抄録
魚類コイ心臓中のmonoamine oxidase (MAO) について, そのホモジネート及び, 3種の細胞内分画を酵素標品とし, 14C-tyramine, 14C-HT, 14C-PEAを基質として用い, RI法を使用してその酵素化学的性格を検討した.
各基質に対する本酵素のKm値をLineweaver-Burk plotより求め, 以後の実験には各基質濃度を求められたKm値にほぼ等しい濃度とした.各基質を使用した場合, MAO活性はmitochondria分画で最も高く, 酵素量とincubation時間との間に比例的直線関係が認められた.至適pHは8.0に認められ, 至適反応温度は37.0℃に認められた.又, 本酵素を56日間凍結保存しても失活は認められなかった.コイ肝臓に比べて, 各基質を用いた場合, 本酵素は耐熱性が高い事が認められた.各細胞内分画では時に核分画に最も高い耐熱性が認められた.一方MAO阻害剤clorgyline及びdeprenylと, ピリドキサルリン酸を補酵素とするamine oxidaseの阻害剤semicarbazideを用いてそれらの阻害様式を検討したところ, 低いclorgyline resistantamine oxidase (CRAO) 活性の存在が認められた.これらの実験結果よりコイ心臓中には, 他の多くの哺乳動物の臓器に存在するtype A及びtype B MAOとは異り, コイ肝臓中MAOと同様type A, type Bと分類する事の出来ない新しいtypeのMAOの存在する可能性が示唆された.