抄録
異なるメーカーの4つの補聴器を聴かせたところ, 聴力正常者でも一般人と専門家では音の好みが異なることを知った.そこで一般正常者及びほぼ同じ聴力型を有し, 平均聴力レベル50~70dBの軽~中等度難聴者に, 同一メーカーの補聴器4機種を基準周波数特性にてイヤホン3種 (N.W.P) でそれぞれ聴かせ, 主観的音質評価を行わせ比較検討した.また難聴者に実生活における補聴効果の評価もさせた.この結果1) 一般正常人と難聴者の好む補聴器の特性は1KHz以上に大差は無かったが, 1KHz以下が適当な傾斜で減衰していた.補聴器はどのイヤホンもほぼ同一であった.
2) 音質の好むイヤホンは一般正常人と難聴者で差はなくN>W>Pの順位であった.3) 実生活において難聴者に比較させたところ, 好む音質のイヤホンはN>P>Wの順であった.4) 実生活においてイヤホンを比較させたところ, 平均聴カレベル60dB未満の難聴では, 程度の軽い者ほどW特性を嫌う傾向があった.以上の結果を参考にすれば, 数多くの補聴器及びイヤホンの組み合わせの中から, まず補聴器を選択する場合はイヤホンをNとし, 50~70dBの軽~中等度難聴者には低音域を増幅していない特性のものを選んで試聴さすべきであることが分った.そして, これを中心に他の特性の補聴器及びイヤホンを選択させれば, 補聴器選択が容易であることが分った.