昭和医学会雑誌
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発熱性物質に関する衛生学的研究第2報注射用医薬品のエンドトキシン汚染実態と除去に関する研究
宇佐美 博幸
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1986 年 46 巻 1 号 p. 13-25

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抄録
注射薬における発熱性物質 (エンドトキシン) による汚染実態および除去に関する検討を行ない以下の成績を得た.1) 発色合成基質法により注射用蒸留水の54%, 生理食塩液の44%からエンドトキシンを検出した.2ng/ml (1EU/ml) 以上の濃度を示した3例はウサギ発熱試験においても陽性を示した.2) 輪液製剤の90%からエンドトキシンを検出した.輪液製剤において高濃度汚染を示した製造業者の注射蒸留水からはやはり高い濃度のエンドトキシンが検出され, 注射用蒸留水が輪液製剤の汚染原因の一つとなっていることが示唆された.3) アミノ酸輪液製剤にE.coli O111: B4およびE.coliO55: B5由来のエンドトキシンを10ng/ml濃度に添加し, 非アスベスト性荷電膜にて処理すると, エンドトキシンは98%以上除去されたが, L-アスパラギン酸, L-スレオニン, L-セリン, L-メチオニン, L-イソロイシン, L-ロイシン, L-フェニルアラニン, 塩酸リジン, L-ヒスチジン, L-トリプトファン, L-プロリンの各アミノ酸成分はほぼ100%の回収率を示し, 本膜処理法は輪液製剤のエンドトキシンの選択的除去法として有用と思われた.4) 乾熱処理の効果に関して, 示差熱分析を行なった結果, E.coli O55: B5, S.typhosaおよびS.marcescens由来のエンドトキシンはいずれも210℃以上で分解することが示された.赤外吸収スペクトルの変化より, エンドトキシンの乾熱処理による失活現像はLipid Aの熱分解によることが示唆された.5) 注射薬の汚染濃度レベルにおよぼす高圧蒸気滅菌処理の効果を検討した.E.coli O111: B4由来のエンドトキシンの2ng/ml (1EU/ml) 溶液は121℃で失活傾向を示したが, 生理食塩水においては更に速やかな失活傾向を示した.エンドトキシンは固体状態では耐熱性を示すが, 希薄溶液では熱に不安定であると考えられた.6) 着色妨害物質が共存する場合のエンドトキシン定量法として発色合成基質一高速液クロ法を新に関発した.本法を用いれば, 種々の着色物質液中のエンドトキシンを定量できることが明かになった.
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