抄録
ラットの尾逃避反応の閾値を痛覚閾として測定した針, モルヒネ鎮痛に対するドーパミンの拮抗剤pimozideの作用から, 両者の鎮痛の発現にあづかるドーパミン系の関与を検した.針鎮痛は4mg/kg (i.p.) のpimozideによって完全に拮抗された.pimozide単独では痛覚閾値に影響を与えなかった.針鎮痛に対するpimozideの拮抗作用は濃度―反応的であった.0.5mg/kgのモルヒネ鎮痛もpimozideで完全に拮抗された.針鎮痛の求心系にあたる中脳中心灰白質背側部, 中隔核外側部, 視床下部前部などの刺激によって発現する鎮痛に対してpimozideは完全に拮抗した.遠心系の下行性抑制系の起始部位の一部にあたる中脳中心灰白質腹側部の刺激によって現われる鎮痛に対してはpimozideは全く拮抗しなかった.以上の結果から針, モルヒネ鎮痛の発現にあずかる内因性モルヒネ様物質の遊離に関与する針, モルヒネ鎮痛の求心系にドーパミン系が関与していることが想定された.