昭和医学会雑誌
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ラット頬部皮膚縫縮および, 頬骨弓切除の頭蓋・顔面骨に及ぼす影響について
吉本 信也浅田 一仁
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1984 年 44 巻 2 号 p. 195-203

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抄録
成長期における顔面への手術侵襲と, それが頭蓋・顔面骨の成長に及ぼす影響については, 従来より数多くの実験報告がなされているが, それらのほとんどが唇裂・口蓋裂を想定したものであり・その他の部位についての論文はほとんど見受けられない.そこで我々は形成外科のテクニックである縫縮術による皮膚緊張及び成長期の頭蓋・顔面骨の頬骨そのものへの外科的侵襲が, どのように影響を及ぼすかについて動物実験で確かめた.即ち50g, 75g, 100g, 200g, 300gの5段階の成長過程にあるラット400匹を用い, それらをA群 (非手術群) , B群 (右頬部の前後軸に沿って皮切のみを加えたもの) , C群 (右頬部皮膚を前後方向に最大緊張にて縫縮したもの) , D群 (C群と同操作を両側に行なったもの) , E群 (右頬骨弓の部分切除のみを行なったもの) , F群 (右頬骨弓の部分切除に加えて右頬部皮膚を前後方向にC群と同量の皮膚を切除したもの) の6群に分けた.全てのラットを術後3ケ月目に断頭し, 頭蓋骨をドライボーンとした後, 規格ポラロイドにて計測を行なって下記の実験結果を得た, (1) 左右への偏位, A群 (対照群) 頭蓋骨はほぼ対称的に発育した.B群, ほとんどA群と同様の発育を示した.C群, 頭蓋・顔面骨の前方が手術側へ偏位し, 手術時期が幼若なほど大きな偏位を認めた.D群, ほとんどA群と同様の発育を示した.E群, 非手術側への偏位を示すものを認めた.F群, 手術側への偏位を示したがC群より程度は小さく, 又, 手術時体重との一定の関係は認められなかった. (2) 前方方向への発育, 全群とも頭蓋・顔面骨の前方方向への発育の変化は認められなかった.
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