昭和医学会雑誌
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迷走神経の呼吸性遠心放電に対する求心性迷走神経の刺激, 切断効果からみた呼吸中枢
瀬川 克己武重 千冬
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1984 年 44 巻 1 号 p. 1-9

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抄録
ウレタンで麻酔した家兎の一側の頸部迷走神経を単一神経活動電位が記録できるまで分離して, 遠心性の放電を呼吸の変化と同時に記録した.遠心性の放電には持続性に放電を発生するニューロンがあるが, この放電は他側の迷走神経を切断し, 呼吸が深くなると呼気に放電頻度を減じ, 吸気に放電頻度を増し, 呼吸のリズムと関係ある放電に変化した.また呼気・吸気相に一致して新たに放電が出現した.同様の現象は, 呼吸に関与する求心性衝撃を遮断するといわれている寒冷遮断をクロールエチルで行った時にも観察された.これらの呼吸性の遠心性放電は, 切断した他側の迷走神経の低頻度求心性刺激で, 呼吸のリズムを持った放電は持続性の放電となり, 呼気・吸気相に一致して出現した放電は出現しなくなった.一側の迷走神経を切断せずに他側の迷走神経から分離した迷走神経を低頻度で求心性に刺激した時, あるいは両側の迷走神経を切断し, 遠心性放電を記録している側の迷走神経を高頻度で求心性に刺激した時は遠心性の持続性放電は出現が阻止された.呼吸性の迷走神経遠心性放電の出現の様相から, 呼吸の交代性に関する呼吸中枢の機序は次の様に考えられた.「呼吸中枢には低頻度の求心性の刺激で抑制される呼気中枢 (EC2) と吸気中枢 (IC2) とがあり, 迷走神経の求心性のインパルスが消失すると, 迷走神経の中枢はEC2, IC2からインパルスをうけて呼気相・吸気相に一致して遠心性に放電を出現する.吸気中枢と呼気中枢の間には相反性の抑制機序がある.持続性の迷走神経の放電は, 別の吸気中枢 (IC1) , 呼気中枢 (EC1) からのインパルスが迷走神経の中枢に収束して現われる.この放電は, 迷走神経の切断によってIC1に対する抑制が消失し, IC1の興奮がたかまって放電頻度を増し, 同時にEC1に対する抑制が強まって呼気相の放電頻度を減ずる.IC1は迷走神経の高頻度求心性刺激によって抑制され, 吸気中枢IC1から呼気中枢に対する抑制が消失して, 呼気反応が現われる.低頻度の迷走神経の求心性刺激では, EC2が抑制されIC1に対する相反性抑制が消失するので吸気反応がおこる, 」以上の機構によって, 従来記載された迷走神経の低・高頻度刺激の呼吸反応, 及び本研究の迷走神経の遠心性放電に対する迷走神経の切断, 刺激効果が説明される.
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