抄録
SI (安定同位体) は, RIに比較して利用が限られているのが現状である.SIには, 放射線被曝や環境汚染の心配がないのでもっと利用されるべきであると考えられる.今回, 15Nアスパラギン酸および15N尿素をラットに投与し, 15N排泄を全身照射群と非照射群および担癌個体照射群と非照射群で比較した.照射および担癌状態における窒素代謝に及ぼす影響を15Nをトレーサーとして観察するのが目的である.また, 15Nの腫瘍への経時的なとりこみを, 肝臓, 筋肉などと比較した.なお, 測定は, 質量分析法と発光分光法によった.まず, ほとんど蛋白合成に利用されないと考えられる15N尿素を投与した場合, 照射群の方が非照射群より15N尿中排泄が少い事が観察されたが, 腎に対する照射の影響が考えられた.15Nアスパラギン酸を投与した場合は, 照射群の方が15N尿中累積排泄率が高く, 照射による異化亢進を反映したものと考えられた.次に, 担癌個体の場合を検討するため, A群 (ラットの右大腿に固形腫瘍をつくり, その部に局所照射を行う群) , B群 (固形腫瘍をつくるが, 照射を行わない群) , C群 (正常な右大腿部に照射を行う群) , D群 (コントロール群) の4群について, 15N尿中累積排泄率を比べたが, 照射を行ったA群とC群が高かった.最後に, 15Nアスパラギン酸投与後の15Nの腫瘍へのとりこみをみると, ピークは肝臓と同じく投与後12時間目であるが, 腫瘍へのとりこみの方が, 肝臓の約2倍多かった.これは, いわゆるNitrogen trapと関係があると思われる.従来, 窒素代謝は, 14Cや3Hをトレーサーとして研究されているが, 窒素そのものの動きをみれる15Nは有用であると考えられる.しかし, 測定法が煩雑で時間がかかり, 15N標識化合物が比較的高価で, 希釈されるため比較的大量投与しないと測定できない等, 問題も残っている.