昭和医学会雑誌
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大脳辺縁系と針鎮痛との関係
I.誘発電位よりみた針鎮痛の求心路
久光 正
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1979 年 39 巻 5 号 p. 551-557

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抄録
1) 家兎の脳内に双極の慢性電極を植え込み, 無麻酔, 無拘束の状態で針麻酔の刺激によって現われる誘発電位を記録し, 針麻酔の鎮痛の出現にあづかる求心路について検索した.
2) 中脳中心灰白質の背側部の限局された部位から, 耳根部に与えた針刺激によって誘発電位が記録された.
3) 誘発電位は陽性, 陰性波から成り立ち, 針刺激によって筋に収縮が現われ始める強度となると誘発電位が出現し, 更に強度を増大し筋収縮が大となるにつれ誘発電位も増大した.刺激が侵害性刺激の強度となると新たに潜時の長い陽性, 陰性波が出現した.
4) 10mg/kgのモルヒネは誘発電位には殆んど影響を示さなかった.
5) 針鎮痛の起こり易い耳根部刺激で誘発電位が記録されたのに反し, 針鎮痛の起こり難い躯幹部の刺激では誘発電位が出現し難かった.
6) 針刺激によって視床中心核, 中隔核, 帯状束, 海馬などの痛覚の古脊髄視床路及びいわゆる痛みの情動系に誘発電位が記録された.誘発電位の波形は, 中脳中心灰白質から記録されたものとほぼ同様で, 刺激を強めると遅い成分が出現する点も同様であった.尾状核からは誘発電位は記録されなかった.
7) 中脳中心灰白質の電気刺激によって, 中隔核, 帯状束, 海馬から誘発電位が記録されたが, これらの誘発電位の波形は末梢に刺激を与えた時とほぼ同様であった.また帯状束の誘発電位の潜時と末梢刺激により中脳中心灰白質に出現する誘発電位の和は, 末梢刺激により帯状束に出現する誘発電位の潜時にほぼ等しかった.
稿を終るに臨み, 終始御懇篤なる御指導を賜わりました恩師武重千冬教授に深甚なる感謝を捧げます.
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