昭和医学会雑誌
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マウス・ニューロブラストーマ細胞における形態分化と興奮性獲得との関係について
松井 洋一郎
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1985 年 45 巻 5 号 p. 643-652

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抄録
マウス神経芽細胞腫 (neuroblastoma) に由来するNS-20クローン細胞を用いて, 軸索形成を形態分化, 興奮性獲得の過程を機能分化とみなして, 両者の関係を検討した。
10%仔牛血清を含むDulbecco変法Eagle培養液中では, 円形と紡錘形の未分化増殖細胞が見られる.この細胞に微小電極を挿入し, ブリッジ回路を介して脱分極及び過分極性通電を行うと, 大部分の細胞で興奮性を示さないpassive response (PR) が, その他の細胞でdelayed rectificationを示す反応 (DR) が, ごく小数の短い軸索を有する細胞でactive response (AR) が観察された。
無血清, 1mM dibutyryl cyclic AMP及び10-5M aminopterinを含む条件培養液中では, 7日以内で軸索は急速に伸長し, 以後平均190μmの長さとなった.ARを示す細胞の静止電位は, 軸索が伸長するのに伴い平均-28mVから平均-40mVに次第に増加した.実効膜抵抗も増大する傾向を示したが, 軸索形成に伴う細胞全表面積の増加を考慮すれば, 実質的には比抵抗は著しく増大したことになる.一方, 条件培養液中でも円形の, かつPRを示す細胞の静止電位及び膜抵抗は著明な変化を示さなかった.DRを示す細胞の静止電位の平均値はPRとARの中間値を, 膜抵抗はPRのそれとほぼ等しく, ARのそれより低い値を示した。
条件培養液中で軸索形成に伴う電気的反応の3型 (PR, DR及びAR) の発現頻度の経日的変化は, PRまたはDRを示す細胞では3~5日以内に一時増加し, 7日以後共に減少した。一方, ARを示す細胞は5日以内に一時減少し, 7日以後急速に増加して20日後では全細胞の89%を占めるようになった.条件培養下で未分化のままの円形細胞でも, PRに代りDRを示す細胞が多くなり, 7日以後では75%を占めるようになった.
以上の結果から次のことが示唆された. (1) 軸索形成に伴い膜の電気生理学性質の成熟 (膜電位・膜抵抗の増加) が見られる. (2) 軸索形成は分化の初期過程に, 膜の興奮性は後期過程で発現してくるようになり, 形態分化と機能分化とは必ずしも一致して出現しない. (3) ニューロブラストーマの示す電気的反応の3型は, 機能分化の各段階を示し, passive response, delayed rectification, active responseの順に膜は興奮性を獲得するようになる.
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