昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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45 巻, 3 号
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  • 森 義明
    1985 年 45 巻 3 号 p. 323-325
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索
    杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義, 飯田 善樹
    1985 年 45 巻 3 号 p. 327-330
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Hodgkin病のリンパ節スタンプ標本のANAE染色による検索から15歳以下の若年者群9例と60歳以上の高齢者群9例とのT cell populationを比較した.ANAE-Droplet positive cel1は若年者にくらべ高齢者が明らかに低値を示した.Hodgkin病の病巣部ではリンパ節や脾においてT-cellが増加することは周知の事実である.又生理的にも加齢につれてリンパ球の絶対数の減少, 特にT-cellに起因する種々のcellular immunity等の障害を考え合わせると, 同一疾患の病巣におけるこの差は, リンパ球がactivatedstateあるいはneoplastic processにおちいる以前のリンパ節内T-cellpopulationの数の差に基ずく所見と思われる.
  • ―Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase (ANAE) 染色による検索―
    杉山 喜彦, 塩川 章, 光谷 俊幸, 九島 巳樹, 渡辺 秀義, 飯田 善樹
    1985 年 45 巻 3 号 p. 331-334
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ANAE染色により我々は非特異性リンパ節炎やHodgkin病におけるT-cellやPlasma cell Seriesの年齢差による違いを検索し, T-cellが高齢者にくらべ若年者において著明な高値を示していることを両疾患において指摘した.今回は濾胞中心細胞由来の悪性リンパ腫において50歳以下の群と70歳以上の群についてT-cellとPlasma cell Seriesの差をしらべたが, 両細胞ともに上記二群との間には推計学的差は認められなかった.Nodular lymphomaにおいてはinterfollicular lymphocyteが予後に関連するとされている.今回の検索から判断すると, これは年齢差からくるT-cellの量的な差は関与しておらず他の因子がB-cellの増生を抑制している可能性が示唆された.
  • Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase (ANAE) 染色による検索
    杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義, 飯田 善樹, 大原 秀治
    1985 年 45 巻 3 号 p. 335-338
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々はリンパ節スタンプ標体でANAE染色を用いて種々のリンパ節疾患におけるT-cellとPlasma cell Seriesとの変動を検索している.今回は臨床的にlow grade malignancyとされているnodular lymphosarcoma25例とhigh grade malignancyのB-cell type immunoblastic lymphoma16例とをANAE染色によりT-cellrestとPlasma cell Seriesの量を両疾患について比較した.症例によりT-cell及びPlasma cell Seriesともかなりの変動がみられたが, いずれも平均値においては両疾患の間に推計学的な有意差は認められなかった.悪性リンパ腫, 特にB-cell由来の疾患においてはT-cell restやPlasma cell Seriesの量的変動は予後と相関しないことが示唆された.Routineの検査による腫瘍細胞の形態及び増生状態の観察が予後判定の上ではより重要であり, 特殊検査は常に補助診断として施行すべき方法であろう.
  • 伊藤 芳憲
    1985 年 45 巻 3 号 p. 339-351
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学病院 (昭和45年~59年) , 熊本機能病院 (昭和56年~59年) , 聖アリア病院 (昭和54年~59年) , 以上3施設の形成外科を, 上記期間中に受診した唇裂・口蓋裂患者3425例を対象として, 唇裂・口蓋裂における合併奇形について調査を行った.他種奇形の合併率は6.98%で, これを裂型別にみると, 唇裂3.29%唇口蓋裂6.84%, 口蓋裂18.63%で口蓋裂単独のものにおいて, 最も高率な値となった.これらの中より粘膜下口蓋裂を集計した結果, 他種奇形の合併率は37.29%と非常に高率であった.また, これらの合併奇形のうちで多くみられたものは, 先天性心疾患, PierreRobin症候群, 臍・鼠径ヘルニア, 耳介奇形, 四肢奇形, 精神発達遅滞, 舌小帯癒着症, 他の顔面裂 (巨口症, 斜顔面裂) であった.さらに, すでに調査され発表されている発生頻度と比較して, 明らかに高率であったものは, 先天性心疾患, Pierre Robin症候群, 四肢奇形, 小耳症, 巨口症, 斜顔面裂であった.先天性心疾患, 四肢奇形, 小耳症については, 口蓋裂唇口蓋裂, 唇裂の順に合併率が高く, 他種奇形全体における合併率の順位と同様の結果を得た。
  • 渡辺 糺
    1985 年 45 巻 3 号 p. 353-369
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    切除胃癌34例に対し, 非癌巣粘膜内における嗜銀細胞と肥胖細胞の分布を比較し主病変による影響及び, 随伴性胃炎性変化との関連について検索し, さらに癌巣内分布についても検索した.対照として原発性慢性胃炎4例, 慢性胃潰瘍16例を加えた.Borrmann型別嗜銀細胞出現率は, 1型, 2型が高く, 3型, 4型が低かった.同様に肥胖細胞出現率は, 3型が最も高く, 以下2型, 1型, 4型の順であった.限局型胃癌群 (Borr.1, 2型) と浸潤型胃癌群 (Borr.3, 4型) に分けると, 嗜銀細胞出現率は限局型に高く, 肥伴細胞出現率ではまったく差は認めなかった.病変からの距離を2.0cm内の辺縁部, 2.1cmから4.0cmの遠隔部に分けると, 嗜銀細胞出現率は限局型, 浸潤型とも辺縁部に高値を示すが, 限局型が浸潤型に比べて高値を示した.肥胖細胞出現率も同様に, 限局型, 浸潤型とも辺縁部に高値を示したが, 限局型よりも浸潤型の方が高値を示し, 嗜銀細胞と肥胖細胞の出現率と, 限局型との間には逆の関係がみられた.嗜銀細胞出現率と肥胖細胞出現率を比較したがBorrmann 4型群を主とした浸潤型胃癌群に相関する傾向を認めた.しかし胃癌全体ではその傾向はわずかであった.癌巣内嗜銀細胞出現率は20.6%とやや高値であった.出現例の組織型は全例未分化型で, 浸潤性発育を示した.肥胖細胞は, ほとんど全てに出現したが, Borrmann3型, 4型の未分化型, 浸潤性発育を示す例に多く出現する傾向がみられた.対照とした原発性慢性胃炎, 慢性胃潰瘍との出現率の比較では嗜銀細胞は慢性胃潰瘍, 原発性慢性胃炎, 胃癌 (前2者では差は極少) の順に, 又肥胖細胞は原発性慢性胃炎, 胃癌, 慢性胃潰瘍の順に高値を示した.各疾患に随伴する胃炎性変化と嗜銀細胞出現率を原発性慢性胃炎を含めて検討すると, 平福分類におけるP, I, L因子に加えて, Paneth細胞との関連が認められた.しかし肥胖細胞との相関は見い出し得なかった.以上, 胃粘膜内嗜銀細胞の出現は, 主病変の影響も無視できないが主体は随伴する胃炎性変化とともに増加する一因子であると思われた.
  • 神山 五郎, 行徳 博英
    1985 年 45 巻 3 号 p. 371-378
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小耳症, 耳介欠損, 等に対する耳介再建術の際, 耳介をどの様に配置するかは大きな問題である.そこで, 耳介作成時の基準として日本人18~21歳の男性82名と18~19歳の女性82名を対象とした頭部側面写真をもとに耳介長軸と鼻梁線とのなす角度について調べた.測定方法は耳介付着線を基準とし, 鼻梁線, 耳介長軸との角度を測定・計算し, その結果日本人若年男性では鼻梁線と耳介長軸とは16.0°, 若年女性では14.6°, 平均15.3°をなすという結果がでた.
  • ―加速-減速モデルを用いた検討―
    加地 紀夫, 大野 雅文, 中谷 研一, 谷野 正一郎, 佐藤 韶矩, 吉田 文英
    1985 年 45 巻 3 号 p. 379-389
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は加速―減速モデルを用い, 単発では心機能に変化のでない低圧で連続衝撃を頭部に加え, 心機能変化を検討し, さらに, 各種自律神経遮断薬剤を用い, その発生機序につき比較検討した.雑種成犬の右頭頂側頭部に, air gunを用い1分間に1回の割合で10回の連続衝撃を加え, 平均血圧, 心拍数, 左室内圧, maxLV dp/dt, 大動脈血流量, 総頸動脈血流量, 左室心筋内層および外層の局所心筋血流量, pressure rate product, 全末梢血管抵抗, 標準肢誘導心電図を衝撃終了後30分まで同時記録した.単発衝撃の4頭をC1群, 薬剤非投与の連続衝撃の8頭をC2群とし, 薬剤投与群はatropine sulfate 0.2mg/kg (AS群) , propranolol 0.15mg/kg (prop群) , phenoxybenzamine 2mg/kg (POB群) 各6頭とした.C1群では各パラメーターとも有意な変化を示さなかった.C2群では平均血圧, 左室内圧, maxLV dp/dt, 大動脈血流量, 総頸動脈血流量は, 衝撃の回を追うごとに増加し, それぞれ+51%, +52%, +56%, +30%, +59%といずれも有意に上昇し, 衝撃終了後30分以内にほぼ前値に回復した.心拍数は衝撃中徐々に減少し, 最大-13%と有意に減少した.pressure rate productと全末梢血管抵抗はそれぞれ+34%, +23%に増加した.また, 全例に心室性期外収縮が出現し, 血圧上昇の著しい1例で心室性頻拍を認めた.8例中4例でST上昇を認め, ST上昇例ではST不変例に比べ, 局所心筋血流量は内・外層ともに有意に低値を示した.薬剤投与群では, AS群はC2群とほぼ同様の変化を示し, POB群は衝撃による変化が最も少なく, prop群はその中間的な変化であった.これらの結果より以下の結論を得た. (1) 比較的弱い連続の頭部衝撃により, 交感神経系の効果の増強によると思われる血圧, 左室内圧, maxLV dp/dtの上昇, 大動脈血流量の増加を認めた. (2) 総頸動脈血流量の増加は, 脳血流の自己調節機構の破綻のため, pressure dependentに内頸動脈血流量が増加したためと考えられた. (3) 圧受容体反射によると思われる軽度の徐脈傾向がみられたが, 強い衝撃の直後に見られるような著しい徐脈および徐脈性不整脈は認めず, 弱い衝撃においては, 受傷直後の副交感神経系の影響は少ないと考えられた. (4) pressure rate productや局所心筋血流量の測定により, 心筋の相対的な虚血がST変化の原因となりうることが示唆された.
  • 和田 栄, 小林 真一, 小口 勝司
    1985 年 45 巻 3 号 p. 391-396
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト脳mono amine oxidase (MAO) の酵素化学的性質に関する報告は数多くあるが, ヒト胎児脳MAOに関する報告は少ない.今回我々はヒト胎児脳MAOの酵素化学的性質を検索し, 更にヒト成人脳と比較検討した.酵素材料は胎児全脳を摘出後, 1: 4のホモジネートを作成し, これをMAOの酵素標品とした.MAO活性は基質として14C-tyramine, 14C-Serotonin (5-HT) , 14C-β-Phenylethylamine (PEA) , 14C-ben-zylamineを使用するRI法にて測定した.反応液のpHを種々に変化させMAO活性を測定したところ, 胎児脳MAOではいずれの基質を使用した場合も, その至適pHはpH8.5付近に認められた.次にそれぞれの基質のKm値とVmax値をLineweaver-Burkの両軸逆数プロット法により検討した.PEAを基質とした場合, そのKm値は1.4μMであり他の基質を使用した場合に比べて低い値を示した.Tyramine, 5-HT, およびbenzylamineを基質とした場合, Km値はそれぞれ120.7μM, 124μM. 72.8μMとなり, 胎児脳MAOの基質に対するKm値は成人脳MAOに比べて大きかった.また, Vmax値 (pmole/mgprotein/min) はtyramineを基質とした場合では175.7, 5-HTでは245.2, PEAでは20.3, benzylamneでは82.1であった.また, それぞれの基質濃度100μMにおけるspecific activity (pmole/mg protein/min) はそれぞれ81.1, 89.7, 1.0および33.5であった.よって5-HTを基質とした場合, そのVmax値とspecficac tivityはPEAやbenzylamineを基質とした場合に比べて大きかった.type A MAOの特異的阻害剤であるclorgylineおよびtype B MAOの特異的阻害剤であるdeprenylの胎児脳MAOに対する影響を検討したところ, 阻害曲線は5-HTおよびPEAではいずれの阻害剤においてもsingle-sigmoid型を示し, 5-HTではclorgyline, に, PEAではde-prenylにより強い感受性を示した.また, tyramineでは両阻害曲線は10-7~10-9Mでプラトー部分を示すdouble-sigmoid型を示し, プラトー部分におけるclorgylineのMAO活性阻害率は約60%であり, deprenylのそれは約25%であった.また, bentylamineの場合の阻害曲線はsingle-sigmoid型を示し, 両阻害剤の10-3M濃度においても約8%の活性が残存したが, この残存活性はbenzylamine oxidase (BZAO) の特異的阻害剤であるsemicarbazide (10-3M) で完全に阻害された.このことはその残存活性がBZAOによるものであり, 血管壁由来のものと思われる.以上の結果より, 胎児脳にはtype A MAOとtype B MAOが共に存在し, 成人脳とは逆に, type A MAOがtype B MAOよりも多く存在することが明らかとなった.
  • 工富 道子, 武田 健, 紺野 邦夫
    1985 年 45 巻 3 号 p. 397-401
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    癌細胞を正常細胞類似の細胞に分化誘導することにより, 細胞増殖・造腫瘍性を低下させる試みが主として白血病細胞を用いてなされている.臨床的に治療が困難なヒト骨髄性白血病細胞においても, in vitro培養系で種々の化学物質やタンパク性の分化誘導因子により, マクロファージ様細胞に分化することが明らかにされてきた.我々は, 急性骨髄性白血病の患者から樹立されたM-L-1細胞を用いて, 作用に特異性があり毒性の少ないタンパク性の分化誘導因子に着目し研究を進めてきた.しかし, 分化誘導因子単独では作用が弱い.分化誘導因子と他の薬剤を組み合わせることにより, より効果的に分化を誘導する方法を検討した.一連の実験では, 分化の指標として主に活性酸素の産生を示すNBT還元能を測定した.高濃度のヒト末梢血単核白血球培養上清 (LCM) を添加すると, ML-1細胞は形態的にも機能的にもマクロファージ様細胞に分化した.LCM30%添加で約50~60%の細胞がNBT還元能陽性を示した.低濃度LCM添加 (1%) では対照と殆んど変わりのない低値のNBT活性しか示さない.そこでこのとき同時に細胞増殖を抑制する目的でActinomycin D 10-12Mを併用した.約90%の増殖阻害がかかり, NBT陽性細胞は80%と著しく上昇することが認められた.なおActinomycin D単独では分化誘導作用は殆んど示さない.同様のことがCylocide l×10-6M, Methotrexate 2.5×10-8M, Adriacin l×10-7Mでも認められた.以上の相乗効果には薬剤が同時に存在することが必要なのか, あるいは増殖の停止状態が必要なのか不明であったために, 薬剤と細胞をpreincubationし, 細胞を洗い薬剤を除去した後に1% LCMを添加した.Actinomycin Dで24時間前処理すると, 90%以上の細胞がNBT陽性となり, sequentialな処理によっても分化が強く誘導されることが判明した.薬剤の代わりに紫外線を短時間照射することによっても同様の相乗効果が認められた.これは紫外線によりDNA鎖が切断され, DNA複製に支障をきたした結果増殖が抑制されたものと思われる.以上の結果から, 分化誘導因子の作用は細胞の増殖を抑制した状態で著しく増強されることが判明した.現在その機構は不明であるが, この現象は以下の二点で臨床的観点からも重要な知見となると思われる.一つには, 化学療法剤の新たな役割が明らかにされたことであり, また二つ目として分化誘導活性を有する諸因子の生体内での産生を高める方法が確立できれば, 化学療法剤との併用により, 分化誘導療法を臨床で応用していくことが可能と思われることである.
  • 鈴木 孝臣, 伊東 由夫, 寺沢 富士夫
    1985 年 45 巻 3 号 p. 403-413
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    左軸偏位の成因について, 1956年Grantは臨床病理学的検討を行ない, 心筋梗塞ならびに冠動脈疾患による心筋線維症に関係し, かつ伝導障害が左脚の分枝様態と深く関係しているという考えでperi-infarction blockなる概念を導入した.また, Rosenbaumが三束ブロックの概念を提唱して以来, 特に右脚ブロックとの関連において注目されてきた.本論文では, 老年者にみられる左軸偏位例の特徴を明らかにするため, その臨床病理学的検討を行なった.60歳以上の老年者連続剖検例1000例を対象とした.左軸偏位例は前額面平均電気軸角度-30°以上をとりあげた.残る853例から対象189例を選んだ.左軸偏位と加齢との関係は, 加齢に伴って増加傾向を認めたが, 男女共に80歳代以上で有意に左軸偏位の頻度が高かった.主要な心合併症として, 心筋梗塞17.0%, 脚ブロック13.0%, 両者合併4.0%を認めた.心筋梗塞, 脚ブロック以外の心疾患を有しない正常心に合併するいわゆるIsolated LADが30.6%に認められた.病理学的検討として, 心重量, 左室肥大, 冠動脈硬化の程度は, 心筋梗塞合併例で強く, 他合併例では対照例と比べ差異は無かった.左軸偏位例に合併する心筋梗塞および心筋梗塞+脚ブロック例の特徴として, 中隔を含む梗塞例が, それぞれ43.8%, 50.0%に認められた.また, 左軸偏位例の前額面平均電気軸の決定に, 梗塞の有無にかかわらず終期0.04秒ベクトルの影響が大きいことが認められた.脚ブロック例でも同様であった.以上の結果から, 左軸偏位の成因は, 心筋梗塞のような心筋壊死により一部説明されるが, その大部分は心肥大, 冠動脈硬化とは無関係であり, 脚ブロックと同様刺激伝導系の変性および線維症を示唆する成績を得た.
  • 永野 聖司, 白取 雄, 稲葉 昌久, 高山 公吉
    1985 年 45 巻 3 号 p. 415-419
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    振動覚の低下は糖尿病性神経障害にみられる重要な理学的所見の一つである.我々は電気的に音叉を振動させ振動覚閾値を定量的に電圧で表示する振動覚計を作製し63人の健常人と139人の糖尿病患者について調査した.第二手指および第二足趾での振動覚閾値は健常人, 糖尿病患者とも加齢とともに上昇を示した.手指振動覚では糖尿病群が健常人に比較して閾値の上昇を示したがその差は少なかったのに対し足趾では健常人に比して有意な振動覚閾値の上昇を示した。さらに以上の糖尿病患者のうち59人について5年後再び振動覚閾値を調べ5年後の振動覚閾値と前の閾値の差を振動覚進行度として表現し種々の因子との関連性を検討した.足趾振動覚進行度は5年間の平均空腹時血糖値およびHbA1と正の相関関係を示した (各々r=0.307, p<0.05; r=0.468, p<0.01) .また指突容積脈波計による足趾波高と負の相関を示した (r=-0.464, p<0.05) .インスリン分泌能, 血清脂質, 網膜症の有無とは無関係であった.さらに末梢血管振張剤, ビタミン剤使用の有無による有意差も検定したが5年間という比較的長期間での振動覚悪化を阻止することはできないようであった.以上より血糖コントロールが糖尿病患者の振動覚低下の進展防止に基本的に重要であると考えられた.
  • 玉木 伸和
    1985 年 45 巻 3 号 p. 421-429
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットを用いて, 横隔膜の筋線維タイプ組成と毛細血管分布量との相互関係を, 主として下肢のそれらとの比較から明らかにし, 同時にそれらの性差および発育による変化についても検討した, 筋線維は, コハク酸脱水素酵素染色およびpH4.3の溶液で前処理した後のミオシンATPase染色によって3種類のタイプに分類した.筋毛細血管壁は, pH4.0の溶液で前処理した後のミオシンATPase染色によって染色した.ラット横隔膜を占める速筋線維の比率は, 速筋である足底筋および長指伸筋のそれらに近似し, 速筋の性質を示した.また, ラット横隔膜の毛細血管分布量は, 他の下肢筋のものより豊富であった.雌雄ラットの横隔膜を構成する筋線維タイプの比率には差がみられなかったが, 雌ラットは雄ラットに比較して毛細血管の分布量が豊富であった.発育にともなって, ラット横隔膜では運動ニューロンの特性が変化すること, そして新しい毛細血管が形成されることが明らかとなった.ラット横隔膜の特性および発育による変化は, 高頻度換気にともなう低抵抗性筋収縮といった横隔膜の基本的運動への関与を反映したものである.
  • 小林 真一, 内田 英二, 小口 勝司, 安原 一, 坂本 浩二, 五味 邦英
    1985 年 45 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 岡本 健一郎, 伊藤 隆, 新原 信子, 八代 亮, 加々美 建一, 目時 隆, 増田 豊, 細山田 明義
    1985 年 45 巻 3 号 p. 435-438
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去8年間に当院麻酔科ペインクリニックを受診した帯状疱疹および疱疹後神経痛の患者は246名であった.帯状疱疹は132名であり, 疱疹発生から2週間以内のものを新鮮例, 2週間以降のものを陳旧例とした.神経ブロックは症状が改善し, 患者が納得するまで行なった.神経ブロックの平均回数・治療期間について, 40歳以上の患者から急に増加しており, また新鮮例と比べて陳旧例ほどやはり多くなっている.
  • 村上 厚文, 新井 一成, 福島 元彦, 村上 雅彦, 河村 一敏, 片岡 徹, 小池 正, 石井 淳一
    1985 年 45 巻 3 号 p. 439-443
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性で, 昭和56年1月23日S状結腸癌根治術施行後, 昭和58年2月頃より急激なCEAの上昇を示したので, 精査の結果, 肝右葉前上区域の孤立性肝転移と診断した.この症例に対し肝部分切除術を施行し良好な結果を得た.転移性肝癌は肝硬変の合併が少なく肝切除術式及び術後管理法がほぼ確立されている現在, 腫瘍切除により明らかな延命効果が期待出来る.したがってわれわれの教室においても転移性肝癌に対し積極的に肝切除術を行なうよう心がけている.ここにその一治験例を提示するとともに文献的考察を加え, われわれの大腸癌肝転移に対する外科的方針についての考えを報告する.
  • 田中 一正, 成島 道昭, 戸野 塚博, 吉尾 卓, 金重 博司, 国枝 武文, 刑部 義美, 中神 和清, 鈴木 一, 野口 英世
    1985 年 45 巻 3 号 p. 445-448
    発行日: 1985/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Morgagni孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアのなかでも約3%前後と比較的まれな疾患で, 特に大網のみをヘルニア内容とする時は診断が困難であることが多い.今回われわれは68歳女性の胸部異常陰影においてその診断上胸腹部連続CTスキャンが有用であったMorgagni孔ヘルニアを経験し報告した.
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