昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
ヒト膵癌の膵液膵組織中の糖タンパクについて
柳沢 美光八田 善夫
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 43 巻 3 号 p. 381-387

詳細
抄録
膵癌における膵液膵組織中の糖タンパクの変化について検討した.polyacrylamide gel disc electrophoresisにより, 膵液中で分子量66000, 膵組織中で分子量72000の糖タンパクの糖鎖中シアル酸含有量: が増大しており, 膵癌に特異的な変化と思われた.特に膵液中分子量66000の糖タンパクは, 糖染色において膵癌11症例中8症例 (73%) に認められ.対照 (良性膵疾患) 12症例では全例陰性であった.同糖タンパクは抗ヒト全血清によるimmunoelectrophoresisにより沈降線を認めず.正常ヒト血清中には存在しないか, 存在しても微量であると推測された.従来の腫瘍マーカー.CEA, AFP, POAとも免疫学的あるいはタンパク化学的に異なっていた.膵液中シアル酸の測定では, 遊離シアル酸, 糖タンパクの糖鎖中シアル酸の両者は膵癌で高値の傾向を示した.以上より, 膵液中分子量66000の糖タンパクは膵癌に特異的な腫瘍マーカーとして有用であると思われた.又, 膵液中全シアル酸量の増大も膵癌と密接な関係があるものと推測された.
著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top