抄録
抗癌剤の生体内動態, 特に腫瘍内動態をみる目的で, 胃癌担癌犬および犬胃癌移植ヌードマウスに5-FLを投与し, 5-FU代謝物の組成, マクロオートラジオグラム, ミクロオートラジオグラム, 移植腫瘍内5-FL濃度について検討した.
i) 5-FU代謝物の組成をみると, 5-FU活性化物質 (5-FU, FUR, F-Nucleotide) は, 経口投与で, 情癌組織に75.6%, 健常胃組織に60.4%, 静脈投与で, 胃癌組織に22.7%, 健常胃組織に24.7%であった.
ii) マクロオートラジオグラムでみると, 経口投与で胃癌組織は近傍の健常部より常に高濃度の5-FU分布が認められ, 特に胃の表層の方が深層よりも高濃度に分布していた.この傾向は, ミクロオートラジオクラムでも確認し得た.静脈投与では, 胃癌組織の周辺に高濃度分布するが, 中心部は分布が少なかった.
iii) 犬実験胃癌移植ヌードマウスに5-FUドライシロップを経口投与した場合, 移植腫瘍には2分後から5-FUが取り込まれ, 2時間後もほぼ同様の濃度を認めた.
以上のことから, 抗癌剤の抗腫瘍効果は, 血中動態よりも腫瘍内動態が大きく影響しているといえる.