昭和医学会雑誌
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ヒト血小板MAO活性の微量測定法
渡辺 浩次小林 真一小口 勝司
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1984 年 44 巻 2 号 p. 205-211

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抄録
最近, 血小板Monoamine oxidase (MAO) 活性と種々疾患との関係が問題になっている.今回我々は極微量の酵素材料で人血小板MAO活性を測定する方法を検討し, 更に, 従来の測定法と比較検討した.酵素材料は遠心分離せず採取したplatelet rich plasma (PRP) , 遠心分離 (175×g) した後採取したPRP (centrifuged PRP) , 更に, centrifuged PRPを遠心 (2, 000×g) し得られたPlatelet pelletを用いた.MAO活性はRI法を用い測定した.
Semicarbazide前処置したPRP中の血小板MAOに対するtype A MAOの特異的阻害剤clorgyline, type B MAOの特異的阻害剤deprenylの影響をtyramine, benzylamine, β-phenylethylamine (PEA) を用いて検討したところ, どの基質も同様にMAO活性は高濃度clorgylineで, また低濃度deprenylで阻害をうけ, かつ阻害曲線は全てsingle sigmoidであった.この結果より, type B MAOのみが血小板MAOに含まれていることが確認された.
血小板MAOの基質特異性をtyramine, benzylamine, PEA, 5-hydroxytryptamine (5-HT) で調べたところ, tyramineで最も高かつた.
Semicarbazideで処理しないPRPを用い, plasma amine oxidaseの特異的阻害剤semicarbazide, platelet MAOの特異的阻害剤pargylineの影響を検討したところ, 基質tyramineの場合, semicarbazideは影響なかったが, pargyline1μMでMAO活性は完全に阻害された.基質benzylamineの場合, pargyline 1μMで約10%残存活性が認められた.しかし1mM semicarbazide処理したPRPを用いると, pargyline 10μMでMAO活性は完全に阻害された.この結果よりplasma amine oxidase活性は酵素材料をsemicarbazideで前処理すれば除去できることが判明した.
そこで, 3つの酵素材料, PRP, centrifuged PRP, platelet pelletのMAO活性をtyramineを使用し比較したところ, dpm/number of platelets値はPRP, centrifuged PRPで高値を示したが, dpm値はPRPで最も高かった.
健康人について血小板MAO活性と血小板数の関係を検討すると相関関係はy=11.2x+690.4で相関係数は0.784で, 有意な正の相関関係が認められた.
以上の結果より, 我々の微量測定法は簡便で従来の測定法に比べ極微量の酵素材料で可能であることが判明した.
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