いにあるものと考えられた.
  • 安齋 勉, 石川 慎太郎, 石川 貴子, 池谷 洋一, 酒井 健, 本田 豊, 村田 健三郎, 米山 早苗, 砂川 正隆, 佐藤 孝雄, 久 ...
    2011 年 71 巻 6 号 p. 602-609
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    非アルコール依存性脂肪性肝炎(NASH)は,通常,無症候性の肝疾患である.NASHでは肝細胞の炎症と傷害が繰り返され,その結果肝細胞の脂肪変性,さらには線維化が進行,肝硬変へと進展する.一方,進行性の肝炎あるいは肝癌において血小板機能障害をきたすことが複数報告されているが,NASHのような初期の肝臓障害(Early-Hepatopathy: EH)における血小板機能と血液流動性に関してほとんど検討されていない.そこで,我々は3’-methyl-4-dimethylaminoazobenzene(DAB)を用いてラットに初期の肝障害を発症させ,血液細胞の動態と血小板機能を観察し,血液流動性との関連を検討した.本実験では8週齢,約120gの雄性F344ラットを使用した. 被験ラットにはDABを0.06%の割合で混合した特殊餌を生後8週間目から16週間,自然給餌により摂取させた.対照群ラットには上記と同様に通常餌を摂取させた.実験開始後18 週目にラットを解剖,肝臓の外観観察後,薄切切片を作製,HE染色し,組織学的検討を行うとともに,血中alkaline phosphatase(ALP)濃度を測定することによって肝障害の発生を確認した.また,ラットの剖検時に採取した血液を対象に血液細胞数,血小板凝集能ならびに血液流動性を測定した.DABを16週間摂取させたラット肝臓では組織学的に肝細胞や核の大小不同,細胞質の空洞化を認め,血中ALP濃度も上昇をしていた.さらに被験ラットからヘパリン採血した血液の流動性は対照ラットと比較し有意に低下するとともに,血小板凝集能も亢進していた.本実験の結果から,NASHのような初期肝障害の病態把握には血小板凝集能や血液流動性の測定が有用であることが示唆された.
  • 大脇 理子, 田中 明彦, 横江 琢也, 松倉 聡, 山本 義孝, 渡部 良雄, 山本 真弓, 大田 進, 山口 宗大, 足立 満
    2011 年 71 巻 6 号 p. 610-615
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    背景・目的:吸入流速(PIF)の低下は吸入ステロイド薬(ICS)の効果を減弱させることが知られている.そこで,ICSを実際に使用している喘息患者におけるPIFの現状を調査し,PIFを規定する患者背景因子について検討する.方法:昭和大学呼吸器・アレルギー内科外来に通院中の成人喘息患者130名(男性47名,女性83名)を対象に,患者背景因子を調査すると共にIn-Check Dial(diskus用のアダプター)を用いてPIFの測定を行った.結果:PIFの平均は86.9±26.9L/分で,男性は女性と比較し有意に高値であった.年齢と身長で補正してもその傾向は同様であった.PIFが50L/分未満の患者は130名中6名(4.6%)で,その内5名が女性であった.患者背景因子の中でPIFと有意な相関関係を認めたのは年齢,身長,%FVC,%FEV1,ACTであった.これらの間で偏相関を解析したところ,年齢,%FVC,%FEV1にPIFとの有意な相関を認め,これらがPIFとそれぞれ独立して相関関係を有することが示唆された.結語:高齢(特に女性)で,呼吸機能が極端に低下している喘息患者は吸入流速が低下している可能性が高いため,その点を考慮に入れICSを選択するべきであると考える.
  • 堀田 紗代, 土岐 彰, 石井 徹子, 山下 紘正, 柿本 隆志, 千葉 敏雄
    2011 年 71 巻 6 号 p. 616-624
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    外科治療は低侵襲,無侵襲の方向へ向かい進歩しており,とくに胎児治療においては低侵襲治療への期待が大きい.深部組織を標的としながら,その標的のみにしか作用を加えない強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound: HIFU)は,その低侵襲性から将来性が期待されている.一方,胎児仙尾部奇形腫の低侵襲性治療としては,栄養血管の遮断を目的としたものを含めこれまで様々な方法が試行されているが,いまだ確立された治療法はない.今回,われわれは最も低侵襲性の治療方法としてHIFUが有用であると考え,動物実験モデルを用いてさまざまな基礎実験を行った.全身麻酔下に,5羽の白色家兎(体重2.5~3.0kg,雄)の左腎臓を体外へ脱転,露出し,腎実質の動脈を対象としてHIFU照射(5秒間×3回)を行った.使用した振動子は,周波数4.44MHz,焦点距離42mmのものである.このHIFU照射を術後7,14日に同様に反復して行い,3か所ずつ計9か所に照射した.28日後に両側腎臓を摘出し重量を測定した.また,照射前と28日後に腎動脈の直径(2r・cm)および平均血流速度(v・cm/sec)を測定し,血流量(60πr2v・ml/min)を算出した.腎動脈の血流量は5羽すべてに減少を認め,減少率は照射前の1.7~82.7(平均52)%であった.5羽中4羽で,HIFU照射側の腎が非照射側に比べ重量が減少する傾向にあった.摘出した腎組織のHE染色で,HIFU照射側腎には肉眼的にみた楔状域に尿細管の拡張所見を認めた.Elastica van Gieson染色では,血管内フィブリン塊形成,血管壁の弛緩があり,虚血性の変化が示唆された.血流量の豊富な腎臓において,腎動脈の腎組織内分枝へのHIFU水中照射を行うことより,胎児仙尾部奇形腫の栄養血管閉塞のモデルとした.これにより腎血流量は最大で約83%減少した.この結果から,HIFUを胎児仙尾部奇形腫の治療に応用することにより,高拍出性心不全から胎児水腫にいたる致死的な状況を回避し得る可能性が示唆された.HIFU照射は低侵襲で,かつ繰り返し施行できるという利点のあることからこれを生かし,さらに安全性,確実性を一層高めることにより胎児治療の手段として有用な手技となろう.
  • 永原 敬子, 土橋 一重, 高橋 兼一郎, 板橋 家頭夫
    2011 年 71 巻 6 号 p. 625-631
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    小児の体格評価に海外では性別年齢別BMIパーセンタイル値による判定法が用いられる.一方,わが国では標準体重との隔たりをみる肥満度法が一般的である.そこで,2000年学校保健統計調査報告書(小中学生計496,320人)のデータを基に,BMIパーセンタイル法と肥満度法との差異を比較した.まず,学年毎に身長別(+2SD,平均,-2SD)にBMI95および5パーセンタイル値に相当するBMIから肥満度(性別年齢別身長別標準体重法および性別身長別標準体重法)を求めた.次に学年別身長別に肥満度+20%および-20%に相当するBMIパーセンタイル値を算出し,2つの体格評価にどれ程の違いがあるのか表に示した.その結果,男女ともにBMIパーセンタイル法では高身長児は肥満と判定されやすく(痩身と判定されにくく),低身長児では痩身と判定されやすい(肥満と判定されにくい)ことが明らかとなった.この体格判定のずれは,特に低身長児で大きく,男子は小学6年生から中学1年生,女子は小学5年生で最大となった.さらに,BMIパーセンタイル値と肥満度は必ずしも平行して変動しないことが示された.すなわち,小中学生においてはBMIパーセンタイル法を用いる場合,その特性を十分理解した上で使うことが望ましいと考えられる.
  • 宮本 正秀, 田中 明彦, 横江 琢也, 田崎 俊之, 山本 義孝, 渡部 良雄, 山本 真弓, 大田 進, 足立 満, 美濃口 健治
    2011 年 71 巻 6 号 p. 632-637
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    局所麻酔薬や抗心室性不整脈薬として広く実地臨床において使用されるリドカインは抗炎症効果を有することが知られている.われわれは,LPSの経気道的投与によって誘導される肺傷害マウスモデルを用いて好中球性炎症に対するリドカインの抗炎症効果について検討を行った.6~8週齢の雄性C57BL/6マウスに対して経気道的にLPS(lipopolysaccharide)を投与することによって好中球性炎症を誘導し肺傷害モデルを作成した.同モデルに対してリドカインを腹腔内に投与し(3,30mg/kg),LPS刺激24時間後に気管支肺胞洗浄液(BALf: Bronchoalveolar Lavage fruid)を採取した.なお,リドカインの投与にあたっては全身投与の経路から経静脈投与も検討したが,個体が小さく静脈確保が困難であったため,腹腔内投与を選択した.検体採取後,BALf中の総細胞数はヘモサイトメーターを用いて算出し,スライドグラス固定後に白血球分画を検討した.またBALf中のInterleukin(IL)-6濃度をenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にて測定した.リドカイン(3,30mg/kg)を単独で腹腔内に投与し,右心房から得られた血液とBALf中の白血球分画を解析したところ,リドカイン単独群はリドカイン非投与のコントロール群と比較し差を認めなかった.一方,リドカインを前投与し,LPSを経気道的に投与した24時間後に採取したBALf中の白血球分画では,LPSによって上昇した好中球数がリドカインによって有意に減少した.また,リドカインによる肺胞内の好中球浸潤の抑制と合致して,BALf中のIL-6の濃度が有意に低下した.以上より,マウスの肺傷害モデルにおいて,リドカインの全身投与は好中球性炎症を抑制する可能性が示唆された.
症例報告
  • 東 里美, 尾頭 希代子, 安本 和正
    2011 年 71 巻 6 号 p. 638-643
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,アレルギーがなかったにもかかわらず,2回の全身麻酔においてアナフィラキシーショックを発症し,ラテックスアレルギーと診断された11歳女児を報告する.生来より総排泄孔異常,総胆管拡張症,完全内臓逆位,左腎欠損,潜在性二分脊椎があり,総排泄孔根治術や肝管空腸吻合術など,10歳までに計5回の全身麻酔による手術が行われている.既往歴にアレルギーを疑うものはなかった.今回,膀胱尿管逆流に対し,逆行性尿路造影が行われた.尿路造影開始後25分に心拍数が突然増加し,収縮期血圧は著しく低下した.気道内圧が上昇し,SpO2が測定不能となった.覆布をはがして皮膚を観察したところ,下半身を中心に紅斑と膨疹を認めた.アナフィラキシーを疑い,アドレナリンの投与で症状は改善した.造影剤によるアナフィラキシーが強く疑われたため,原因特定のための精査は行わなかった.15か月後,便秘症に対し全身麻酔下での摘便を行ったところ再度アナフィラキシーを呈し,アドレナリンの投与で症状は改善した.術後の採血検査で,非特異的IgE抗体価は1120UA/ml,血清ラテックス特異的IgE抗体価はクラス6の強陽性であり,ラテックスアレルギーと診断した.術中にアナフィラキシーが発症した場合には原因としてラテックスを念頭に置き,精査を行う必要がある.また,発症を予防するため,ラテックスフリー環境を構築すべきである.
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