抄録
家兎を仰臥位にして現われる動物催眠の持続時間を指標として動物催眠と針麻酔の中枢機序との関連を検索した.動物催眠の持続時間はオピエートの特異的拮抗剤naloxoneでは変化しなかったが, 針麻酔の鎮痛の求心路にあたる中脳中心灰白質背側部の刺激あるいはmorphineの投与によって延長し, この延長はnaloxoneあるいは針麻酔の求心路の破壊によって消失した.
動物催眠時間はセロトニン拮抗剤であるmethysergideでは短縮したがモノアミンの枯渇剤であるtetrabenazineでは延長した.また橋の背側部の第四脳室の外側部の破壊によって動物催眠時間の短縮がみられた.以上から動物催眠の誘起は内因性モルヒネ様物質にはよらず, 従って, 針鎮痛の発現機序にはよらないが, 動物催眠誘起の中枢は針鎮痛の求心路の活動や, モルヒネによって遊離された内因性モルヒネ様物質によって影響をうけ, 活動することが判明した.