昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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44 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 清水 盈行
    1984 年 44 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和31年本学第二内科に就任して以来27年を経過したしました.長いようでありますが今となってふりかえってみますと, 何時の間にか過ぎてしまった感が無くもありません.大過なく教授としての使命を果すことが出来たと思っておりますが, これは多くの先輩, 同僚, すぐれた門下生の絶大な支持によるものでありまして, またよき師, よき友, よき教室員に恵まれた御蔭と厚く感謝申し上げる次第であります.
  • 安井 昭, 西田 佳昭, 渋沢 三喜, 李 中仁, 幡谷 潔, 石井 博, 田中 弦, 水島 秀勝, 草間 悟, 石井 淳一, 片岡 徹, ...
    1984 年 44 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍癌を外科病理学的立場より解折し, 潰瘍癌の時期によって, 地層型 (Stratum type) , 全層型 (Full type) , 聖域型 (Sanctuary type) , それにHauser型 (Hauser's type) の4基本型を用いた早期胃癌の消長を胃潰瘍癌の悪性サイクル説 (Murakami's malignant cycle theory) として提唱したが, その骨子 (潰瘍癌の証左) となるのは瘢痕癌の概念である.今までのところ地層型が瘢痕癌としてもっとも信頼しうる型であるという結果を得ている.聖域型やHauser型は種々の因子の介入により, これのみでは瘢痕癌としての証左にとぼしい.今回は胃潰瘍癌におけるこれら4基本型の成り立ち, および悪性サイクル説そのものについて解説する.
  • 針村 裕
    1984 年 44 巻 2 号 p. 163-176
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    わが国の糖尿病死亡をあらわす指標として, 1933~1975年の都道府県ごとの糖尿病年齢訂正死亡率及び, 1969~1978年の糖尿病標準化死亡比を用いた.また各種食品消費の指標として, 1959, 1969及び1979年の, 米, 魚介類, 味噌, 食用油及び酢の都道府県ごとの購入量を用い, これから各食品ごとに府県レベルの糖尿病死亡との相関を求めた.これからみると糖尿病死亡は, 主食ではなく, 主として副食及び調味料の消費パターンが要因として考えられる.食用油, 味噌及び酢の消費量が糖尿病死亡と深くかかわりをもち, そのうちでも食用油消費の低い地域が, 戦前戦後を通じて高い糖尿病死亡率を示していた.さらにこのような地域は言語で京都式高さアクセントをもっている地域であり, 食文化と言語文化の地理的な一致を推測させた.またその地域における輪島, 敦賀, 久万などの言語孤島において糖尿病死亡水準が, 周辺地区が全国水準をかなり上廻っているのに対し, この地区では逆にかなり下廻る水準である.このことからも, 京都式高さアクセントをもつ文化に包含される食糧消費パターン, すなわち, 低水準の食用油及び味噌消費, 高水準の酢消費が糖尿病死亡と深く関連していることを見出した.また一定水準以上の米及び魚介類消費が糖尿病高死亡率の背景にあることを見出した.すでに, 飽和脂肪酸の摂取過剰と糖尿病との関連が推測されているが, 低水準の食用油消費は結果的に動物脂肪, 即ち飽和脂肪酸への依存を高め, これが糖尿病高死亡率につながることは十分推測されうることである.
  • 山本 正人, 渡辺 浩次, 和田 栄, 片山 雅子, 小林 真一, 小口 勝司
    1984 年 44 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    魚類コイ心臓中のmonoamine oxidase (MAO) について, そのホモジネート及び, 3種の細胞内分画を酵素標品とし, 14C-tyramine, 14C-HT, 14C-PEAを基質として用い, RI法を使用してその酵素化学的性格を検討した.
    各基質に対する本酵素のKm値をLineweaver-Burk plotより求め, 以後の実験には各基質濃度を求められたKm値にほぼ等しい濃度とした.各基質を使用した場合, MAO活性はmitochondria分画で最も高く, 酵素量とincubation時間との間に比例的直線関係が認められた.至適pHは8.0に認められ, 至適反応温度は37.0℃に認められた.又, 本酵素を56日間凍結保存しても失活は認められなかった.コイ肝臓に比べて, 各基質を用いた場合, 本酵素は耐熱性が高い事が認められた.各細胞内分画では時に核分画に最も高い耐熱性が認められた.一方MAO阻害剤clorgyline及びdeprenylと, ピリドキサルリン酸を補酵素とするamine oxidaseの阻害剤semicarbazideを用いてそれらの阻害様式を検討したところ, 低いclorgyline resistantamine oxidase (CRAO) 活性の存在が認められた.これらの実験結果よりコイ心臓中には, 他の多くの哺乳動物の臓器に存在するtype A及びtype B MAOとは異り, コイ肝臓中MAOと同様type A, type Bと分類する事の出来ない新しいtypeのMAOの存在する可能性が示唆された.
  • 鶴切 一三
    1984 年 44 巻 2 号 p. 185-194
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    歩行に関する比較解剖学的研究の一環としてカニクイザル成獣10頭 (雌: 6頭, 雄: 4頭) の大殿筋, 中殿筋, 小殿筋について, 筋線維構成を検討した.筋線維の分別はSudan-Black B染色によった.結果は次の通りである.1) 大殿筋は筋重量では中殿筋の約1/3, 小殿筋の約3倍で, 下肢筋中の中等度の重量であり, 雄例が雌例にまさり, 体重と相関関係は認められなかった.筋腹横断面積および筋線維総数についても同様の傾向が見られた.2) 1mm2中の筋線維数については大殿筋は中殿筋とほぼ等しかったが, 小殿筋よりも少く, これらは一般に他筋よりも少なかった.3) 三筋線維型については, 大殿筋では白筋線維が約60%を占め, 比較した筋中最も多く, 太さは殿筋中最大であったが, 大腿二頭筋よりも小であった.4) 中殿筋と小殿筋では, 赤筋線維の比率が40%以上であったのに対して, 白筋線維は20%前後であり, 大殿筋および他の下肢筋に比べて, 三筋線維型の比率が相反していた.5) 中殿筋および小殿筋の三筋線維型の太さは, それぞれの平均値では大殿筋に劣り, 中殿筋, 小殿筋の順にこれに次いだが, 個体別には中殿筋では三筋線維型とも大殿筋よりも大で, 分布型も右に偏る例が見られた.6) 三筋線維型の太さの分布型については, 大殿筋では白筋線維の肥大が著しく, 変異幅大の例が見られ, 中殿筋でもこれに近い傾向を示したが, 小殿筋では一般に均一性であった.7) 以上の事からサルの歩行に当っては, 大殿筋は大腿屈筋に共働して大腿骨骨幹の後方牽引に働き, 中殿筋と小殿筋は大転子を牽引して大腿骨頭の回転と運動方向の決定に働き, 中殿筋では活動が持続的であると考えることができた.
  • 吉本 信也, 浅田 一仁
    1984 年 44 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成長期における顔面への手術侵襲と, それが頭蓋・顔面骨の成長に及ぼす影響については, 従来より数多くの実験報告がなされているが, それらのほとんどが唇裂・口蓋裂を想定したものであり・その他の部位についての論文はほとんど見受けられない.そこで我々は形成外科のテクニックである縫縮術による皮膚緊張及び成長期の頭蓋・顔面骨の頬骨そのものへの外科的侵襲が, どのように影響を及ぼすかについて動物実験で確かめた.即ち50g, 75g, 100g, 200g, 300gの5段階の成長過程にあるラット400匹を用い, それらをA群 (非手術群) , B群 (右頬部の前後軸に沿って皮切のみを加えたもの) , C群 (右頬部皮膚を前後方向に最大緊張にて縫縮したもの) , D群 (C群と同操作を両側に行なったもの) , E群 (右頬骨弓の部分切除のみを行なったもの) , F群 (右頬骨弓の部分切除に加えて右頬部皮膚を前後方向にC群と同量の皮膚を切除したもの) の6群に分けた.全てのラットを術後3ケ月目に断頭し, 頭蓋骨をドライボーンとした後, 規格ポラロイドにて計測を行なって下記の実験結果を得た, (1) 左右への偏位, A群 (対照群) 頭蓋骨はほぼ対称的に発育した.B群, ほとんどA群と同様の発育を示した.C群, 頭蓋・顔面骨の前方が手術側へ偏位し, 手術時期が幼若なほど大きな偏位を認めた.D群, ほとんどA群と同様の発育を示した.E群, 非手術側への偏位を示すものを認めた.F群, 手術側への偏位を示したがC群より程度は小さく, 又, 手術時体重との一定の関係は認められなかった. (2) 前方方向への発育, 全群とも頭蓋・顔面骨の前方方向への発育の変化は認められなかった.
  • 渡辺 浩次, 小林 真一, 小口 勝司
    1984 年 44 巻 2 号 p. 205-211
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近, 血小板Monoamine oxidase (MAO) 活性と種々疾患との関係が問題になっている.今回我々は極微量の酵素材料で人血小板MAO活性を測定する方法を検討し, 更に, 従来の測定法と比較検討した.酵素材料は遠心分離せず採取したplatelet rich plasma (PRP) , 遠心分離 (175×g) した後採取したPRP (centrifuged PRP) , 更に, centrifuged PRPを遠心 (2, 000×g) し得られたPlatelet pelletを用いた.MAO活性はRI法を用い測定した.
    Semicarbazide前処置したPRP中の血小板MAOに対するtype A MAOの特異的阻害剤clorgyline, type B MAOの特異的阻害剤deprenylの影響をtyramine, benzylamine, β-phenylethylamine (PEA) を用いて検討したところ, どの基質も同様にMAO活性は高濃度clorgylineで, また低濃度deprenylで阻害をうけ, かつ阻害曲線は全てsingle sigmoidであった.この結果より, type B MAOのみが血小板MAOに含まれていることが確認された.
    血小板MAOの基質特異性をtyramine, benzylamine, PEA, 5-hydroxytryptamine (5-HT) で調べたところ, tyramineで最も高かつた.
    Semicarbazideで処理しないPRPを用い, plasma amine oxidaseの特異的阻害剤semicarbazide, platelet MAOの特異的阻害剤pargylineの影響を検討したところ, 基質tyramineの場合, semicarbazideは影響なかったが, pargyline1μMでMAO活性は完全に阻害された.基質benzylamineの場合, pargyline 1μMで約10%残存活性が認められた.しかし1mM semicarbazide処理したPRPを用いると, pargyline 10μMでMAO活性は完全に阻害された.この結果よりplasma amine oxidase活性は酵素材料をsemicarbazideで前処理すれば除去できることが判明した.
    そこで, 3つの酵素材料, PRP, centrifuged PRP, platelet pelletのMAO活性をtyramineを使用し比較したところ, dpm/number of platelets値はPRP, centrifuged PRPで高値を示したが, dpm値はPRPで最も高かった.
    健康人について血小板MAO活性と血小板数の関係を検討すると相関関係はy=11.2x+690.4で相関係数は0.784で, 有意な正の相関関係が認められた.
    以上の結果より, 我々の微量測定法は簡便で従来の測定法に比べ極微量の酵素材料で可能であることが判明した.
  • 亀井 勝彦
    1984 年 44 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胆汁酸は臨床では胆石溶解薬として使用されているが, 界面活性作用を有するため肝障害などの副作用が認められている.種々の界面活性物質はヒト由来単離肝細胞障害作用を現わし, 低張性溶血に対し低濃度での溶血阻止と高濃度での溶血促進の二相性作用が認められている.今回, 著者は4種の胆汁酸Chenodeoxycholic acid (CDCA) , Deoxycholic acid (DCA) , Ursodeoxycholic acid (UDCA) , Cholic acid (CA) について生体膜作用をラット単離肝細胞からglutamic oxalacetic transaminase (GOT) , lactic dehydrogenase (LDH) の細胞外への逸脱と, ラット赤血球を用いた低張性溶血に対する二相性作用, ならびに界面活性作用について検索した.さらに, 界面活性物質であるAlkyltrimethylammonium SaltsのDecyltrimethylammonium Bromide (C10) , Dodecyltrimethylammonium Bromide (C12) , Tetradecyltrimethylammonium Bromide (C14) , Hexadecyltrimethylammonium Bromide (C16) についても同様の検索を行った.胆汁酸の単離肝細胞障害作用は4×10-4Mまでは, いずれの胆汁酸においても細胞内酵素の逸脱は認められなかったが, 1×10-3MではCDCAとDCAのみに明らかなGOT, LDHの逸脱作用が認められた.Alkyltrimethylammonium Saltsではアルキル鎖の長いものがGOT, LDHの逸脱が強かった.C10では2×10-3M, C12では4×10-4M, C14, C16では2×10-5Mより酵素逸脱を認め, その程度はC16が最も強かった.胆汁酸の低張性溶血における二相性作用はCDCAとDCAでは6×10-5Mより溶血阻止作用が, 2×10-4Mより高濃度では溶血促進が認められた.UDCAとCAでは二相性作用は認められなかった.Alkyltrimethylammonium SaltsではC10が1×10-3M, C12は1×10-4M, C14とC16は共に2×10-5Mまで溶血阻止作用が認められ, より高濃度では溶血促進作用が認められた.胆汁酸の界面活性作用は1×10-3MではCDCAが27Dyne/cm, DCAが23Dyne/cm, UDCAとCAが18 Dyne/cmの表面張力低下作用を認めた.Alkyltrimethylammonium Saltsでは1×10-3MでC16とC14が35 Dyne/cm, C12が26 Dyne/cm, C10が10Dyne/cmの表面張力低下作用を認めた.以上より, 被験薬物の生体膜作用を単離肝細胞に対する細胞内酵素逸脱作用と低張性溶血に対する二相性作用について検索した結果, 生体膜作用は当該薬物の界面活性作用に概ね相関し, それらの強さは胆汁酸ではCDCA≒DCA>UDCA≒CA, Alkyltrimethylammonium SaltsではC16≧C14>C12>C10の順であった.この界面活性作用は肝障害の発生とも関連するとも考えられ, 薬物の生体膜作用としての界面活性効果については十分な検討が必要であると思われる.
  • 杉山 喜彦, Hans Konrad MÜLLER-HERMELINK, Edward SCHWARZE, Karl LENNER ...
    1984 年 44 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    酸性フォスファターゼと非特異性酸性エステラーゼ両染色法を用いて, リンパ芽球性リンパ腫31例の患者の末梢血およびリンパ節スタンプ標本を検索し, 人胎児の胸腺リンパ芽球と比較検討した.両染色法はT-リンパ球で陽性であり, B-リンパ球, B-リンパ芽球および非Tリンパ芽球では弱陽性か, T-リンパ球にくらべよりびまん性陽性か又は全く陰性であった.酸性フォスファターゼの反応と同様に非特異性酸性エステラーゼの反応も核に接する粗な局在性の滴状陽性物であった.ほとんどの症性で酸性フォスファターゼの反応が非特異性エステラーゼの反応より陽性率がやや上まわっていた.これは胎児の胸腺細胞の反応パターンと一致していた.以上のごとく両染色法は, 免疫学的検索法がいろいろな制限をうけるのにくらべ, 簡便な方法であり応用範囲も広く, 特にT-リンパ球の同定に有効な補助診断法の一つである.
  • 宮坂 圭一, 滝沢 謙治, 広野 良定, 伊藤 真一, 小笹 潔, 藤沢 守男, 蓮沼 節, 菱田 豊彦, 佐々木 容三, 泉 嗣彦, 盧 ...
    1984 年 44 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    弗化ピリミヂン系抗癌剤 (5-FU 10mg/kg, およびTegaful 20mg/kg) を雑犬に静注し, 外分泌 (胃液, 膵液, 胆汁) 中への移行をみた.胃液への移行は, 5-FUの場合胃壁表層5-FU濃度と同等~約1/3の濃度であった.Tegafulの場合胃壁表層Tegaful濃度の約3倍の濃度であり, 5-FU濃度は胃壁表層の濃度とほぼ同等であった.膵液への移行は, 5-FUの場合投与後10分で, 5-FU濃度は膵液中濃度が末梢血, 門脈血中濃度の約2倍であったが40分でtraceとなり, 急速に膵液から消失した.Tegafulの場合, 投与後10分でTegaful濃度は膵液中濃度が末梢血, 門脈血中濃度の約3倍であり, 5-FU濃度は投与後10分で末梢血, 門脈血中濃度の約1.5~2倍であった.膵臓器内濃度は, 投与後60分でTegafu1濃度は膵液中濃度の約1/3, 5-FU濃度はほぼ同等であった.胆汁中への移行は, 5-FUの場合投与後10分の胆汁中5-FU濃度は末梢血・門脈血中濃度の約1.5倍以上であった.Tegafulの場合胆汁中Tegaful濃度は, 末梢血・門脈血中濃度の1/2~1/3以下であった.以上のことから弗化ピリミヂン系抗癌剤が胃液, 膵液, 胆汁中へ移行することが証明され, 抗癌剤の外分泌への移行は, 胃・膵・胆のう, 胆管癌への生体内動態としての一因をなしていることを示唆した.
  • 奥山 清一, 井口 喬
    1984 年 44 巻 2 号 p. 237-249
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学附属烏山病院において1979年9月30日現在, 直接観察期間10年以上の通院および在院の精神分裂病患者は501例であるが, このうち17年以上引き続き在院している134例から55歳以上のもの, および接枝分裂病, ロボトミー実施者を除く68例の実態を調査, 分析し, 20年に及ぶ烏山病院でのリハビリテーション治療が長期在院者に及ぼした影響について考察した.またこれらの患者に対する今後の対策と処遇についても同時に考察をくわえた.精神症状, 社会適応度からみた長期在院者はいずれも母集団 (501例) よりもその程度は有意に悪く, また行動評価においても能力低下の程度は著しい.すなわち予後を不良, 中間, 良好の三群に区分するとき, これらは予後からみれば不良なる予後を示す一群を中核とし, より不良群に近い中間群で構成されており, いわば治癒到達困難群ともいえる.本対象例は烏山病院のリハビリテーション体系下での「結果」としての残留者であるが, 経過の上からは10年前に比し, 状態の不変群が最も多く, 改善と悪化がこれに次ぐ.全体的には不変を中心に相互に打ち消し合うために行動評価得点の平均値には有意差はみられない.しかし少なくとも改善傾向を示す一群の存在はリハビリテーションの影響を無視しえず, とくにナイトホスピタル (N.H.) 実施群にはこの傾向がより顕著にあらわれているが, 一方ではその変化は慢性病状の結果としての欠陥像の枠内にとどまる.本対象者では殆んどは既に国およびその他の社会保障制度の適用をうけているが, いずれにしても現在の長期在院者の処遇については今後の医療と保護の対策が必要であり, 特に福祉面での対応がより重要となる。また精神科医療がリハビリテーションと地域医療に重点が移りつつあるにしても, 分裂病の持つ経過と予後にたいする根源的解決のない現在では, 本研究の対象者の如き一群にも十分な老慮を払う必要がある.
  • 森 啓
    1984 年 44 巻 2 号 p. 251-263
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年成分輸血が進歩し, 血小板輸血の需要が増加してきた.そこで, 白血病を中心とした悪性血液疾患88例の血小板輸血の臨床的効果およびその血小板機能の検討を行った.使用した血小板は, 日赤より供給された濃厚血小板液で1単位あたり2.36±0.57×1010の血小板を含むものを1回10単位から20単位, 又はHaemonetics Model 30を用い、1回あたり3.23±1.32×1011の血小板を含むものであり, 血小板輸血は, 止血, 出血予防の両面から行なわれた.予防的血小板輸血の行なわなかった昭和53年以前までの出血死は37.5%であったが行なわれる様になつた昭和54年以降17.3%と減少した.総症例88例中73例 (83%) に種々の出血症状を認めた.急性白血病の初回導入時の血小板回収率は38.4±27.7%であったが, その後低率となり, 感染合併例, DIC合併例, 脾腫合併例, 輸血後発熱例は, 特に低率であった.止血効果として, 50例中17例 (34%) が有効であったが, 深在性出血, 0~2×104/μlの血小板数の上昇, 末期, 治療抵抗性, fibrinogen 100mg/dl以下の例では止血効果を期待する事はできなかった。種々の検討から予防的血小板輸血の指標として, 血小板数2×104/μlとし, DIC, 発熱, 白血病細胞増加例は, さらに血小板数を増加させる必要があると思われた.また, 血小板機能は, 急性白血病初回導入10例, 非定型白血病1例, 再生不良性貧血1例に対し, 血小板20単位輸血しその前後に検討が行なわれた.1時間の出血時間 (template Ivy法) は7例が21分以内に短縮した.輸血前, 輸血後1時間, 24時間の最大凝集率はADP (1×10-5M) 7.5±10.5%→40.6±13.9%→37.7±15.2%, epinephrine (1×10-4M) 7.5%±6.5%→8.5±18.5%35.4±17.6%, collagen (10μg/ml) 67.8±27.1%一52.6±19.9%→44.6±9.2%, ristocetin (1.2mg/ml) 79.9±16.3%→54.5±18.7%→49.3±10.3%となり, ADP, epinephrineにて凝集能の改善がみられた.輸血前, 輸血後1時間, 24時間の血小板内ATP, ADP量は, いずれもcontrol群と差はなく, 血小板容積も同様の結果であった.pHは, 新鮮PRP7.4±0.02, 日赤PC7.1±0.02で差がみられ, 血小板機能の回復について, 血小板自体より血小板をとりまくpHを含めた血漿中の種々の成分が関係していると考えられた.
  • 伊藤 洋二
    1984 年 44 巻 2 号 p. 265-273
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Histamine H-2 receptor antagonistであるCimetidineはsuppressor cellを抑制するという報告がみられ, Cimetidineの抗腫瘍効果を検討するため, 担癌マウスを使って移植抵抗性試験, 腫瘍増殖に伴う免疫能について検討し, あわせてCimetidineと抗腫瘍剤との併用効果についても検討を加えた.MH134腫瘍を移植したC3H/Heマウスではcontrol groupに比し, Cimetidine 100mg/kg 4日毎投与したgroupで有意に腫瘍増殖が抑制され, 生存日数も延長した.Cimetidine投与担癌マウスと非投与担癌マウスのPHA・Con Aによるリンパ球幼若化反応は非投与groupに比しCimetidine投与groupで増強され, 非投与groupでは腫瘍移植後6日目にPHA反応, ConA反応共に最高値を示したが, Cimetidine投与groupではPHA反応が6日目に, ConA反応は10日目に最高値を示した.また, Plaque forming methodでは, Cimeidine投与groupが腫瘍増殖に伴う抗体産生抑制を阻止する傾向がみられた.Cimetidineと抗腫瘍剤との併用投与により抗腫瘍剤単独投与に比し, 担癌マウスの腫瘍増殖が抑制され, 生存日数も延長した.癌の免疫療法は各種免疫賦活剤を用いたeffecter cellの増強が主流となり広く実施されてきたが, 必ずしも現状では満足すべきものとは言い難い.Cimetidineによる免疫増強はsuppressor cellの抑制も, また新しい意味の極めて有効な免疫療法であることを示唆している.
  • 立川 士郎, 渋沢 三喜
    1984 年 44 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸患者の易感染性について, 全身性因子としての細胞性免疫能を, 黄疸患者自己血漿添加PHAリンパ球幼若化反応によるAutoplasma Inhibitionを中心に検討した.閉塞性黄疸患者 (良性黄疸20例, 悪性黄疸21例) を対象とし, PPD皮内反応, PHA反応および黄疸患者自己血漿添加PHA反応とAutoplasma Inhibition, 生化学的検査としてCRP, AFP, CEA, α1-Antitrypsin, α2-Macroglobulin, C3, C4などを測定した.その結果, 閉塞性黄疸患者では健康成人に比べ門らひにヒトAB血清添加PHA反応も, 自己血漿添加PHA反応も低く, またAutoplasma Inhibitionの高いことが認められた.direct Bili値と黄疸患者自己血漿添加PHA反応, PPD皮内反応, CRP, α1-AT, C4が相関を示し, 特にAutoplasma Inhibitionは閉塞性黄疸の良悪性にかかわらず, 極めて有意の相関を示した.減黄術後には全例でAutoplasma Inhibitionは改善さ免疫能低下が単にリンパ球自体の機能の低下によるものではなく, 血漿中に増加した免疫抑制物質による可能性の大きいことを推察させる.担癌患者の免疫抑制物質として知られる急性期反応物質であるα1-ATが, 閉塞性黄疸患者のAutoplasma Inhibitionと相関したことは, 黄疸血清でもα1-ATが抑制物質として免疫能低下に大きく関与していることを示唆させた.以上のことから, 閉塞性黄疸の細胞性免疫能低下が, 直接ではないにしろ全身性因子のーつとして易感染性の背景となりうると推測された.
  • 安西 将也, 川北 祐幸
    1984 年 44 巻 2 号 p. 281-286
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    以上述べた調査結果および考察を要約すると次の通りである.
    1.調査対象患者852人の年齢搆成は0~14歳0.7%, 15~64歳73.5%, 65歳以上25.8%であった.また, 男女別ではそれぞれ63.3%, 36.7%であった.
    2.転帰別では治癒6.2%, 軽快29.6%, 不変22.1%, 死亡9.5%, 転医20.2%, 検査終了12.2%であった.
    また, 年齢別転帰では治癒, 軽快は年齢とともにその率が悪くなる傾向があり, また当然のことながら, 65歳以上では不変, 死亡患者が多くなり転帰が悪い傾向を示している.
    3.平均在院日数は平均31日であった.また, 男女別ではそれぞれ30日, 34日であった.
    転帰別では死亡, 軽快の平均在院日数が長く, 続いて治癒, 不変, 転医の順で, 検査終了は最も短かいことがうかがえ, 検定の結果でも平均在院日数は転帰に関係があることがわかった.
    また, 手術の有無別にみると手術無しの方が手術有に比べて平均在院日数が長い傾向がうかがえたが, 検定の結果は有意差を認めなかった.
    4.1人1日当り検査件数は平均1.75件であり, 転帰別では検査終了, 死亡, 転医が平均を上まわって検査件数が多いのに対し, 不変, 軽快, 治癒が平均を下まわって検査件数が少なかった.
    また, 1人1日当り検査件数は検定の結果, 手術の有無, 転帰との間に有意差を認めた.
    5.死亡患者は長期にわたり密度の高い検査が実施されているのに対し, 検査終了患者は比較的短期間の在院中に, 密度の高い検査が実施されていることがわかった.
    6.上位11疾患については, 総患者数558人に対して, 慢性肝疾患及び肝硬変, 胃の悪性新生物, 胆石症が上位を占め, この3疾患で59.1%を占めていた.
    7.転帰の良好な治癒, 軽快患者および検査終了患者に, 慢性肝疾患及び肝硬変, 胃潰瘍, その他の部位の消化系良性新生物が多く, 転帰の悪い不変, 死亡患者および転医患者に, 慢性肝疾患及び肝硬変, 悪性新生物が多いことがうかがえた.
  • 山崎 富士雄, 藤巻 悦夫, 宮岡 英世, 北條 博, 大村 和久, 滝川 宗一郎, 山上 繁雄, 扇内 幹夫, 平沼 晃
    1984 年 44 巻 2 号 p. 287-294
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    当科「手の外科診」において昭和38年より昭和57年8月までの間に取り扱ったガングリオンを除く手および前腕の腫瘍139症例, 144腫瘍について統計的検討を行なった.骨, 軟部腫瘍共に性差, 年齢分布に著明な傾向は認められなかった.骨腫瘍50例のうち内軟骨腫が27例と最も多く, 以下外骨腫, 骨のう腫, 類上皮のう腫で悪性例は経験していない.軟部腫瘍94例では血管腫, 神経鞘腫, 脂肪腫, グロームス腫瘍などが多くみられた.悪性腫瘍は悪性黒色腫3例, 扁平上皮癌3例, 横紋筋肉腫2例を経験している.部位別には手指部にかなりの高頻度に発生がみられたが, この事実は手指部は発生母地となる血管, 神経, 筋, 腱などが限られたスペースに密に存在するため比較的早期に扱われ易いこと, さらに手指部はさまざまな急性, 慢性の外傷, 外的刺激を受け易いことがその原因と考えられる.また過去10年間のわが国におけるガングリオンを除いた手の腫瘍913例の報告を集計し当科例および欧米での報告例と比較検討を加えた.いずれも総体的にはほぼ同様の傾向を示したが, 欧米にはわが国に比し扁平上皮癌, 良性神経腫瘍が高頻度にみられた.
  • 田鹿 好昭, 下島 秀一, 千葉 潜, 豊田 益弘, 猪狩 中, 梶田 修明, 金 英雄, 高 国子, 井上 道雄
    1984 年 44 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 1984/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    数回にわたり持続的睡眠状態におちいり脳器質疾患が疑われて受診した症例 (23歳, 女性) について2回にわたり終夜睡眠ポリグラフを施行し, その結果を報告し若干の考察をおこなった.患者は2回の記録でいずれも入眠直後にREM段階に入っており, その後のREM段階の出現の仕方も, 不規則であり中途覚醒もみられた.また, 徐波睡眠第4段階は認められずREM段階出現率, REM密度は平均を上回るものであった.これらの脳波所見はナルコレプシーに特徴的であり, 診断を容易にさせた.ナルコレプシーは睡眠発作, 脱力発作, 睡眠麻痺, 入睡時幻覚を4主症状とするが, 本症例は睡眠発作のみを認めた稀な症例で.このような例はナルコレプシー症例の5パーセントにすぎないとの報告もある.また主症状が睡眠発作だけのものには, 入眠時には逆説睡眠が現れる性質はなく, その入眠過程は正常人の入眠時と同様な経過を示すという報告もあるが, 本症例では入眠時逆説睡眠が認められている点, 興味ある症例と言える.
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