抄録
土耕における根域容量制限処理と高塩濃度液肥処理(塩ストレス処理)が加工用トマトの果実品質ならびに収量に及ぼす影響を,灌水同時施肥栽培において露地条件と温室ポット栽培試験で評価した.露地試験の場合,液肥の EC を 5 dS/m と設定したところ,可溶性固形物濃度と GABA 含有量に明確な差違は確認できなかった.一方,ハウス内で実施したポット栽培試験では,塩ストレス処理によって可溶性固形物濃度と GABA 含有量が,それぞれ平均で対照区よりも 57 ならびに 22%増大した.また,露地試験で液肥の EC が 7 dS/m の塩ストレス処理区ならびに土壌 pF 値の上限を 2.7 とした水ストレス処理区を設定したところ,いずれの処理区でも可溶性固形物濃度が 6.9 と対照区の 5.7 よりも 21%上昇した.しかしながら,露地条件での塩ストレスは GABA 含有量を高める効果は確認できなかった.防根シートにより培地容量を 16 L から 26 L に制限した根域容量制限処理は,可溶性固形物濃度と GABA 含有量に影響しなかった.しかし,1 L と 6 L に根域を制限した場合,特に塩ストレス環境下では,可溶性固形物濃度ならびに GABA 含有量が増加する傾向が示された.また,根域容量制限は,地上部,特に側枝の伸長を抑制し,かつ収穫果実数を減少させた.