昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
分割照射における生物学的効果の理論的考察
本田 実
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 43 巻 2 号 p. 161-170

詳細
抄録
悪性腫瘍の放射線治療の際, 腫瘍組織の方が正常組織より放射線障害に対する回復が遅いという原理にもとづき, 時間因子を利用した分割照射法が, 日常行われている.多くの研究者が, 時間・線量関係を呈示しているが, EllisのNSD (nominal standard dose) 及びKirkのCRE (cumulative radiation effect) の概念は, 線量がどれだけ蓄積すれば耐容量になるかを示している.しかし, これらには回復の係数が含まれていない.そこで, 回復の要素を含めた分割照射の生物学的総線量をBiological cumulative dose (BCD) と名付け, 1回照射線量をdとし, この量が1日で減少する率をr (0<r<1) とした.rを蓄積因子cumulative factor (CF) と呼ぶことにした.BCDは, 回数が増すと共に, ある一定の値 (full tolerance dose) に近づく.また, 単一照射の蓄積障害と分割照射の障害は同一式であらわせるので, 分割照射は1回線量の蓄積量と同一になり, BCDはsingle equivalent dose (SED) またはSingle equivalent cumulative effect (SECE) と考えることもできる.以上の設定から, 種々の分割照射法の場合の数式を求めることができる.さらに分割照射と単一照射が等価な効果を与える場合を考え, マウスの全身照射やブタの皮膚の反応をみた実験データを使って, rの値を決定することができる.1回照射線量が少ないほどrの値が小さく, 蓄積効果が少ないことを示している.rを定め, full tolerance doseの90%を実質的なtolerance doseとして, この値に達する時の照射回数 (n) を決定することにより, BCD=1800 (rad) と計算できる.この値はNSDと一致する.また, 両対数グラフのx軸に回数 (n) , y, 軸にBCD/dをとると, 種々の分割照射法に於て, 実質的のtolerance doseに達する点と, 1回2Gy照射の場合は (1, 2) , 1回1Gy照射の場合は原点とを結ぶ直線が, BCDを示すy=18と交わる点のx座標を求めることで, 何回まで照射できるかをグラフ上で知ることができる.この方法により, たとえば, 1日2回1Gyずつ照射する方が, 毎日2Gyずつ照射するより多く照射できることが, グラフ上で示される.異なった分割照射法を比較評価するのに有用である.CFという新しい概念を仮定することにより, 理論的には分割照射は1回照射と等価と考えることができることを示し, full tolerance doseの90%に達する点を求める方法を呈示した.
著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top