昭和医学会雑誌
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42 巻, 5 号
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  • 扇内 幹夫, 藤巻 悦夫, 北條 博, 福沢 啓一, 滝川 宗一郎, 金 隆志
    1982 年 42 巻 5 号 p. 539-544
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 諸星 利男, 神田 実喜男
    1982 年 42 巻 5 号 p. 545-554
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 陣内 卓雄
    1982 年 42 巻 5 号 p. 555-563
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    カニクイザル成獣10頭 (♂: 6, ♀: 4) の右側三角筋について, 筋線維分類と筋重量, 断面の筋線維総数および筋線維径の計測算定を行い, 同種のサルにおける棘腕筋および下肢筋と比較して, 三角筋の筋線維構成の特徴を明らかにした.筋線維の分類はSudan Black B染色によった.三角筋の筋重量は平均18.4g (13.1~26.5g) で, 棘腕筋中最大の僧帽筋よりもやや大であり, ヒトと比べて大凡体重比に等しかった.断面における筋線維総数は平均147, 511 (113, 996~194, 208) で, 前脛骨筋とほぼ等しく, 同筋よりも個体差は少なかった.さらに, 三角筋の中で中部 (acromiodeltoideus) は他の部よりも筋線維数が多い傾向が見られた.全筋線維中に占める白筋線維の比率は平均35.7% (27.3~42.4%) で, 棘腕筋よりもわずかに, 前脛骨筋よりも著しく低く, 赤筋線維の比率が他よりも高かったが, 三角筋中の部位差は認められなかった.筋線維の太さは平均, 白筋線維は3723.2μ2, 赤筋線維は2153.3μ2でそれぞれ棘腕筋に比べて著しく大で, 前脛骨筋に匹敵した.さらに, 三角筋後部では白筋線維4557.2μ2, 赤筋線維2515.8μ2で他部に比べて大で, 僧帽筋および前鋸筋の尾側部に大凡匹敵した.また, 筋線維の太さは両筋線維とも体重大の例では大なる筋線維が現われる傾向が見られた.白筋線維と赤筋線維の太さの比率は三角筋では平均1.73で, 他の筋よりも著しく小で, 赤筋線維が他筋に比べて特に大であった.以上のことから, 三角筋では全体として赤筋線維の比率が高くて持続的な収縮因子が強いことが考えられたが, さらに三角筋の中部は三部の中で最も筋線維数が多く, 三角筋では上腕の外転固定に働く頻度が高いことが考えられた.三角筋後部は白筋線維, 赤筋線維とも他部よりも筋線維径大で, 僧帽筋や前鋸筋の尾側部に匹敵し, これらの筋とともに上腕の後方伸展に強く働くことが考えられた.三角筋の筋線維数および筋線維径は体重と相関傾向が見られ, ヒトとの差も体重比に等しかったことから, ヒト三角筋の筋線維構成についても大凡カニクイザルに近いものであることが考えられた.
  • 白鳥 つや子
    1982 年 42 巻 5 号 p. 565-578
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今までに日本食品中のBenzo〔a〕pyrene (以下B〔a〕Pと略す) の含有量についての報告はほとんどない.日本人の胃癌の高い発生率からみて, 我々の日常食品中の発癌性多核芳香族炭化水素の含有量の研究を試みた.多核芳香族炭化水素の中で, 発癌性が強いといわれているB〔a〕Pの分析方法を確立した.食品からのB〔a〕P抽出は, 試料のソックスレー抽出器によるメタノールアルカリ分解抽出―n―ヘキサン, ジメチルスルホキシド及びn―ヘキサン抽出―シリカゲル及びアルミナカラムクロマトグラフィー螢光測定と行なった.螢光測定によるB〔a〕Pの定量は, 励起波長383nmにおける403±3nmの螢光強度を測定し, ベースライン法により行なった.この方法を用いて, 日常食品約100種類を分析した.その結果0~29.8ppbの範囲にB〔a〕Pが検出された.一方, 我々の毎日の食事からのB〔a〕Pの実際の摂取量を知るために, 都内の某女子大学寮の食事の提供をえて, 分析を同様に行なった.その結果, 1人1日のB〔a〕P摂取量は25.14~130.81ngの範囲で, 平均57.82±26.42ngであった.
  • 鬼丸 高茂
    1982 年 42 巻 5 号 p. 579-588
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    私は胎生12週から, 胎生40週までの胎児33体を使用し, この関節軟骨の表面, および割面構造の成長過程を走査電子顕微鏡により観察し, 次の結果を得た. (1) 大腿骨骨頭, 上腕骨骨頭, 距骨関節面それぞれの関節軟骨の表面, 関節軟骨割面においては, 発達の過程に大差はない.また各関節とも, その構造にも大差がない.関節軟骨の表面は胎生12週では一定の方向性をもった隆起が認められるが, 胎生15週になるとその隆起はさらに大きくなる.胎生20週前後より, 膠原線維が現われ, 次第に膠原線維が成熟してきて膠原線維が集まり, 線維束になっていくのが見える.胎生40週になると, 関節軟骨表面は成人とほぼ同じ表面構造となる.その表面構造は一定の方向性を持った膠原線維と膠原原線維が認められ, それが膠原線維束となって関節表面の凹凸をつくっている. (2) 関節軟骨の割面は, 胎生12週において, 最表層は膜様構造で, その下層は軟骨細胞が密集し, 層が2分されている.その中で, 深層の軟骨部には基質が認められる.胎生15週になると表層と横走する線維束様基質の層, その下に基質の中に細胞の密集する3つの層が見られる.層の基質の中の細胞間隔は狭い.胎生20週になると表層は薄くなり, その下の横走する線維束様基質の層は厚くなる.その下の軟骨基質問にある細胞間の間隔は僅かに広くなっている.胎生40週になると表層は薄くなり, その下層の横走する線維束様基質の層と識別できなくなり, 横走する線維束様基質の層はその幅を増し, その下の深層の細胞間隔はさらに広くなる. (3) 表面構造と割面構造からみて, 成長過程にある関節は胎生40週に至ると成人関節軟骨に類似してくる.
  • 小堀 正雄, 米良 仁志, 武重 千冬
    1982 年 42 巻 5 号 p. 589-598
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚の閾値として, 経穴部および非経穴部刺激による鎮痛と鎮痛抑制系との関係, およびそれぞれの鎮痛を発現させる中枢経路の検索を行なった.抑制系の視床正中中心核外側部 (1-CM) を局所破壊した後は, 経穴部刺激による鎮痛は増大して出現するが, 増大した鎮痛はデキサメサゾンで拮抗された.また経穴部刺激による鎮痛発現系 (R2) に属すると同定されている中隔核外側部 (1-SP) と1-CMを破壊した後, 経穴部の刺激で現われる鎮痛はデキサメサゾンで部分的に拮抗され, 残余の鎮痛はナロキソンで拮抗された.ナロキソン単独では部分的な拮抗がみられた.針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) を発現させるのと同じ強さ, 同じ頻度の刺激を非経穴部に与えても鎮痛は出現しないが, 1-CMを破壊した後は鎮痛が発現し, この鎮痛は1-SPを破壊してもほぼ同じように現われた.この鎮痛はデキサメサゾンで完全に拮抗された.経穴部刺激による鎮痛 (針鎮痛) の下垂体に到る求心路 (R2) にあたる中脳中心灰白質背側部, 海馬背側部, 中隔核外側部などの刺激で現われる鎮痛はデキサメサゾンの影響を全くうけなかったが, 抑制系によって抑制されている鎮痛発現路 (R1) にあたる中脳中心灰白質外側部 (1-PAG) や視下部前部 (AH1) の刺激で現われる鎮痛は, R2系の刺激と同じように刺激終了後も長く持続したが, この鎮痛はデキサメサゾンで部分的に拮抗された.1-PAGの局所破壊で非経穴部刺激による鎮痛は出現しなくなったが, 経穴部刺激による鎮痛 (針鎮痛) は全く影響をうけなかった.1-CMと1-SP破壊後, 非経穴部刺激によって現われる鎮痛には有効性の個体差はみられなかったが, 経穴部の刺激によって現われる鎮痛には有効性の個体差がみられた.以上から抑制系破壊後は非経穴部の刺激でデキサメサゾンで拮抗される有効性の個体差のない鎮痛が出現する.この鎮痛は抑制系の抑制によって通常は出現しない.抑制系破壊後, 経穴部の刺激で出現する鎮痛にはデキサメサゾンで拮抗される成分とナロキリンで拮抗される成分があり, ナロキソンで拮抗される成分には有効性の個体差がみられることなどが明らかとなった.
  • 米良 仁志, 小堀 正雄, 武重 千冬
    1982 年 42 巻 5 号 p. 599-604
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) 抑制系を破壊した後は, モルヒネ耐性が形成され難くなり, また一たん形成されたモルヒネ耐性は消失し, 針, モルヒネ鎮痛が出現することなどを前報で報じた.その後の研究で鎮痛抑制系破壊後は, 針鎮痛を発現させる系路 (R2) とは別の系路 (R1) によって, デキサメサゾンで拮抗される鎮痛が出現することが明らかになった.この系 (R1) にはモルヒネ耐性は形成され難いと考えられるので, 針鎮痛抑制系の破壊後に上記の現象が現われた可能性が生じ, この可能性を実証する研究を行った.ラットの尾逃避反応を痛覚の閾値とした。針鎮痛とほぼ同程度の鎮痛を現わす腹腔内投与の0.5mg/kgモルヒネ鎮痛 (モルヒネ鎮痛) は, 針鎮痛と同じように, デキサメサゾン0.4mg/kgを24時間前に, 0.2mg/kgを1時間前に投与しても全く影響をうけなかった.針鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (1-CM) と, 針鎮痛発現系 (R2) の中隔核外側部 (1-SP) を局所破壊した後, モルヒネによって鎮痛が発現した.この鎮痛はナロキソンで部分的に拮抗され, 経穴部の刺激によるR1系の鎮痛と同じような性質を示した.1-CMと1-SP破壊後, すなわちR1系だけにした時には, 大量のモルヒネ (初日50mg/kg, 翌日から100mg/kg連日10日間) を投与しても, モルヒネ鎮痛は僅かしか減少しなかった.また非経穴部刺激による鎮痛はモルヒネ耐性とは全く関係がなく, 耐性形成後も影響をうけなかった.以上から, モルヒネ耐性は主として針鎮痛発現系に形成されることが明らかになった.この事実はR2系による鎮痛はナロキソンで拮抗された事実と一致した.また抑制系や針鎮痛発現系 (R2) 破壊後, 経穴部刺激で鎮痛を現わすR1系にはモルヒネ耐性は僅かしか形成されないこと, また非経穴部の刺激による鎮痛発現系 (R1) にはモルヒネ耐性は形成されないことは, R1系の経穴部刺激による鎮痛がナロキソンで僅かしか拮抗されなかった事実, および非経穴部刺激による鎮痛がナロキソンで拮抗されなかった事実と一致した.針鎮痛を発現する系と非経穴部の刺激で鎮痛を発現する系とは別の経路の活動によって鎮痛が出現することが, モルヒネ耐性の形成の様相からも明らかとなった.
  • 中山 貞男, 後藤 裕美, 小口 江美子, 岡崎 雅子, 坂本 浩二
    1982 年 42 巻 5 号 p. 605-611
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    diisopropy1 1, 3-dithiol-2-ylidene malonate (malotilate) の四塩化炭素 (CCl4) 誘導性肝障害に対する作用機序解明の試みとして, CCl4とmalotilate併用時の肝ならびに血清脂質, 血清酵素の変化と, 肝の微細構造変化について検索した.実験には体重170~200gのSprague-Dawley系雄性ラットを用いた.CCl4肝障害はCCl4 1ml/kg, s.c.により作成し, malotilateはCCl4投与と同時に250mg/kgを経口投与し, その後15, 30分ならびに1, 2, 6, 24, 48, 72時間毎に肝と血液を採取し各検索を行った.肝蛋白はCCl4投与により低下したが, malotilate併用により抑制を認めた.肝脂質はCCl4投与によりtotal lipid (TL) , total cholesterol (TC) , triglyceride (TG) の増加を認めた.malotilateをCCl4に併用するとTLならびにTC増加は抑制されたが, TG増加に対しては抑制を認めなかった.血清脂質はCCl4投与によりTLの減少を認め, malotilate併用によりこの減少は抑制されたが, TC, TGに対する影響は明らかではなかった.血清のtransammase (GOT, GPT) , lactate dehydrogenase (LDH) はCCl4により上昇を示した.CCl4にmalotilateを併用するとGOT, GPTの上昇は明らかに抑制されたが, LDHに対する影響はみられなかった.光学顕微鏡による肝の組織学的検索では, CCl4投与によりみられる脂肪変性は投与15分から2時間においては肝小葉全体にみられる変性が主であるが, 6~48時間には中心静脈周囲に強度の細胞壊死と核の消失がみられる小葉中心性の障害が著明となった.これにmalotilateを併用するといずれの時期においても小脂肪滴による小葉全体の脂肪変性は認めたが, 細胞壊死や核の消失, 大滴性の小葉中心性の脂胞変性はみられず, malotilateのCCl4脂肪肝抑制作用が著明に認められた.電子顕微鏡による微細構造変化は, CCl4によるmitochondriaやrough endoplasmicreticulum (rER) の膨化と脂肪滴の出現が著明であった.CCl4にmalotilateを併用すると, mitochondriaの膨化変形は明らかに抑制され, rERの変性や脂肪滴の出現も抑制される結果を得た.今回の実験から, 生化学的にも形態学的にもmalotilateはCCl4肝障害を抑制することが明らかとなった.
  • 中山 貞男, 後藤 裕美, 殿岡 まゆみ, 坂本 浩二
    1982 年 42 巻 5 号 p. 613-618
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Diisopropyl 1, 3-dithiol-2-ylidene malonate (malotilate) の正常脂質代謝に及ぼす影響をラットを用いて検索した.実験には体重160~170g, 6週令のSprague-Dawley系雄性ラットを用いた. malotilateは20, 100mg/kgを1日1回4週間経口投与し, 1, 2, 4週間後における肝ならびに血清の脂質とcholinesterase (ChE) に及ぼす影響を検討した.malotilate投与により肝重量は1週間後に増加を認めたが, 2, 4週間後においては対照と同様の値であった.肝脂質はmalotilate投与により, triglyceride (TG) が1週間後にtotal cholesterol (TC) が4週間後に減少し, total lipid (TL) ならびにphospholipid (PL) に変化はみられなかった.血清脂質のうちTLに変化はみられなかったが, TG. nonesterifid fatty acidはmalotilate投与群で低値の傾向を示した.malotilate100mg/kg, p.o.でPLならびにhigh density lipoprotein (HDL) 中のPLは高値を示し, HDL中のcholesterolも投与4週間後には高値を示した.血清のGOT, LDHはmalotilate 100mg/kg, p.o.1週間後に低下を示したがその他の酵素には何ら影響を認めなかった.肝ChEはmalotilate投与1週間後にacetylcholine, butyryl cholineを基質とした場合に抑制がみられ, 血清ChEはacetyl-β-methyl-cholineを基質とした場合に抑制を示した. malotilateの正常脂質代謝に及ぼす影響は弱いが, HDLの増加は興味ある事実と思われる.
  • 奥村 邦彦, 舩冨 等, 八田 善夫
    1982 年 42 巻 5 号 p. 619-625
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アルコール性慢性膵炎は他の慢性膵炎と臨床像が異なる.著者らはその病態を究明する目的で膵液中のmucoproteinをhexosamine (Hex) を指標として行った.膵液はPancreozymin-secrtin test (PS test) により採取し, Hexの定量はElson Morgan反応のBoasの改良法に準じて行った.定量法の基礎的検討をした後, 胆道系疾患による疑陽性を除外するためにはPS testによるS4相で測定するのが最適と考えた.その結果, 慢性膵炎群のHex濃度は正常対照群のHex濃度に比し有意の高値を認めた.さらに, 慢性膵炎を成因別にアルコール性慢性膵炎と非アルコール性慢性膵炎に分けて検討した結果, アルコール性は非アルコール性に比較して有意のHex濃度の高値を認めた.石灰化を有する例でよりその値は顕者であった.次に, PS testの因子低下別検討から, PS testの機能障害度に応じてHex値は高くなり, Hexは膵障害の程度を良く反映している.同程度の機能低下群でHex濃度を比較するとアルコール性慢性膵炎は非アルコール性慢性膵炎に比し高値のHex濃度を示した.この結果から, アルコール性慢性膵炎は他の膵炎に較べて進行程度が強いのみでなく, その発症及び進展が特異であり, mucoproteinが密接に関係があると考えられた.
  • ―機能解剖学的アプローチ―
    滝川 宗一郎
    1982 年 42 巻 5 号 p. 627-644
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト手指屈筋腱腱鞘の構造を肉眼的, 走査型電子顕微鏡 (以下SEM) 的, および組織学的に指レベルで, 静的状態とともに指の屈曲, 伸展位の形態学的変化を観察した.指屈筋腱腱鞘のparietallayerはbandの部位とband以外の部位とに分けられ, bandはその走行によりannular bandとcruciate bandとに分けられ, 示, 中, 環, 小指では4つのannular band (A1, A2, A3, A4) と3つのcruciate band (C1, C2, C3) が, 母指では2つのannular band (A1, A2) と1つのoblique bandが認められた.またこれらのband以外にも非定型的と思われるbandが認められた.SEMによると腱鞘のvisceral layer, およびparietal layerのband部の滑走表面には規則正しい隆起配列がみられ, visceral layerでは腱の走行方向に, band部ではbandの走行方向に配列していた.そしてこれらの隆起は表層の網状線維, およびその深層の隆起を横走する細線維群でおおわれており, 腱走行に適した構造と思われた.bandは膠原原線維と思われる細線維が集束した靱帯構造であり, bandが“滑車”としての機能に適した強靱な構造であった. parietal layerのband以外の部位の表面にも網状線維でおおわれた隆起がみられたが, その配列は不規則であった.指を屈曲するとparietallayerの各bandとbandの問の部分が掌側へ折れ込み, 腱鞘掌側部の距離の短縮の機構を担い, この折れ込みの程度はA2, A4band付近で最も著明で, これらのbandが“滑車”の機能に大きく働くことを示していた.以上より, 腱鞘は腱の滑走を容易にする表面構造を持つと同時に, 指の屈伸に伴なってその形態に順応する柔軟性を持つ反面, 指屈曲時に腱のbowstringingを防止できる強靱な構造であることがわかった.
  • 坂本 勇人
    1982 年 42 巻 5 号 p. 645-650
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    非脱分極性筋弛緩薬であるPancuronium bromideは生体内で代謝産物が成生され, 一般に筋弛緩効果が減少するといわれているが, 定量法として用いられているSpectrofluorimetric methodによればoverallとして測定される.またPancuroniumは血清蛋白と結合し, 不活性化されると云われている.したがって現在, 投与されたPancuromiumとその筋弛緩効果の間の量的関係は不明な論文が多い.著者はMagnus法において蛙腹直筋のAcetylcholineの収縮に及ぼすPancuroniumと血清蛋白質の結合の状態を筋弛緩効果の面から検討した結果, 血清蛋白量の増加に伴ってPancuroniumの不活性化が著るしく, 蛋白濃度が14mg/ml以上 (血清総蛋白質が1.4g/dl以上に相当) ではPancuroniumの筋弛緩効果が72%以上減少することが示唆された.
  • 奥富 信博
    1982 年 42 巻 5 号 p. 651-657
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    雑種成犬を用いてKanamycin20mg/kgをbolusに静脈内投与し, pharmacokinetic analysisを行い, 中心分画および末稍分画における経時的濃度変化を算出した.さらに, Pancuronium bromide 0.02mg/kgを90分間隔で間歇的に静脈内投与したところ, その筋弛緩効果は延長された.また両分画のKanamycin濃度が下降した時期にその延長傾向が強かった.蛙腹直筋を用いたAcetylcholine定量法を用いてKanamycinによりPancuroniumの効果が増強されるのを認めた.さらにKanamycin添加灌流液に浸漬した筋肉を非添加灌流液で洗滌した後も筋肉にはKanamycinが残存するのが認められた.したがって筋肉外の液のKanamycinの濃度が低下しても筋肉の濃度は急激には低下せず, Pancuroniumの効果を増強するとの示唆をえた.
  • 佐竹 儀治, 藤田 力也, 坪水 義夫, 春日 謙一, 村瀬 永策, 高橋 寛, 中神 誠一, 藤田 安幸, 山村 光久, 小林 明文, 大 ...
    1982 年 42 巻 5 号 p. 659-665
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    From August, 1975 to September, 1981, endoscopic examination was performed in 238 cases of upper gastrointestinal bleeding at Fujigaoka Hospital, Showa University. Among these, 117 urgent endoscopies were examined within 48 hours after the onset of hematemesis and melena. The sources of upper gastrointestinal bleeding in 238 patients were as follows ; gastric ulcer (64), duodenal ulcer (58), gastric and duodenal ulcer (5), acute gastric mucosal lesion (18), esophageal varices (14), advanced gastric cancer (12), Mallory-Weiss syndrome (10), others (44) and unknown cases (13) . Hemostasis was a success in 29 of 30 bleeding cases treated by conservative therapy, with the exception being a case of rupture of aortic aneurysm perforated to the esophagus. The endoscopic procedure was performed on 14 bleeding lesions, including gastric and duodenal ulcers, gastric cancer and Mallory-W eiss syndrome, by means of electro-coagulation or clipping, and was successful in 9 cases. Urgent operation was performed in 10 cases of which hemorrhage continued in spite of conservative and endoscopic treatment. All cases of active variceal bleeding were treated with Sengstaken-Blakemore tube, these were thereafter treated by means of paravasal or intravasal sclerotherapy, endoscopically. Upper gastrointestinal panendoscopy was useful, not onlyin diagnosis of bleeding source, but also in treatment of patients with upper gastrointestinal hemorrhage.
  • (1) TAC-278について
    宮坂 圭一, 菱田 豊彦, 栗原 稔, 泉 嗣彦, 丸山 俊秀, 佐々木 容三, 鎌野 俊紀, 岸野 洋
    1982 年 42 巻 5 号 p. 667-672
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    弗化ピリミヂン系誘導体の1つであるTAC-278について, 生体内動態を検討した.その結果, 他の弗化ピリミヂン系誘導体に比べて, 生体内の5-FU生成率が高いことがわかった.しかし, 臨床的な効果は十分な結果を得られず, 血行動態だけで, 効果, 副作用を推察することが, 今後の抗腫瘍効果を論ずる上で十分でないことを考えさせられた興味ある薬剤であった.
  • 永山 剛久, 増野 純, 斉藤 吉人, 副島 和彦
    1982 年 42 巻 5 号 p. 673-678
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    種々の抗生物質に反応しない不明の感染症に反復罹患し, 好中球のNBT還元テスト等で慢性肉芽腫症と診断された症例を剖検したので報告する.1歳男児で, 生検にてサルコイドーシス或いは結核と診断されたが, 抗結核剤に反応せず, 結核菌も陰性であった.剖検により肺・肝・腎・脾・リンパ節に肉芽腫性病変が見られた.一部の肉芽種で, 泡沫状細胞質を持った組織球が認められた.
  • 平野 勉, 陳 聡明, 稲葉 昌久, 竹下 光, 辻 正富, 永野 聖司
    1982 年 42 巻 5 号 p. 679-682
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    周産期胎児死亡の既往をもつ不安定型糖尿病婦人が再び妊娠したが, 現行インスリン療法ではコントロール不可能なためCSIIを施行した.その結果, 注入インスリン量の大幅な節減にもかかわらず, MBG, M-value MAGEはすべて改善され, HbA1も徐々に正常化した.又強陽性であったインスリン抗体はCSII使用後著減した.CSIIはその装着から操作まで患者自身で行えるため外来治療も含めた長期の糖尿病管理に極めて有効と思われるが, そのインスリン注入プログラミングは画一的でない工夫が必要と思われた.
  • 森川 昭洋, 井上 梅樹, 水上 忠弘, 奥山 雄一, 池田 左千雄, 村田 正, 糸川 正, 増山 善明, 諸星 利男
    1982 年 42 巻 5 号 p. 683-688
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    46歳の主婦, 強度の呼吸困難にて入院, 入院時口唇チアノーゼ著明, 多量の泡沫状喀痰排出, 40分後に肺水腫にて死亡.剖検では大動脈および主分枝動脈の内腔は起始部より弓部大動脈にかけて拡張し, 胸部大動脈以下ではやや狭窄していた.組織学的には, 大動脈の外膜は結合織の増生が高度で内膜は肥厚していた.心臓は350g, 左室求心性肥大, 大動脈弁閉鎖不全の状態にあり, 内膜は肥厚, 心筋は断裂がみられた.肺は左肺750g, 右肺1, 100g, 著明な水腫がみられた.本例は35歳で初発症状発現後11年を経過し急性肺水腫で死亡した大動脈炎症候群の1例である.
  • 横山 新一郎, 北村 公博, 野津 立秋, 友安 茂, 布上 直和, 鶴岡 延熹, 塩川 章, 風間 和男
    1982 年 42 巻 5 号 p. 689-694
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で眩暈, 全身倦怠感を主訴として1968年1月に当科に入院した.汎血球減少症を呈し軽度の相対的リンパ球増多がみられ網赤血球は57‰であった.骨髄は赤芽球系の過形成像を呈した.発症後, 数年間は典型的な発作性夜間血色素尿症 (以下PNH) の像を呈さず, 1974年に至りPNHと診断が確定した.その後, ハム, 蔗糖液, イヌリン試験が陰性化し, 1980年には再びヘモジデリン尿, 蔗糖液, イヌリン試験が陽性化したがハム試験は陰性のままで, 骨髄は再生不良性貧血の像を呈した.心不全により死亡した.12年間の輸血量は約8×104mlであった.剖検により肝, 脾, 膵, 心筋に著明な鉄沈着を認め続発性ヘモクロマトーシスと考えられた.
  • 古屋 英治, 岡崎 雅子, 坂本 浩二, 岡崎 雅子, 古屋 英治, 坂本 浩二, 佐藤 三千雄, 武重 千冬, 沼波 良太, 亀井 勝彦, ...
    1982 年 42 巻 5 号 p. 695-700
    発行日: 1982/10/28
    公開日: 2010/09/09
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