抄録
アルコール性慢性膵炎は他の慢性膵炎と臨床像が異なる.著者らはその病態を究明する目的で膵液中のmucoproteinをhexosamine (Hex) を指標として行った.膵液はPancreozymin-secrtin test (PS test) により採取し, Hexの定量はElson Morgan反応のBoasの改良法に準じて行った.定量法の基礎的検討をした後, 胆道系疾患による疑陽性を除外するためにはPS testによるS4相で測定するのが最適と考えた.その結果, 慢性膵炎群のHex濃度は正常対照群のHex濃度に比し有意の高値を認めた.さらに, 慢性膵炎を成因別にアルコール性慢性膵炎と非アルコール性慢性膵炎に分けて検討した結果, アルコール性は非アルコール性に比較して有意のHex濃度の高値を認めた.石灰化を有する例でよりその値は顕者であった.次に, PS testの因子低下別検討から, PS testの機能障害度に応じてHex値は高くなり, Hexは膵障害の程度を良く反映している.同程度の機能低下群でHex濃度を比較するとアルコール性慢性膵炎は非アルコール性慢性膵炎に比し高値のHex濃度を示した.この結果から, アルコール性慢性膵炎は他の膵炎に較べて進行程度が強いのみでなく, その発症及び進展が特異であり, mucoproteinが密接に関係があると考えられた.