昭和医学会雑誌
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夏期に於ける高温作業者の生体機能を主とした実態調査
小沢 勝美杉山 心一近藤 富保谷淵 修三鈴木 延明宮下 録司村田 恒雄村田 正
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1958 年 18 巻 4 号 p. 367-370

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抄録
昭和32年7月25日より8月3日迄に夫々3日間ずつ某工場の高温作業場である鍛造工場, 外業及び鍍金工場, 鋳造・鋳鋼工場の3群に就て, 作業環境及び作業者の身体諸機能を調査し高温環境下の作業が生体に如何なる影響を与えているかを観察した.
(1) 温度条件を主として行った作業環境は殆んどが恕限度前後を示し, 特に鍛造工場, 鍍金工場, 鋳造・鋳鋼工場のズク熔解炉・鉋金熔解炉附近が甚しく, 黒球温度49~56.5℃, 実効輻射熱10~20℃, 気温40~47.5℃に及んでいた.
(2) 高温環境下の作業が身体の諸機能に及ぼす影響は高温と作業強度の相乗積に比例していた.即ち高温という温度条件においては3群に大した優劣はつけられないが, 作業の強度は鍛造工場が最も大で, 外業及び鍍金工場は之に次ぎ, 鋳造・鋳鋼工場が最も低かった.この状態を反映して高温作業が身体諸機能に及ぼす度合を一単的に示す示標である作業前後の体重減少度, 労働時間中の飲水量, 発汗量, 膝閾値の増加度, 全血血漿比重の増加度, 赤血球最小抵抗の減少度, 尿中食塩排泄量等は何れも鍛造工場, 外業及び鍍金工場, 鋳造・鋳鋼工場の順になっていた.
(3) 之に反して自覚症状調査を含めた疲労調査の諸成績は鋳造・鋳鋼工場が最も疲労度高く, 鍛造工場之に次ぎ, 外業及び鍍金工場が少ないのは, 作業内容から見て鋳造・鋳鋼工場が余り移動性のない作業であり, しかも勤務時間外の自由時間が著しく少ないのに反して, 外業及び鍍金工場の作業は移動性があり, 作業者の勤務時間外自由時間が大体確保されている事も原因しているものと思われる.
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