昭和医学会雑誌
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運動能力を用いての脂肪比率による肥満評価基準の検討
柴田 一男高崎 裕治中倉 滋夫
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1985 年 45 巻 2 号 p. 265-271

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抄録
従来提案されている肥満の評価基準については, その基準設定の科学的根拠が必ずしも十分なものとはいえない.従って, 肥満評価の基準設定にあたっては, 種々の目的に応じた評価基準の妥当性, あるいは他指標との関連性を検討すべきである.そこで, 単純性肥満における大きな弊害は運動能力が劣っていることに注目し, 本研究では特に運動能力を用いて脂肪比率による肥満の評価基準を検討した.その結果, まず運動能力テスト総合点と脂肪比率との関連性が大きいことから, 運動能力の高低を基礎にした肥満評価のための指標として肥肪比率が適当であることを明らかにした.次に, 運動能力を用いての脂肪比率による肥満の評価基準設定に当たっては, 運動能力テスト総合点をもとに5パーセンタイル値以下に含まれる群 (A群) を運動能力が劣っていると仮定し, 5パーセンタイル値以下に含まれない群 (B群) と脂肪比率を比較した.A群はB群と脂肪比率については有意に異なり, A群の脂肪比率は高かった.脂肪比率の平均値はA群で男子19~20%, 女子26~27%, B群で男子13~14%, 女子22%であった.従って, 著者らはA群の脂肪比率の平均値よりも高い値を示すものは運動能力が劣っていると考え, A群の平均値周辺を肥満の境界とみなした.以上の結果, 運動能力からみた肥満の評価基準は男子で20%以上, 女子で25~30%以上を肥満とすることが適当であるという結論に達した.これは従来知られている脂肪比率による肥満の評価基準とも一致し, この有意性が立証された.
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