β-blockerの中枢作用機序を臓器のMAO活性に対する効果と膜安定化作用ならびに局所麻酔作用について検討した.
Wistar系雄性ラットの脳と肝を摘出し, 脳はhomogenateを肝はmitochondriaを酵素標品として使用し, MAO活性の測定は基質として
14C-5-hydroxytryptamine (5-HT) と
14C-β-phenylethylamine (β-PEA) を使用し, Wurtmanらのradiometricassay法に従い行った.また赤血球膜に対する作用はラットの血液を用いparpart法に準じ溶血阻止作用を, 局所麻酔作用はウサギの角膜知覚麻痺作用で検討した.β-blockerとしてはpropranolol, pindolol, atenolol, oxprenololを用い次の様な結果を得た.
ラット脳homogenate MAOに対して5-HT基質では, 1×10
-4MよりMAO活性阻害が認められ1×10
-3Mにおいてpropranololで80%, pindololで60%, oxprenololで40%のMAO活性阻害が認められたが, atenololでは認められなかった.propranololのI50は5×10
-4Mであった.β-PEA基質では, 1×10
-3Mにおいてpropranololのみ50%の阻害が認められた.ラット肝mitochondria MAOに対して5-HT基質では, 1×10
-5MよりMAO活性阻害が認められ1×10
-3Mにおいてpropranololで90%, pindololで80%, oxprenololで50%のMAO活性阻害が認められたが, atenololでは認められなかった.β-PEA基質では, 1×10
-3Mにおいてpropranolol及びoxprenololのみ40%のMAO活性阻害が認められた.Pargylineは脳, 肝MAOに対し5-HT, β-PEA基質とも1×10
-5Mで100%近い阻害が認められた.Propranolol, pindololはβ-PEAより5-HT酸化の方をより強く阻害した.一方oxprenololはβ-PEA, 5-HT酸化とも同じ程度の阻害が認められた.Propranolol, pindololのMAO活性阻害は5-HTを基質にした場合透析法により活性が回復し可逆性が認められた.ラット肝mitochondria MAOに対に対するpropranolol, pindolol, oxprenololの阻害様式を5-HTを基質としてLineweaver-Burkの方法によりプロットするとpropranololのMAO阻害機構は競合的であり, oxprenolol, pindololは非競合的であった.ラット赤血球膜の溶血阻止による膜安定化作用は6×10
-5Mよりpropranolol, pindolol, atenololに認められoxprenolol, pargylineでは認められなかった.溶血阻止効果はpropranololでは4×10
-4Mで80%, pindololでは1×10
-3Mで60%, atenololでは1×10
-3Mで45%とそれぞれ最も強く認められた.ウサギ角膜の表面麻酔作用はpropranololでは2×10
-4Mから1×10
-3Mで認められpindolol, oxprenololでは1×10
-3M~1×10
-2Mで認められた.atenololではほとんど認められなかった.
以上よりβ-blockerはβ-PEAより5-HT酸化をより強く阻害することからtype A MAOをより強く阻害することが認められた.MAO活性阻害の強弱は膜安定化作用において溶血阻止作用より局所麻酔作用に相関が認められた.またpropranololのMAO阻害機構は競合的であることよりMAOの活性部位に作用していることが示唆された.
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