昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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46 巻, 3 号
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  • 坂本 浩二, 中山 貞男, 宇佐美 研一, 栗本 忠, 志熊 廣夫, 和田 重次, 平山 八彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    消炎・鎮痛薬alminoprofenの1回投与における肝薬物代謝酵素ならびに微細構造に及ぼす影響について, ibuprofen, ketoprofenおよびflurbiprofenを対照薬に比較検討した.Alminoprofenの35mg/kg, 50mg/kg投与では, 投与後6hrから48hrまで著明なaminopyrine N-demethylaseとaniline hydroxylase活・性の抑制がみられ, cytochrome P-450含有量の減少も認められた.しかしながら, これらの作用は投与72~96hrでほぼ回復した.肝の微細構造では, 投与6hrから粗面小胞体 (rER) の減少と膨化, 滑面小胞体 (sER) の増加がみられ, これらの変化は12~24hrで最も強く, 72~96hrでは正常に復した.対照薬ibuprofen, ketoprofenおよびflurbiprofenでは, 肝薬物代謝酵素系に対しては酵素誘導作用を示したが, その作用は一過性で持続時間は短かった.しかしながら, 形態学的変化では6hr後からERに対する変化が著しく, alminoprofen同様12~24hrでその変化は強く, 96hr後でも持続していた.以上のことから, alminoprofen投与により肝薬物代謝酵素系は抑制されるが, この作用は回復性のもので, 微細構造でのERの変化は, 障害性のものではなくalminoprofen投与に応答する生理的反応と思われる.
  • 坂本 浩二, 中山 貞男, 辻 泰喜, 栗本 忠, 中田 博子, 市田 茂人, 平山 八彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 323-331
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    消炎・鎮痛薬alminoprofenの連続投与における肝の薬物代謝酵素と微細構造に及ぼす影響について, 既存のフェニルプロピオン酸系抗炎症薬ibuprofen, flurbiprofenおよびketoprofenと比較検討した.1. Alminoprofenの3日間投与では, 殆んど薬物代謝酵素には著変はみられなかったが, 35mg/kgおよび50mg/kg7日間投与では, aminopyrine Ndemethylaseとaniline hydroxylase活性の抑制がみられ, 14日間投与では20mg/kg以上のいずれの投与群でも著明な活性抑制を示し, 50mg/kg投与群では, cytochrome P-450の減少も認められた.しかしながら, これらの作用は10日間の休薬で回復した.2.微細構造に対しては, alminoprofen 35mg/kgと50mg/kgで小胞体 (ER) への変化, すなわちrERの減少と膨化, sERの増生がみられ, そのsERの増生はmicrosomalprotein量, 肝体重比に増加がみられないことから, rERの変化に伴うものであり新生したsERではないと思われる.さらに, ERの変化は3日ないし7日間の投与で強く, 14日間投与ではみられなかったことから一過性の変化でalminoprofenの連続投与期間中に修復されるものと考えられる.3.Trimethadione (TMO) 代謝を指標とした検索では, alminoprofenの投与で血中濃度曲線下面積 (AUC) と最高血中濃度 (Cmax) の低下傾向を示したが, 他のpharmacokinetic parameterには殆んど変化がみられなかったことから, TMO代謝にalminoprofenは影響ないものと思われる.以上の結果より, alminoprofenの連続投与では, 肝薬物代謝酵素の抑制と微細構造, とくにERへの変化が認められた.しかしこれらの作用は対応せず, いずれも回復性のものであった.したがって, alminoprofenには, 薬物の体内蓄積性や肝障害を催起させる作用はないものと考えられる.
  • ―脂肪肝ならびに肝性ポルフィリン症誘発の有無について―
    坂本 浩二, 岡崎 雅子, 鈴木 純一, 栗本 忠, 志熊 廣夫, 中田 博子, 和田 重次, 平山 八彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 333-344
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    消炎・鎮痛薬alminoprofenの肝機能に及ぼす影響について, とくに脂肪肝と肝性ポルフィリン症の誘発の有無に関しラットを用い基礎的検討を行った.その結果, phospholipidosisを催起するchloroquine, 4, 4'-bis (diethylaminoethoxy) α, β-diethyldiphenylethane (DH) では, 肝組織および肝lysosome分画のphospholipids (PL) やtotal cholesterol (TC) の著明な増加を示した.また, carbon tetrachloride (CCl4) では, TC, triglyceride (TG) および遊離脂肪酸 (NEFA) の著しい増加がみられた.これら肝lipidosisを誘発する陽性対照薬では, 血液生化学的検査にもGOT, m-GOTならびにGPTなどの著明な上昇もみられ, 病理組織学的にも, 混濁腫張, 脂肪変性, 壊死像も観察された.これに比較し, alminoprofenは, 肝組織およびlysosome分画でPLの軽度な増加がみられたが, その作用は, 類似薬ibuprofen, ketoprofenならびにflurbiprofenでも認められ, ibuprofenでは軽度にGOT, m-GOTが上昇した.しかしながら, alminoprofen投与群では, 血液生化学的検査に異常値の出現もなく, 病理組織学的にも何ら異常所見は観察されなかった.次に, 実験的肝性ポルフィリン症誘発の有無に関する検索では, phenobarbitalおよび3, 5-diethoxycarbony1-1, 4-dihydrocollidine (DDC) 併用投与群で, δ-aminolevulinic acid (ALA) synthetaseならびにALAdehydrase活性には影響を及ぼさなかったが, 尿中ALAと肝組織のcoproporphyrineやprotoporphyrineなどのprophyrine量が著明に上昇した.DDC併用投与の対照であるoliveoilとalminoprofen併用投与群では, これらの作用は, 全く認められなかった.以上の成績から, alminoprofenには肝障害, とくに脂肪肝ならびに肝性ポルフィリン症を催起させる作用はないことが明らかにされた.
  • 坂本 浩二, 殿岡 まゆみ, 笠原 多嘉子, 栗本 忠, 伊東 秀行, 木田 昌, 平山 八彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    消炎・鎮痛薬alminoprofenの直接的肝細胞障害作用を初代培養ラット肝細胞を用い, 肝細胞から逸脱する酵素等と蛋白への14C-leucineへの取り込みを指標として検索した.さらに, ラット赤血球を用い溶血を指標として膜安定化作用についても併せて検討した.初代培養ラット肝細胞での障害性試験では, 肝障害物質, 四塩化炭素 (CCl4) は, 肝細胞から培養液中にGOT, GPT, LDHおよびOCTの著しい酵素逸脱作用と蛋白への14C-leucineの取り込み阻害作用が認められた.これに比較し, alminoprofenはGPTとLDHには著明な影響なくGOTならびにOCTにおいて酵素逸脱抑制がみられ, これらの作用は, 他のフェニルプロピオン酸系抗炎症薬ibuprofen, ketoprofen, flurbiprofenでも認められた.さらに, 14C-leucineの蛋白への取り込みに対してalminoprofenは, 10-6~10-4Mのいずれにおいても著明な影響を及ぼさなかった.また, ラット赤血球膜に対しalminoprofenは, 1×10-8~5×10-4Mで軽度な溶血阻止作用がみられ, 1×10-4~1×10-2Mの高濃度では, ibuprofen, ketoprofenおよびflurbiprofenと同様に著しい溶血阻止作用を示す膜安定化作用が認められた.以上の成績から, alminoprofenは肝細胞に対し, 直接的障害作用は有しないものと考えられる.
  • 坂本 浩二, 殿岡 まゆみ, 阿部 浩一郎, 笠原 多嘉子
    1986 年 46 巻 3 号 p. 351-358
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Laennec (LAE) は, ヒト胎盤水解物であり, 肝疾患に適応され, 降トランスアミナーゼ作用を有する薬物である.今回, 我々はラット単離および初代培養肝細胞を用い, LAEのCCl4肝細胞障害におよぼす作用を検索した.培養medium中に添加したLAEおよびCCl4の作用は, medium中に肝細胞から逸脱するGOT, GPT, LDH, OCTの活性およびUrea-Nの分泌量を指標として観察した.CCl41mM, 2mMの低濃度では, 単離および初代培養肝細胞において酵素の逸脱抑制傾向が見られ, 膜安定化傾向がうかがわれた.また10mMのCCl4では著しい酵素逸脱がみられた.単離肝細胞においてLAEは単独で酵素逸脱を抑制したが, 5mM CCl4との併用ではその酵素逸脱を増強した.初代培養肝細胞においてLAEは単独で酵素逸脱を抑制し, Urea-N分泌量を増加させた.5mM CCl4との併用ではその酵素逸脱を抑制しUrea-N分泌量を増加させた.この単離肝細胞と初代培養肝細胞における作用の相違は, 単離直後では肝細胞の膜機能, 蛋白代謝能の低下があるが, 初代培養肝細胞ではin vivoに近い機能を保有するようになるためと考えられる.14C-Leucineの肝細胞蛋白への取り込みはCCl4およびLAE併用において, 取り込み量が減少した.初代培養肝細胞における肝細胞模型病像の作成にはCCl45mMが適当と思われる.またLAEはCCl4肝細胞障害に対し, 肝細胞膜機能を好転させる傾向があると思われる.
  • 中山 貞男, 栗島 秀行, 小林 賢次, 辻 泰喜
    1986 年 46 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Triton WR-1339 (Triton) 投与後8, 24, 43時間における血清脂質の変化を検索し, この高脂血症モデルを用いて, γ-oryzanol (γ-OZ) , ステロール組成の異なるγ-OZ (N-γ-OZ) とcycloartenol feruli cacid ester (CAF) の抗高脂血症作用を検討した.動物は7週令SD系雄性ラットを用い, Triton投与24時間前から実験終了まで絶食とした.被検薬物は経口ならびに静脈内投与により与えた.Triton投与によって血清のtotal cholesterol (TC) , free cholesterol (FC) , triglyceride (TG) , phospholipid (PL) は著明に増加し, 高密度リポタンパク中のTCとPLは明らかに減少した.この血清脂質の変化はTriton投与後24時間に最大となった.Triton誘発高脂血症モデルを用いた薬物の抗高脂血症作用検索において, 脂質合成能に対する作用検索にはTriton 250mg/kg以上の投与量で, 投与後8~24時間の動物が適しており, 脂質排泄能に対する作用検索にはTriton 300mg/kg, 投与後43時間の動物が適していることが明らかとなった.γ-OZ, N-γ-OZ, CAFはTriton投与後8, 24時間の脂質合成に対して何ら影響を示さなかった.Triton投与後43時間の脂質排泄に対しては排泄促進作用を示し, N-γ-OZの静脈内投与ではFC, TGの排泄を有意に促進した.Triton誘発高脂血症に対するN-γ-OZの抗高脂血症作用はγ-OZに比べて強く, CAFのそれと同程度であり, 主として脂質排泄促進によるものと推察された.
  • 野村 武男
    1986 年 46 巻 3 号 p. 365-376
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    身体トレーニングが肺ガス交換, 特に肺拡散能力 (DLCO) にどのような影響を及ぼすかを明らかにし, さらに最大運動時におけるDLCOが運動制限因子になり得るかについて検討した.15~16歳の男子被験者5名に12週間 (6日/週) の持久持性トレーニングを課し, 体組成 (脂肪量, 除脂肪体重) , 心容積, 肺機能 (肺活量, 一秒量, 一秒率, 最大中間呼気流量, 最大換気量, DLCO) そして運動時における生理的反応とVO2maxを測定した.さらに運動時のガス交換 (A-aDO2) を男子陸上選手5名 (18~21歳) と比較した.皮脂厚値から計算された体脂肪率, 心容積についてはトレーニング前, 後で有意な変化はみられなかった.肺機能では安静時最大換気量を除きトレーニングによる影響はなかった.運動時におけるDLCOはVO2の増大に伴い直線的に増大した.最大DLCOは35.1から39.2ml/mmHg/minと増大したが有意ではなかった.VO2maxは0.671/min (29%) 増大した.最大下運動時におけるA-aDO2の動態を運動群と比較してみると, 肺胞気02分圧 (PAO2) は安静時を除き両群とも同様の傾向を示した.動脈血02分圧 (PaO2) は両群とも有意な差はみられなかったが, VO231/min付近では運動群の81.7±3.2mmHgに対して非運動群は77.1±4mmHgと有意に低値を示した.A-aDO2はVO211/min付近で両群とも安静時と比較して下がり, VA/Qcの改善が示唆された.その後VO2の増大に伴い増大し, 最大値で運動群平均22.3, 非運動群29.6mmHgと両群とも有意に拡大しPaO2の低下と相まり, 換気系には大きな負担となっていることが示された.運動によるPAO2上昇, PaO2低下によるA-aDO2拡大には換気血流比の不均等分布, Shunt (QS/QT) , 拡散障害が考えられる.運動による換気血流比はより改善され, Shunt率も低下することから残りの因子としての拡散障害の関与が示唆された.以上の結果より, 12週間にわたる身体トレーニングが有酸素的作業能の決定因子である除脂肪体重, 心容積には影響を及ぼさなかった.肺機能では安静時最大換気量が増大したがDLCOにおいては安静時, 運動時とも有意な変化はみられなかった.このことはDLCOが発育に伴い増大するがトレーニングの影響はみられないことを示唆するものである.非運動群の最大運動時における, A-aDO2はPaO2の低下 (平均14.3mmHg) と相まり拡散制限の関与が示唆された.
  • 小松 安彦, 大久保 幸枝, 小松 信彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 377-382
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    マクロファージがオプソニン化された細菌その他の外来異物と接触すると, 速やかにsuperoxide anionその他の活性酸素が産生され, これらがマクロファージの殺菌作用に重要な役割を演ずることが知られている.今回, 我々はSchizophyllan (SPG) その他の免疫賦活剤をBALB/c系マウスの腹腔内に1回注射した後, 経時的に採取した腹腔マクロファージをオプソニン化ザイモサンで刺激した際に生成する活性酸素量をルミノール発光法で測定することによって, 免疫賦活剤の投与がマクロファージの化学発光 (CL) に及ぼす効果について比較検討した.Native SPG (分子量: 約600万) を用いた場合には, 0.4~4mg/kg量をマウスに投与後24時間で採取したマクロファージのCLが最も高い値 (対照群マクロファージの約2倍) を示したのち漸減した.これに対し, 超音波処理で低分子化したSPG (分子量: 45万) の場合には, 0.04~4mg/kgを投与後1時間をピークとして対照群の約2~3倍の上昇を示し, 24時間後には対照値に近づく傾向が見られた.放線菌多糖Mannoglucan (MG) も効果が比較的速やかで, 4mg/kgの投与によって24時間以内にCL産生能のピーク (対照の2.7倍) を示した.酵母細胞壁成分Zymosanの場合には, 4mg/kg投与で48時間後にピーク (対照の3.2倍) を示した.担子菌カワラタケ菌糸体の糖タンパクKrestinの場合には多量の投与を必要とし, 200mg/kgを腹腔内に注射してから48時間後にピーク (対照の5倍) が見られた.細菌細胞壁ペプチドグリカンの構造単位であるMuramyl dipeptide (MDP) は, 0.4mg/kg投与48時間後にピーク (対照の3.2倍) を示した.MDPのアシル誘導体MDP-Lys (L18) では, 4mg/kg投与72時間後にピーク (対照の8倍) が見られた.大腸菌のリポ多糖 (LPS) は, 0.4mg/kg投与で1~24時間後のCLが対照の約25倍と最も高い値を示した.このように, 本報で使用した免疫賦活剤はいずれもマクロファージの活性酸素放出能を増強させる.それらは投与量に応じて, マクロファージ活性化の強弱と経時的変化の様相を異にすることが明らかになった.
  • 有泉 雅博, 南雲 昇, 木村 賀津子, 大久保 幸枝, 小松 信彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 383-389
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    細菌細胞壁成分のアジュバント活性を示す最小構造単位であるmuramyl dipeptide (MDP) 及びその誘導体muramyl dipeptide-stearoyllysine〔MDP-Lys (L18) 〕を用いて, マウスの実験的感染症に対する感染防御効果及びマクロファージ活性化作用について実験を行なった.人型結核菌の0.5~1mg/mouse量を静注し, その翌日からMDP及びMDP-Lys (L18) の0.4mg/kgを隔日10回皮下注射することにより, ある程度の延命効果が認められたが, その効果はMDP-Lys (L18) のほうがすぐれていた.その際肺内生菌数の推移を算定すると, MDP投与群においては対照群との差が見られなかったが, MDP-Lys (L18) 投与群では肺1g当たりの生菌数が著明に抑制されていた.病理組織学的所見では, 対照群とMDP群では滲出壊死型の肺病変を示すマウスが多かったが, MDP-Lys (L18) 群では増殖肉芽腫型組織反応の傾向を示すマウスが多かった.また結核菌感染後21日目にPPDを用いてfootpad法で遅延型過敏症反応の強弱を比較したところ, MDP群, MDP-Lys (L18) 群ともに対照群よりも反応が増強していたが, MDP-Lys (L18) 群の増強が最も顕著であった.結核菌以外の諸種細菌に対する感染防御効果は, ブドウ球菌と大腸菌の場合に最も著明で, その他の細菌に対する効果は弱いか, または認められなかった.次に, 薬剤を投与してから24時間後に採取した腹腔マクロファージについて, Candida parapsilosisに対する増殖阻止活性を調べたところ, MDP4mg/kg投与の場合は対照マクロファージの約8倍, MDP-Lys (L18) 投与では約20倍の活性上昇が見られた.一方, 正常マウスから採取したマクロファージまたはマクロファージ系細胞株 (J774.1株) にin vitroでMDPまたはMDP-Lys (L18) を直接作用させた場合は, 増殖阻止活性の上昇が見られなかった.また, MDP及びMDP-Lys (L18) をBALB/c系マウスの腹腔に投与したのち, 経時的にマクロファージを採取してそれらの活性酸素放出能を化学発光 (CL) 法で測定した.その結果, MDP投与群では注射2日後に採取したマクロファージにCL値の増大が認められ, MDP-Lys (L18) 投与群では3日後のCL値が最高であった.この場合も, MDP-Lys (L18) を投与したほうがMDPよりも強いマクロファージ活性化作用を示した.以上の結果から, MDP及びMDP-Lys (L18) は多形核白血球の機能を促進するだけではなく, マクロファージの機能をも増強することによって感染防御作用を発揮するものと思われる.
  • 大野 豊, 南雲 昇, 木村 賀津子, 小松 信彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 391-397
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Schizophyllan (SPG) は担子菌スエヒロタケが産生する単純グルカンで, 種々の生物学的活性を発揮することが知られている.SPGを注射した場合のマウス腹腔マクロファージに対する活性化作用については既に報告したが, 今回はin vitroにおけるSPG及び各種免疫賦活物質の食菌能活性化作用の有無について検討した.まず各被検物質をマクロファージ細胞株J774.1に加えて培養した.次いで標的細胞としてCandida parapsilosis浮游液を加えてさらに培養したのち, C.parapsilosisに対する増殖阻止活性を対照のそれと比較して増殖阻止指数 (Fungistatic Index: FI) で表わした.検討した13種類の免疫賦活物質のうちJ774.1株の食菌能をin vitroで明らかに活性化したのはSPG, LPS及びKrestin (PSK) であった.SPGの場合には, 比較的高濃度 (1~100μg/ml) では添加後1時間でマクロファージの活性が上昇し (FI: 7.5~9.0) , その後いったん低下したのち, 48時間から72時間にかけて再び上昇した (FI: 2.12~3.75) .この場合前者 (1時間値) のほうが後者 (48及び72時間値) よりも高かった.低濃度 (10-1~10-4μg/ml) では1時間値 (FI: 2.5~3.25) よりも24及び48時間値が高く (FI: 3.75~7.25) , 高濃度とは逆の2峰性パターンを示したのち, 72時間では低下傾向を示した.SPG以外の免疫賦活物質については, LPSの1時間培養において全濃度範囲 (10-5~100μg/ml) にわたって活性化が見られた.この活性化は10-5~1μg/mlの濃度では24時間培養まで持続したが, それより高濃度 (10~100μg/ml) では24時間後には低下していた.Krestinによる活性化は10~500μg/mlの高濃度においてのみ見られ, 特に添加直後 (0.5~1時間) が高いという特徴を示した.Lentinanは10-1~10-3μg/ml, 24時間培養で軽度の活性化を示した (FI: 2~4) .Corynebacterium parvum, BCG-CWS及びPicibanilの場合には一部の濃度において48時間培養で活性化が認められた.その他Lipid A, Muramyl dipeptide (MDP) , MDP-Lys (L18) , 放線菌Mannoglucan (DMG) , Zymosan及びLevamisoleの場合には, Candida増殖阻止活性の上昇が見られなかった.
  • 三浦 春夫, 南雲 昇, 木村 賀津子, 阿部 志津子, 大久保 幸枝, 小松 信彦
    1986 年 46 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    放線菌の1種Microellobosporia griseaが産生する多糖mannoglucan (MG, 分子量約90万) の酸分解産物DMG (degraded mannoglucan, 分子量約30万) を用いて, sarcoma180に対する抗腫瘍作用, 及び結核菌その他の細菌感染症に対する防御効果について実験を行なった.Sarcoma180細胞をマウスの皮下に移植し, その翌日からDMGの32mg/kgまたは100mg/kgを連日5回腹腔内投与し, 21日後に固形腫瘍を摘出して対照群の腫瘍重量と比較することにより, 70~80%程度の腫瘍阻止率を示した.腫瘍移植前または移植後の種々の時期にDMG100mg/kgを1回注射した場合にも有効であるが, 5~8日後に1回注射した場合の効果が最も顕著であった.一方, sarcoma180の腹水型腫瘍に対しては無効であり, DMGの効果は他の抗腫瘍多糖と同様に宿主媒介抗腫瘍作用によるものである, 次に, 人型結核菌の0.5~1mg/mouse量を静注し, その翌日からDMG20mg/kgまたは80mg/kgを隔日10回腹腔内注射することにより, 有意の延命効果が得られた.その際, 肺内結核菌数の推移を追跡すると, DMG投与群では感染後4週から6週にかけて, 肺19当たりの生菌数が対照群の1/80から1/30に抑制されていた.病理組織学的所見は, 対照群では滲出壊死型の肺病変を示すマウスが多かったが, DMG群では増殖肉芽腫型組織反応を示すものが多かった.また結核菌感染後21日目に, footpad法でPPDに対する遅延型過敏症反応の強弱を比較したところ, DMG投与群は対照群よりも反応が著明に亢進していた.このような組織学的変化や遅延型過敏症反応の亢進は, 細胞性免疫の活性化による感染防御能の増強と相関性があると考えられる.結核菌以外の諸種細菌による急性感染症に対する防御効果は, 黄色ブドウ球菌, 大腸菌, 緑膿菌, Proteus vulgaris, Serratia marcescensに対して認められたが, その他のグラム陽性または陰性細菌に対する効果は弱いか, または無効であった.ヒツジ赤血球を抗原としてマウスを免疫し, ヒツジ赤血球に対する脾の溶血プラーク形成細胞 (PFC) 産生に及ぼすDMGの影響を調べたところ, DMG投与群のほうが対照群よりもPFCの増加を示した.また塩化ピクリル塗布による遅延型皮膚反応に対しても, DMG投与は顕著な促進効果を示した.これらの結果から, DMGは免疫賦活剤の1種として, 広く食細胞系, 体液性免疫及び細胞性免疫を増強することによって感染防御及び抗腫瘍作用を発揮することが明らかにされた.
  • 谷嶋 二三男, 里吉 政子
    1986 年 46 巻 3 号 p. 407-414
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋の部位別の毛細血管分布を検索し, トレーニングの影響について部位別に検討した.ラットは5カ月間, 1日1回45分間, 分速22mのランニングを週6日行った.毛細血管分布の測定のため, 墨リンゲル液灌流法とトルイジンブルー染色法を併用した.筋線維数と毛細血管数との比であるCIF比でみると, コントロール群において右室外層1.17±0.022, 左室外層1.17±0.033, 左室内層1.12±0.023.乳頭筋1.13±0.022であった.また, 従来報告されている左室, の値が約1.00であることを見ると, 今回の報告は0.1程度大であった.このことは今回用いた方法がより正確であったことを示すものと考える.運動負荷群のCIF比をみると右室外層1.21±0.035, 左室外層1.19±0.057.左室内層1.15±0.023, 乳頭筋では1.21±0.025であり左室内層のCIF比が小さかった.運動群と対照群のCIF比を比較してみると, 運動群の方が右室外層と乳頭筋において有意に高かった.以上のことから心筋の毛細血管分布には部位差があり, 心室の外層部は内層部に比較して毛紐血管が豊富であることがわかる.またトレーニングによって部位よる影響が異なり, 右室外層や乳頭においてトレーニングの影響がみられることがわかる.
  • 森 啓, 岡田 定, 滝沢 芳夫, 萩原 昭二, 新倉 春男, 寺田 秀夫
    1986 年 46 巻 3 号 p. 415-421
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    我々は, 赤白血病10例の臨床的検討を行った.年令は19歳から77歳平均53.3歳, FAB分類による経過では (1) RAEB (2) RAEB→RAEBt (3) RAEBt→M4 (4) RAEB→RAEBt→M4 (5) RA (6) RAEBt→M1→RAEBt (7) RAEBt→M1 (8) RA→RAEB→fibrosis (9) RA (10) IRAEB→RAEBtの経過であった.染色体分析では7例がmajor karyotype abnormalities (MAKA型) の染色体異常がみられた.化学療法による寛解例はなくやや有効が2例あった.生存期間の中央値は4.5カ月, 予後の検討では, LDH1000wu未満および血小板数5×104/μ1以上の例は予後が良かった.その他, 年令, Hb, 白血球数, 染色体異常の有無による予後の差はなかった.
  • 岡本 健一郎, 伊藤 隆, 高橋 厳太郎, 八代 亮, 樋口 比登実, 新原 信子, 増田 豊, 細山田 明義
    1986 年 46 巻 3 号 p. 423-426
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    季節性鼻アレルギーに対して行なった星状神経節ブロック療法の効果が, 翌年度の症状発現にどの程度影響があるかについてアンケートを行なって調べた.回答者数は44例であり, 結果は鼻汁, 鼻閉, くしゃみの3つの症状について今年は出なかった, もしくは例年より軽かったと答えた者が, それぞれ77%あり, 高い値を示した.こういった追跡調査は何年も継続していく必要があるが, 今回の調査からは鼻アレルギーに対して星状神経節ブロックが有効であると考えられた.
  • 柴田 実, 赤木 信斎, 広瀬 信夫, 舩冨 等, 八田 善夫
    1986 年 46 巻 3 号 p. 427-431
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変に原発性副甲状腺機能亢進症, 尋常性白斑を合併した症例を経験したので報告した.患者は肝硬変の経過中に歯芽崩壊, 腰痛, 尋常性白斑が出現し, 高カルシウム血症を指摘された.血中パラソルモン, 尿中腎原性cAMPはいずれも高値を示し, 頸部CTスキャンでは左副甲状腺部にlowdensity areaを認めた.生化学的, 形態学的検査より肝癌その他の悪性腫瘍の合併は否定的であり, 原発性副甲状腺機能亢進症と診断した.原発性副甲状腺機能亢進症, 尋常性白斑の発症には, いずれも免疫学的機序が関与すると考えられ, 肝硬変の完成が生体に何らかの免疫異常を生じこれらの疾患の発症の一因となった可能性も考えられた.
  • 小笹 潔, 石川 昌澄, 伊藤 真一, 藤澤 守男, 菱田 豊彦, 宮坂 圭一, 城内 陽子, 藤澤 龍一
    1986 年 46 巻 3 号 p. 433-437
    発行日: 1986/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和57年より昭和58年までの2年間に, 当院に入院した帯状疱疹患者12症例に上部消化管造影及び内視鏡検査を施行し, 異常所見が6症例に認められた.病変は, すべてが良性の胃病変で, 食道及び十二指腸には異常は認められなかった.その内わけは, 胃潰瘍及び胃びらんであり, 胃潰瘍の陥凹面は浅いという特徴を有していた.年令, 鎮痛剤使用の有無, 疱疹出現から検査までの期間, 疱疹出現部位との関連性について検討した.胃病変は鎮痛剤使用例の高令者で, 帯状疱疹発症の初期には認められず, 11日以後に認められた.
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