昭和医学会雑誌
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照射による担癌マウスの脾細胞幼若化反応の変動
篠塚 明
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1981 年 41 巻 4 号 p. 367-381

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抄録

C3H/Heマウスにsarcoma180細胞を移植し, 経時的に脾細胞のmitogen (PHA, Con A, LPS) に対する幼若化反応を測定し, 随伴免疫との関係を検討した。幼若化反応は腫瘍による免疫抑制のため担癌早期に著明に低下するが, PHA反応とCon A反応はその後回復を示した。しかしLPS反応はほとんど回復しなかった。PHA反応のcpm値と脾細胞数との積 (PHAに反応する脾細胞数) は随伴免疫 (再移植抵抗性) と相関を示し, それが正常レベルの1.5倍になった時に随伴免疫が成立した。全身照射後の移植実験により両者の相関性はより確かになった。Con A反応の回復は良好で腫瘍移植後Con A/PHA比は経時的に高まり, これはsuppressor T cellの活性の上昇を示唆しているものと思われる。腫瘍を照射により消失させるとPHAに反応する脾細胞数は長期間高いレベルを保ち, 再移植抵抗性の持続時間も長い。逆に腫瘍を切除するとPHAに反応する脾細胞数の減少は早く, 再移植低抗性性の消失も早い。随伴免疫の維持には不活化された腫瘍細胞が長く体内に留まることが必要であり, 照射はそれに好都合であると思われる。幼若化反応と脾細胞数もこれと一致した動きを示す。

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