昭和医学会雑誌
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脳卒中患者を対象とした聴覚中枢系路に関する一考察
中島 仁
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1984 年 44 巻 5 号 p. 581-586

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抄録

脳卒中後遺症例に対して自記オージオメトリー, 音源方向感検査を行なった.その結果, 麻痺側耳に振幅異常増大を認めたが, この傾向は左片麻痺群に多かった.また, 方向感は不良であったが, 音源が右方向に偏するものが多く, この傾向は左片麻痺群に多かった.自記オージオメトリーにて, (1) I型において失語症を含む右片麻痺群に比して左片麻痺群に振幅異常増大を示すものが多かった. (2) II型においても同様, 左片麻痺群に振幅異常増大を示すものが多かった. (3) 振幅異常増大は各群とも麻痺側耳に多い傾向を示した.音源方向感検査にて, (1) 右片麻痺群の正答組数の総平均は10.8, 左片麻痺群の正答組数の総平均は11.3で, 正常聴力者の正答組数16よりはるかに低かった. (2) 正答組数が検査組数の1/3以下の群における音源指示応答をみると, 正中にあると答えた耳数が非常に多かった. (3) 正答した左右方向の組数に差を有するものの中では右方向の正答組数の方が多かった.この傾向は左片麻痺群に著明であった.以上より, (1) 右大脳半球の側頭藩には, 音の強さの弁別に関与している機能があると考えられる. (2) 音源方向感には脳幹部の作用も関与しているが, 高位の聴中枢も関与していると考えられる. (3) 右大脳半球には音の認識, 空間性, 同時性を認識する中枢があるものと推定される.

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