昭和医学会雑誌
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喉頭筋筋線維構成の比較解剖学的研究
1.ヒトとカニクイザルの比較
松本 祐二佐藤 巌恩田 聰安室 健郎猪口 清一郎
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1986 年 46 巻 2 号 p. 173-181

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抄録

喉頭の発声機能と喉頭筋との関係を形態学的に解析するために, ヒトおよびサルの喉頭各筋の筋線維構成を検討した.研究材料はヒト成人およびカニクイザル成獣の各4例から得られた喉頭筋で, 喉頭筋の観察はゼラチン包埋, Sudan Black B染色標本により, 筋線維を赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維に分類し, 断面の筋線維数, 筋線維の太さおよび密度を検討した.結果は次の通りである.1.ヒトでは筋腹横断面の筋線維総数は披裂筋と輪状甲状筋が最も多く, 喉頭蓋筋群が最も少なく, 筋線維の太さはその逆の傾向を示し, 密度は後輪状披裂筋, 輪状甲状筋および甲状披裂筋が高く, 喉頭蓋筋は著しく低かった.2.筋線維型は一般に白筋線維が40%前後で最も多く, 以下僅かの差で赤筋線維, 中間筋線維の順であり, 筋線維の太さは3筋線維型とも喉頭蓋筋群が最も大で, 白筋線維と中間筋線維では甲状披裂筋が, 赤筋線維では後輪状披裂筋がそれぞれこれに次いでいた.3.これに対してサルでは喉頭蓋筋を欠き, ヒトに比べて各筋とも筋線維は少なくて披裂筋及び輪状甲状筋で特にその差が著しかった.3筋線維型の頻度は白筋線維が一般に50%前後を占め, ヒトよりも高く, その差は披裂筋及び甲状披裂筋で著しかったが, 白筋線維の太さはヒトに比べて小で, その差は甲状披裂筋, 次いで披裂筋と外側輪状披裂筋の順に著明であった.4.以上の事からサルではヒトに比べて声門の後部を閉鎖する筋, 及び緊張した声帯の複雑な変化に携わる筋の発達が弱いことになり, その結果, サルの喉頭は高調な短い発声には適するが, 連続的な種々の音調の発声には適しないと考えることが出来た.

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