昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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44 巻 , 1 号
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  • 瀬川 克己, 武重 千冬
    1984 年 44 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ウレタンで麻酔した家兎の一側の頸部迷走神経を単一神経活動電位が記録できるまで分離して, 遠心性の放電を呼吸の変化と同時に記録した.遠心性の放電には持続性に放電を発生するニューロンがあるが, この放電は他側の迷走神経を切断し, 呼吸が深くなると呼気に放電頻度を減じ, 吸気に放電頻度を増し, 呼吸のリズムと関係ある放電に変化した.また呼気・吸気相に一致して新たに放電が出現した.同様の現象は, 呼吸に関与する求心性衝撃を遮断するといわれている寒冷遮断をクロールエチルで行った時にも観察された.これらの呼吸性の遠心性放電は, 切断した他側の迷走神経の低頻度求心性刺激で, 呼吸のリズムを持った放電は持続性の放電となり, 呼気・吸気相に一致して出現した放電は出現しなくなった.一側の迷走神経を切断せずに他側の迷走神経から分離した迷走神経を低頻度で求心性に刺激した時, あるいは両側の迷走神経を切断し, 遠心性放電を記録している側の迷走神経を高頻度で求心性に刺激した時は遠心性の持続性放電は出現が阻止された.呼吸性の迷走神経遠心性放電の出現の様相から, 呼吸の交代性に関する呼吸中枢の機序は次の様に考えられた.「呼吸中枢には低頻度の求心性の刺激で抑制される呼気中枢 (EC2) と吸気中枢 (IC2) とがあり, 迷走神経の求心性のインパルスが消失すると, 迷走神経の中枢はEC2, IC2からインパルスをうけて呼気相・吸気相に一致して遠心性に放電を出現する.吸気中枢と呼気中枢の間には相反性の抑制機序がある.持続性の迷走神経の放電は, 別の吸気中枢 (IC1) , 呼気中枢 (EC1) からのインパルスが迷走神経の中枢に収束して現われる.この放電は, 迷走神経の切断によってIC1に対する抑制が消失し, IC1の興奮がたかまって放電頻度を増し, 同時にEC1に対する抑制が強まって呼気相の放電頻度を減ずる.IC1は迷走神経の高頻度求心性刺激によって抑制され, 吸気中枢IC1から呼気中枢に対する抑制が消失して, 呼気反応が現われる.低頻度の迷走神経の求心性刺激では, EC2が抑制されIC1に対する相反性抑制が消失するので吸気反応がおこる, 」以上の機構によって, 従来記載された迷走神経の低・高頻度刺激の呼吸反応, 及び本研究の迷走神経の遠心性放電に対する迷走神経の切断, 刺激効果が説明される.
  • 田中 一正, 田中 波香, 中神 和清, 鈴木 一, 野口 英世
    1984 年 44 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は気管支喘息患者においてi-PiT systemにより測定した血中テオフィリン濃度と, 臨床的検討及びcyclie AMP (c-AMP) , cyclie GMP (c-GMP) の変化を検討した.cyclie nucleotideは10例の正常対照者と24例の気管支喘息患者において測定した.又, 気管支喘息患者15例及び正常対照者5例においてネオフィリン250mgを5%ブドウ糖液500mlに溶かしたものを2時間かけ点滴静注を行ない, 原則として前値から4時間値まで1時間毎に採血し, 血中テオフィリン濃度と呼吸抵抗とcyclicnucleotideを測定した.c-AMP, c-GMPの測定はSteiner等のRIA法により行った.6例の気管支喘息患者における血中テオフィリン濃度は点滴終了時に最も高い値を示し, 血中テオフィリン濃度の経時的変化に従い, 呼吸抵抗, 臨床症状の改善をみた.血中theophyllne有効濃度内で, その濃度が低い群に比し, 高濃度群では臨床症状の改善が顕著であった。正常対照群 (10例) , 非発作群 (11例) , 喘息発作群 (13例) の各々のコントロール値におけるc-AMP, c-GMPに有意差は認めなかった.c-AMP/c-GMP (A/G比) も同様に有意差は認めなかった.ネオフィリン250mg2時間点滴静注法において, c-AMPは正常対照群及び, 喘息発作群で1時間値において前値より低値を示し, その後上昇傾向をみた.又, 非発作群では経時的増加傾向を示し, 喘息発作群と非発作群及び正常対象群において異なった動態を示した.これらはwhole bodyにおける反応を見ている為細胞内における動態を十分に示さなかったのかもしれない.
  • 中村 潔
    1984 年 44 巻 1 号 p. 17-35
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂の治療において, その手術法はほぼ確立されつつあるが, 患児の発育に伴い, 上顎の劣成長が生じる事が問題となっている.その原因は, 単一のものとは思われないが, 幼児期における手術に求める数多くの臨床的調査や, 動物実験がなされてきた.これらの実験の多くは, 口蓋裂手術に原因を想定するものであり, 種々の手術的侵襲が口蓋部に加えられたが, 上顎発育が受ける影響について, 一定した結果が得られていない.一方, 口唇裂手術は, 生後約3カ月の幼若時期に行われ, 次回行われる口蓋形成術の影響と重なって, 上顎の発育抑制を増長させる事が予想される.そして, 唇裂手術が上顎発育に, 何らかの影響を与えるとする臨床的調査や, 動物実験が報告されている.しかし, これらの実験は, 手術的に口唇口蓋裂を作り, これを閉鎖するもので, 骨への侵襲自体が, 抑制因子となりうるので, 著者は純粋に軟部組織のみへの手術侵襲が上顎発育に及ぼす影響を知るための実験を行った.体重100gのラットを, 骨膜を温存し, 軟部組織を剥離挙上した群, 骨膜を切除した群, 上唇を切除縫縮した群の3つの基本型と, それらの組み合わせた群で, 合計7つの実験群に分けた.以上のラットを体重200g, 300g, 400g, 500gで断頭し, 頭蓋各部の計測と組織標本の観察を行い, 対照群と比較した.観察の結果, 中間顎の体部に前後径の成長抑制が, 全実験群に認められ, 口蓋部の長さは影響を受けなかった.そして, この成長抑制は, 骨膜を切除するしないにかかわらず, 同程度に認められるが, 成長とともに, 手術の影響は薄れ, 発育抑制は見られなくなった.上口唇を0.6cm切除した群も同様の変化を示したが, 軟部組織を剥離した群より成長抑制の程度は軽い.また上唇を1.2cm縫縮した群と他の実験群との間に差は認められず, 上唇切除よりも剥離操作の影響が大きい事が判明した.幅径に関しても, 術後早期に中間顎の縮小傾向を示すが, 時間の経過とともに正常に復し, 長径と同様の経時的変化を示した.組織学的には, 術後早期に骨膜は再生され, 骨反応が増し, 骨表面の粗造多孔化が生じるが, 成長とともにこの変化はなくなる.二重骨標識法では, 術直後でも骨の石灰沈着は活発に行われ, 骨形成能が損われておらず, 顎発育障害の直接の原因として, 上顎, 中間顎周囲に形成される瘢痕組織による物理的圧迫力が最も考えられた.
  • 提箸 延幸
    1984 年 44 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者の口蓋形成術後の上顎成長については, 様々な研究, 報告が行われてきたが, その多くはCephalogramを利用した顔面の上下, 前後方向の成長を評価するもので, 上顎横方向の成長については明確な報告は行われていない.そこで著者は口蓋裂患者の上顎横方向の成長について以下の研究を行い, 新知見を得たので報告する.〈研究対称ならびに方法〉研究対称として, 生後3カ月時に鬼塚法による口唇形成術と硬口蓋閉鎖を行い, さらに1歳時に口蓋形成術を行う10例の片側完全口唇口蓋裂患者を用いた.研究方法は, 口蓋形成術の際に両側口蓋裂縁後鼻棘に鋼線を通し計測の示標を作成, 計測部位として口蓋裂隙間距離, 裂側, 非裂側の口蓋横径, および裂側, 非裂側の歯槽骨を含む全口蓋横径を選び, 上顎横方向の成長について術直後と一年後の口蓋裂隙, 裂側口蓋, 非裂側口蓋, 各々の成長変化をXeroradiographを利用して計測し, さらに得られた値より成長量, 成長率を計算し, 統計学的検討を行った.〈結果〉口蓋形成術後一年間の成長について次のような結果が得られた. (1) 口蓋裂隙の著明な減少を示した. (2) 裂側, 非裂側口蓋の成長を比較すると裂側口蓋において統計学的に有意に大きな成長率を示した. (3) 口蓋裂隙間距離の減少量は口蓋横径の成長増加量にほぼ一致していた. (4) 全口蓋横径の成長量は調査期間中, 裂隙減少量を大きく上まわる成長を示した.以上により口唇形成術および口蓋形成術を行った場合, 術後の療痕拘縮が考えられるにも拘らず, 裂側口蓋がより大きな成長率を示したことは口蓋閉鎖による新たな血行が裂部に形成され, 成長に好影響を与えたことを示唆するものである.
  • 宮下 守, 梅田 陽, 田添 克衛, 真砂野 仁, 星 義次, 神垣 昌人
    1984 年 44 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫反応はT細胞や単球の調節作用をうけ調和のとれた免疫反応が営まれている.一般に新生児と乳児では免疫反応は低下しているが, 免疫能がどの程度まで発達しているのかの検討は十分になされていない.今回, 私達は新生児の免疫能を把握することを目的に謄帯血を用い, T細胞サブクラスと単球のin vitroにおける抗体産生に及ぼす補助作用を測定して, 次の結果を得た.1) 臍帯血における抗体産生は成人に比し有意に低下を示した.2) 臍帯血のT細胞補助能は低下し, 補助能を上まわって抑制能が充進を示した.3) このT細胞の抑制能はTheophylline抵抗性T細胞 (Tr細胞) とTheophylline感受性T細胞 (Ts細胞) の両細胞に認められた.4) 臍帯血のB細胞にも質的な異常を認めた.5) 単球の抗体産生への補助能は低下を示した.以上の結果から臍帯血では免疫担当細胞のいずれにも質的異常がみられたわけであり, このためにin vitroにおける抗体産生能が低下しているものと考えられた.
  • 宮坂 圭一
    1984 年 44 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    抗癌剤の生体内動態, 特に腫瘍内動態をみる目的で, 胃癌担癌犬および犬胃癌移植ヌードマウスに5-FLを投与し, 5-FU代謝物の組成, マクロオートラジオグラム, ミクロオートラジオグラム, 移植腫瘍内5-FL濃度について検討した.
    i) 5-FU代謝物の組成をみると, 5-FU活性化物質 (5-FU, FUR, F-Nucleotide) は, 経口投与で, 情癌組織に75.6%, 健常胃組織に60.4%, 静脈投与で, 胃癌組織に22.7%, 健常胃組織に24.7%であった.
    ii) マクロオートラジオグラムでみると, 経口投与で胃癌組織は近傍の健常部より常に高濃度の5-FU分布が認められ, 特に胃の表層の方が深層よりも高濃度に分布していた.この傾向は, ミクロオートラジオクラムでも確認し得た.静脈投与では, 胃癌組織の周辺に高濃度分布するが, 中心部は分布が少なかった.
    iii) 犬実験胃癌移植ヌードマウスに5-FUドライシロップを経口投与した場合, 移植腫瘍には2分後から5-FUが取り込まれ, 2時間後もほぼ同様の濃度を認めた.
    以上のことから, 抗癌剤の抗腫瘍効果は, 血中動態よりも腫瘍内動態が大きく影響しているといえる.
  • 松山 容子, 猪口 清一郎, 鈴木 雅隆
    1984 年 44 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成人体幹のCT写真について, 総断面積, 皮下脂肪層の断面積, その比率および一定部位の厚さを計測し, Rohrer指数によるA, C, D3体型における特徴及び性差を検討した.研究対象ならびに方法: 研究対象は成人の男子10名, 女子16名, 計26名, 年齢は21~62歳で, それぞれをRohrer指数によって, 129以下 (A) , 130~149 (C) , 150以上 (D) の3型に区分した.CT写真撮影はErdheim格子線に準じて, 胸骨上縁高, 胸骨中点高, 剣状突起高, 上腹部高, 臍高, 下腹部高, 恥骨結合上縁高の7断面について行い, 各断面の皮下脂肪計測は前正中線, 乳頭線, 腋窩線, 殿線, 腰線および後正中線に相当する部位について行った.結果: 1.総断面積については, 男性では胸骨中点高と剣状突起高が, 女性では胸骨中点高と恥骨結合上縁高がそれぞれ最も大で, 男女とも膳高が最小であった.2.脂肪層断面積は, 男性では臍高, 下腹部高, 恥骨結合上縁高の順に大で, 剣状突起高が最も小であったが, 女性では一般に恥骨結合上縁高, 下腹部高, 臍高の順に大であった.3.皮下脂肪層の比率は一般に, 男性では臍高, 下腹部高, 恥骨結合上縁高の順に高く, 女性では恥骨結合上縁高が下腹部高に優り, 男女とも剣状突起高が最も低かった.4.各断面における脂肪層の厚さは, 胸骨上縁高, 胸骨中点高, 剣状突起高では一般に後正中線部が, 上腹部高では前正中線部が, 臍高では殿線部が, 下腹部高では腋窩線部が, 恥骨結合上縁高では前正中線部がそれぞれ最も厚い傾向がみられた.5.3体型の間では, 一般に総断面積, 脂肪層の断面積及びその比率, ならびに皮下脂肪層の厚さについて, 男女ともD, C, A体型の順に大で, C体型とD体型の間の差が著しい.特に厚さについては, 男性の胸骨上縁高の後正中線部, 胸骨中点高の乳頭線部, 下腹部高と恥骨結合上縁高の前正中線部と乳頭線部および臍高の殿線部と腰線部では, D体型で著しく厚くなる傾向が見られた.6.性別的に, 脂肪層の面積比は一般に女性が男性に優り, 体型別にはA体型では全断面で, C体型では上腹部高から下方の断面で, D体型では臍高と下腹部高を除く全断面で女性優位であった.脂肪層の厚さは, 一般には女性が厚く体型別にはC体型では下腹部高と恥骨結合上縁高の腋窩線部, 殿線部及び腰線部で女性が, D体型では下腹部高と恥骨結合上縁高の前正中線部及び乳頭線部で男性が, それぞれ他よりも優る傾向がみられた.
  • 高橋 健
    1984 年 44 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の保存期治療にあたり, その自然経過と進行に影響する諸因子を明らかにすることは使用薬剤の治療効果を判定するうえにおいても, また, 透析療法に導入すべき時期を推定するうえにおいても臨床上重要な意義をもつ.そこで85名の保存期腎不全患者 (血清クレアチニン (Cr) 3mg/dl以上, 2カ月以上の経過観察が可能な者) を対象に, 2~4週間ごとの血清Cr尿素窒素 (BUN) などの生化学検査値, 性, 年齢, 血圧, 原疾患などの諸因子を調査し, 保存期腎不全患者の腎機能低下の自然経過と, それに影響する諸因子について検討を加え, 以下の結論を得た. (1) 85名中75名 (88%) の患者で1/Cr一観察期間直線は危険率0.01以下の逆相関関係を示した. (2) この相関直線の勾配は, 腎不全進行のスピードを表わし, 29歳以下の若年者群, 拡張期血圧の高い患者群, BUN/Cr高値の患者群, 基礎疾患に糖尿病性腎症を持つ症例などでは腎不全の進行が速いことが明らかとなった. (3) この勾配の推移は, 個々の症例における治療効果の判定, 予後の推定に極めて有用と思われた.
  • 藤本 司, 福島 義治, 三上 博輝, 桜井 昭
    1984 年 44 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    フィブリン糊, TISSEELはヒトフィブリノーゲンを主成分とした生体組織接着剤である.フィブリノーゲンを線溶阻害作用をもつアプロチニン液で溶解し, トロンビン・カルシウム液と混合して用いるため, 止血作用もあわせもっている.脳神経外科手術への接着剤の応用は早くから試みられていたが, シアノアクリレートを中心とする今までの接着剤には種々の問題があり, 限られた範囲内においてのみ使用されていたにすぎない.TISSEELの臨床応用に先立ちin vivoでの基礎研究を行った.研究I: まず白色家兎の脳硬膜と大腿筋膜とをTISSEELで接着させ, その接着力の経時的変化をみたところ, 1分後で髄液圧に, 5分後では動脈圧にも十分耐えうることが明らかとなった.この結果をふまえ, 白色家兎20羽の頭の両側に骨窓を設け, 一側では硬膜に硬膜片をのせ, 他側では硬膜切除後露出したクモ膜上に各々TISSEELを塗布し, 一カ月後まで経時的に組織変化を観察した.一週間後にも尚, TISSEELは残存しており, 接した硬膜間には新生血管も出現しており組織性の癒合がみられた.一カ月後には両者の間は境界が明らかではなくなってきており, 髄液漏はみられなかった.クモ膜上に塗布した例ではTISSEELによる脳組織の障害作用は認められなかった.研究2: ラット35匹を用い頸動脈 (直径0.8~1.0mm) および大腿静脈 (直径1.0~1.2mm) を切断した後, TISSEELを用いて吻合術を行い, ニケ月後まで経時的に組織変化を観察した.血管を切断した後相対する二ヵ所を縫合し, 縫合糸を牽引して断端を合わせた後, TISSEELを塗布し, 動脈では5分, 静脈では3分後に血行を再開させた.動脈では全例開存, 静脈では3例で閉塞していた.2週間から1カ月後に治癒像がみられた.動脈では弾性線維が密な網状構造をなし, 両断端間にしっかりした肉芽形成がみられた.血管内腔への突出はなく血栓形成もみられず, 肉芽組織もほとんど断端間をうめる範囲にとどまっていた.静脈の場合には肉芽組織は極めて少く, 接着部も平滑で血栓形成はみられず, 吻合部を識別出来ぬほどの治癒像を呈していた.TISSEELは水分を軽く拭った程度で十分接着し, 凝固後も弾性があり, 組織反応も少く毒性も認められずに, 脳膜や, 血管の再建や修復に十分使用しうることが明らかとなった.
  • 藤本 司, 中村 良一, 三代 貴康, 浅井 潤一郎, 福島 義治
    1984 年 44 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒトフィブリノーゲンを主成分とした生体組織接着剤TISSEELは, 今までのシアノアクリレートを中心とする接着剤と異なり, 軽く水分を拭った程度の術野でも十分接着し, 凝固後も弾性がある.組織反応は少く, 接着力の点でも脳膜や血管の再建, 修復に十分使用しうることを基礎研究で確認した.この結果にもとづき, 脳神経外科手術における使用方法と適応を検討した.対象は1982年1月から1984年1月までに行われた44手術応用例についてである.脳腫瘍摘出後の硬膜欠損部の修復は8例で, 中でも嗅窩部髄膜腫全摘出後露出した篩板部の修復や, 経蝶形骨洞で下垂体腫瘍摘出後のトルコ鞍底の修復などに極めて有用であった.前頭洞の閉鎖は3例で行った.抗生物質を局所に高濃度に維持しつつ密閉することが出来, 髄液鼻漏, 感染ともに一例にもみられなかった.頭蓋内頭蓋外血管吻合術2例, 損傷した橋静脈の修復3例, 計5例の血管再建, 修復に用いた.また, 止血を目的として15例に用いた.出血点の不明な広範囲からの出血は従来の方法では止血しにくい場合があるが, TISSEELは特にこのような症例に有用で容易に止血しえた.経蝶形骨洞で下垂体腫瘍を摘出した際の腫瘍断端からの出血は, 術野が狭く止血に時間を要することがあるが, TISSEELで容易に止血できよい適応である.神経吻合への我々自身の使用経験はないが, すでにその有用性が報告されている.顔面神経等の脳神経や, 脊髄神経の再建にもよい適応となり, 将来広く用いられるようになると考えられる.以上の如く広範な手術操作に有用であるが尚問題も残されている.TISSEELはアプロチニン液で溶解するが, そのために15~20分間を要し急に使用したいときに不便である.また, ヒト血漿成分を用いているため肝炎感染の可能性が考えられるが, 我々の症例ではTISSEELによると思われる肝炎の発生はみられなかった.HB抗体の無い血液から作成され, 実際には肝炎の心配はほとんど無いと考えられる.脳神経外科手術において, 脳膜, 血管, 神経の再建, 修復術は極めて重要であり, 今後さらに開発されなければならないが, TISSEELはその有力な手段の一つになると思われる.
  • 梅田 陽, 朱 博光, 宮下 守
    1984 年 44 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Treacher Collins症候群は, 特異な顔貌を量する比較的まれな疾患の1つである.本症候群は1889年に発表されて以来, 様々な検討がなされ, 遺伝形式は常染色体優性遺伝であることが判明している.本邦においては約60例の報告があり, 一家系内複数発生例は10家系のみである.今回, 私達は本症候群の父子例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岡本 平次, 牧角 裕, 佐川 文明, 青木 秀泰, 鈴木 快輔
    1984 年 44 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性で血便を主訴として来院.大腸内視鏡検査にて肛門輪より9cmに陥凹を有す扁平亜有茎性隆起性病変 (IIa+IIc型) を認め, 内視鏡的ポリペクトミーを施行した.大きさは17×17×9mmで組織学的には高分化型腺癌で深達度はsmであった.20日後では潰瘍はやや縮少し, ひだの集中がみられた.ところが36日後焼灼後潰瘍中心部に癌再発を思わせる隆起性病変が出現した.その突出物は組織学的に再生上皮を有しない非特異的肉芽組織であった.自験例の如くポリペクトミー潰瘍治癒過程においてポリープ状突出を呈した報告は筆者らが調べ得た限りでは大腸に関しては今までにない.その成因について内視鏡的, 病理組織学的に検討したので報告する.
  • 大野 勝之, 岡 寿士, 清水 浩二, 坂本 道男, 成原 健太郎, 高橋 愛樹, 鈴木 快輔, 佐川 文明
    1984 年 44 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 1984/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 直腸カルチノイドの報告が増加している.著者らは, 肛門出血にて来院した患者を, 直腸カルチノイドと術前診断し, 局所切除を施行した症例を経験した.直腸カルチノイドの約8割以上は肛門縁から8cm以内に発生する.したがって直腸の解剖学的特異性のため, 局所切除を行なうか, 直腸切断術などの根治手術を行なうかによって, 患者の社会復帰に重大な影響を与える.腫瘍の大きさが2.0cm以下で浸潤が粘膜内に留まる場合, ポリペクトミィか局所切除を行う.2.0cm以上のものは, 浸潤は固有筋層にまで達するものが多く, その場合は癌に準じた根治術の適応となる.本症の術式の選択には生検を含めた術前診断が重要で, 連続切片を作り, 腫瘤の深達度を検索することが肝要である.ここでは粘膜下層に限局した1.0×1.0cmの直腸カルチノイド症例を報告した.
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