昭和医学会雑誌
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長管骨移植に関する実験的研究
―活性型ビタミンD3の及ぼす効果について―
小谷 貢一
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1985 年 45 巻 6 号 p. 839-850

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抄録
骨代謝調節因子としてビタミンDの骨組織に対する作用を知る目的で, ラットを用いて骨移植の実験を行った.使用したラットは生後7週齢のWistar系雄ラット87匹である.ネンブタール麻酔下で右脛骨より骨膜を剥離した約5mmの長管骨を採骨し, 左大腿骨に骨溝を作製して埋め込み, 活性型ビタミンD3 (1α-OH-D3) を連日体重pro Kgあたり0.3μg経口投与した.そして骨移植における吸収・生着・同化という生物学的過程を通して, 血清生化学的変動, X線学的変化および脱灰・非脱灰組織を作製して骨組織の変化について, 活性型ビタミンD3を服用していないコントロール群と比較検討を行った.血清カルシウム値は活性型ビタミンD3投与により有意に高値を示すものの正常域内であった.血清アルカリフオスファターゼ値は移植後早期にピーク値を示し以後低下してくる.そのピーク値は活性型ビタミンD3投与群で移植後2週目, コントロール群では3週目となり, 活性型ビタミンD3投与により早期に血清アルカリフォスファターゼ活性が亢進していた.軟X線像では, 活性型ビタミンD3投与により移植骨周囲の骨吸収が移植後早期より強く見られるものの, 仮骨形成も同様に早期に見られ, 皮質骨間の骨癒合も早く得られた.しかし, 骨癒合後は両群間に差を認めなかった.Contact microradiogramでも同様の所見が得られ, 移植後初期には移植骨と母床との接触面を中心に多数の大きな吸収窩が見られ骨吸収が強く表われていたものの, 同時に仮骨形成も旺盛で, 移植骨との間に架橋状の仮骨形成が早期に見られた.骨癒合後は両群間に差を認めなかった.テトラサイクリン骨標識では, 活性型ビタミンD3投与により移植骨周囲に1週程早く2重ラベリングが見られ, 骨形成能が亢進していたことが示唆された.移植後5日目の脱灰組織標本では, 破骨細胞の形態は両群間に差を認めてはいないものの, 骨芽細胞は分化程度に差が見られ, 骨芽細胞にある活性型ビタミンD3のリセプターを介して, その分化誘導・機能発現が高められていたことが示唆された.これらから骨移植の吸収・生着・同化という生物学的過程において, ビタミンD投与は破骨細胞, 骨芽細胞の分化誘導・機能発現を導き, これらを促進する作用を有しているため, 早く移植骨の生着を期待できる治療法として有効な方法であると考えられた.
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