昭和医学会雑誌
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抗炎症薬Alminoprofenの肝機能に及ぼす影響
―脂肪肝ならびに肝性ポルフィリン症誘発の有無について―
坂本 浩二岡崎 雅子鈴木 純一栗本 忠志熊 廣夫中田 博子和田 重次平山 八彦
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1986 年 46 巻 3 号 p. 333-344

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抄録

消炎・鎮痛薬alminoprofenの肝機能に及ぼす影響について, とくに脂肪肝と肝性ポルフィリン症の誘発の有無に関しラットを用い基礎的検討を行った.その結果, phospholipidosisを催起するchloroquine, 4, 4'-bis (diethylaminoethoxy) α, β-diethyldiphenylethane (DH) では, 肝組織および肝lysosome分画のphospholipids (PL) やtotal cholesterol (TC) の著明な増加を示した.また, carbon tetrachloride (CCl4) では, TC, triglyceride (TG) および遊離脂肪酸 (NEFA) の著しい増加がみられた.これら肝lipidosisを誘発する陽性対照薬では, 血液生化学的検査にもGOT, m-GOTならびにGPTなどの著明な上昇もみられ, 病理組織学的にも, 混濁腫張, 脂肪変性, 壊死像も観察された.これに比較し, alminoprofenは, 肝組織およびlysosome分画でPLの軽度な増加がみられたが, その作用は, 類似薬ibuprofen, ketoprofenならびにflurbiprofenでも認められ, ibuprofenでは軽度にGOT, m-GOTが上昇した.しかしながら, alminoprofen投与群では, 血液生化学的検査に異常値の出現もなく, 病理組織学的にも何ら異常所見は観察されなかった.次に, 実験的肝性ポルフィリン症誘発の有無に関する検索では, phenobarbitalおよび3, 5-diethoxycarbony1-1, 4-dihydrocollidine (DDC) 併用投与群で, δ-aminolevulinic acid (ALA) synthetaseならびにALAdehydrase活性には影響を及ぼさなかったが, 尿中ALAと肝組織のcoproporphyrineやprotoporphyrineなどのprophyrine量が著明に上昇した.DDC併用投与の対照であるoliveoilとalminoprofen併用投与群では, これらの作用は, 全く認められなかった.以上の成績から, alminoprofenには肝障害, とくに脂肪肝ならびに肝性ポルフィリン症を催起させる作用はないことが明らかにされた.

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