抄録
切除胃癌34例に対し, 非癌巣粘膜内における嗜銀細胞と肥胖細胞の分布を比較し主病変による影響及び, 随伴性胃炎性変化との関連について検索し, さらに癌巣内分布についても検索した.対照として原発性慢性胃炎4例, 慢性胃潰瘍16例を加えた.Borrmann型別嗜銀細胞出現率は, 1型, 2型が高く, 3型, 4型が低かった.同様に肥胖細胞出現率は, 3型が最も高く, 以下2型, 1型, 4型の順であった.限局型胃癌群 (Borr.1, 2型) と浸潤型胃癌群 (Borr.3, 4型) に分けると, 嗜銀細胞出現率は限局型に高く, 肥伴細胞出現率ではまったく差は認めなかった.病変からの距離を2.0cm内の辺縁部, 2.1cmから4.0cmの遠隔部に分けると, 嗜銀細胞出現率は限局型, 浸潤型とも辺縁部に高値を示すが, 限局型が浸潤型に比べて高値を示した.肥胖細胞出現率も同様に, 限局型, 浸潤型とも辺縁部に高値を示したが, 限局型よりも浸潤型の方が高値を示し, 嗜銀細胞と肥胖細胞の出現率と, 限局型との間には逆の関係がみられた.嗜銀細胞出現率と肥胖細胞出現率を比較したがBorrmann 4型群を主とした浸潤型胃癌群に相関する傾向を認めた.しかし胃癌全体ではその傾向はわずかであった.癌巣内嗜銀細胞出現率は20.6%とやや高値であった.出現例の組織型は全例未分化型で, 浸潤性発育を示した.肥胖細胞は, ほとんど全てに出現したが, Borrmann3型, 4型の未分化型, 浸潤性発育を示す例に多く出現する傾向がみられた.対照とした原発性慢性胃炎, 慢性胃潰瘍との出現率の比較では嗜銀細胞は慢性胃潰瘍, 原発性慢性胃炎, 胃癌 (前2者では差は極少) の順に, 又肥胖細胞は原発性慢性胃炎, 胃癌, 慢性胃潰瘍の順に高値を示した.各疾患に随伴する胃炎性変化と嗜銀細胞出現率を原発性慢性胃炎を含めて検討すると, 平福分類におけるP, I, L因子に加えて, Paneth細胞との関連が認められた.しかし肥胖細胞との相関は見い出し得なかった.以上, 胃粘膜内嗜銀細胞の出現は, 主病変の影響も無視できないが主体は随伴する胃炎性変化とともに増加する一因子であると思われた.